経営改善に関するお役立ち情報
#1経営不信に陥る原因
売上が減少している、利益が上がらない、資金繰りが厳しいといった経営の課題に直面している時、会社では何が起こっているのでしょうか?
今回の記事では、経営不振に陥る原因の代表例をご紹介します。自社がどういった原因で、事業がうまくいっていないのかを確認することで、自社の課題点を見つけることができ、改善方法を考えることができますので、参考にしてみてください。
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経営不振とは?
経営不振とは、経営における業績がふるわないことを指す言葉です。経営不振に陥ってしまうのは、次のような要因が考えられます。
- 売上の減少
- 利益の減少
- 過小資本
- 売掛金の回収難
売上や利益の減少に関しては、過去のデータと比較してみましょう。過去より数値が悪化している時は、改善のための施策を打たないと経営難に陥り、倒産してしまう恐れがあります。
また、自社の経営状況が良好でも、手元に資本が無い場合や売掛金の回収難が問題で経営難に陥るケースもあり得ます。そのため、経営が苦しいときは悪化した要因を分析し、状況に合わせた対応をしていきましょう。
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経営不振になる原因①売上の減少
経営不振に陥る最大の原因として、売上の減少があります。中小企業庁のデータによると、2021年度の日本の倒産原因の73%が販売不振となっており、倒産に至る原因の多くが「売上が十分に立っていないこと」であるとわかります。
売上が減少してしまう要因としては、主に自社の商品やサービスに原因があるか、競合の出現により、顧客離れが起こっていることが考えられます。売上が低下している時は何が要因なのか、自社や競合の状況を分析して対策していくことが求められます。
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商品・サービスの質の低下
売上減少につながる要因の1つとして、商品やサービスの質の低下が挙げられます。
商品の仕入れルートを変更した際や、新しい従業員を雇った際など、経営状況が変わった場合、商品やサービスの質が変化することがあります。顧客が期待している商品やサービスの品質が保てていないと、顧客の流出につながります。
原料や従業員を変えて売上が下がったという場合は、商品やサービスの質が低下していないかを確認してみましょう。質が下がっていた時は仕入れ先を戻す、新人の教育を改めて行うといった対策をしていくことで改善していくことができます。
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リピート率の低下
既存顧客のリピート率の低下も売上減少に繋がる要因の1つです。
多くの商品やサービスがある市場では競合も多くなるため、価格や商品の内容、アクセスの良し悪しといった内外の要因によってリピート率が低下してしまうことがあります。リピート率が低下しているかの指標は目に見えて分からない業種も多く、いつの間にか売上の減少につながっている場合もあります。
一方でリピート率を維持できれば、新規顧客の獲得よりもコストを抑えることができます。既存顧客にリピートしてもらう導線を確立することで、安定した売上の確保を目指していきましょう。
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新規顧客が獲得できていない
新規顧客が獲得できないと売上が向上せず、経営不振になることもあり得ます。既存顧客から一定期間に得られる利益は限られているため、売上を上げていくには新規顧客の開拓も必要になるためです。
新規顧客を獲得できていない要因には、集客が十分でなく認知が獲得できていないこと、人材不足によって新規顧客にアプローチできていないことなどが挙げられます。
集客を行う方法としては、チラシの配布といった自社から顧客に情報発信をするプッシュ型と、WEBマーケティング等で自然に顧客が集まるプル型があります。自社にあった取り組みで新規顧客を獲得していきましょう。
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客単価が低い
客単価が低いと売上が上がらないため、得られる収益が少なくなって経営不振の原因につながることもあります。
たとえば、飲食店の経営において客単価は1,000円を見込んでいたのに、ドリンクのみやサイドメニューのみの注文をする客が多いと、客単価が想定を割っている可能性があります。
売上が上がらない時は、客単価を算出してみましょう。想定単価を割っている時は、商品の価格設定を見直すこと、販売時に高額商品のサジェストをすることで客単価を向上させることができます。
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競合の増加
競合の商品・サービスが、自社のものよりも顧客のニーズに合致すると、今まで利用いただいていた既存顧客が流出して売上減少につながる恐れがあります。
また、他社が新たな集客の方法を用いる、新たな商品を開発するなどの要因によって自社の売上へ影響を及ぼすことがあります。そのため、自社商品・サービスの質や開発を進めることで顧客を確保するだけでなく、直接的・間接的に競合の動きを日頃よりチェックしておくことも売り上げ確保のためには重要です。
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価格競争の激化
価格競争の激化により、既存顧客のリピート率の低下や新規顧客の集客がままならずに売上が減少するケースもあります。
価格競争とは、商品の価格を下げることで顧客の獲得を目指すことです。価格競争は、商品の差別化ができていない時や、需給バランスが崩れた時に起こると言われています。
価格競争は、資金がある大企業の方が有利であるため、中小企業や小規模事業者にとっては不利になります。価格で獲得した顧客は、安い商品やサービスを求める傾向があるので、顧客単価が下がり、売上の減少にもつながってきます。
そのため、行き過ぎた価格競争を避けるためにも、商品やサービス自体の質を高めていきましょう。
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経営不振になる原因②利益の減少
利益の減少の主な要因は売上の減少ですが、その他にも原材料や一般管理費がかさむことなどが挙げられます。必要以上にかかっている経費がないか、経営を圧迫している経費はないか、削減できる経費はないかを確認していきましょう。
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原材料・調達コストの増加
原材料や調達コストの増加が、利益の減少を引き起こす可能性があります。売上が変わらずとも原価等の商品を提供するためのコストが増えれば利益が下がるためです。
円安や国際情勢の影響を受けて、さまざまな商品・サービスが値上がりしたことで、原材料等の仕入れコストが高騰しています。外的な要因による原材料・調達コストの増加は自社での対応に限界がありますが、内的な要因によるコスト増加は対応が可能です。
人件費が原価に入る製造業では、従業員が手持ち無沙汰な状態にないか、トラブル等で工数が増えていないかなどを確認することで、従業員の稼働率を上げることができます。飲食業では、食品のロスが増えることで廃棄コストが増して原価率が上昇してしまうため、食品ロスが発生しない仕組み作りをすることで対策することも可能です。
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人件費の増加
事業の拡大に合わせて人件費を増加させることが、利益の減少に繋がる恐れがあります。会社にとって適切な人件費を計るには、労働生産性と労働分配率をそれぞれ算出してみましょう。
労働生産性は、付加価値額を従業員数で割って算出される、従業員1人あたりの稼いだ金額のことです。労働生産性が過去よりも下がっている場合は、人件費が利益の減少の要因になっている可能性があります。
労働分配率は、会社が獲得した利益を従業員にどの程度分配しているかを見る指標です。一般的には40%~60%が適切であると言われており、高ければ人材を上手く活用しきれていないことに、低ければ従業員のモチベーションの低下につながります。
従業員を増やして経営が苦しくなったと感じた時は、労働生産性や労働分配率が適切かどうかを確認してみましょう。算出してみた結果、過去の指標より数字が悪化している時は、人員や部署の整理の検討をしてみましょう。
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過剰設備投資
過剰に設備投資を行うと、導入した際に借り入れた返済負担が、資金繰りを悪化させてしまうことがあります。また、設備投資額と比較して得られる収益が少なく経営を圧迫するといった経営不振につながる危険性もあります。
もちろん、適切な設備投資は、売上の向上やコストの削減につながります。そのため、設備投資をする時は資金繰りに悪影響を及ぼさない範囲で計画を立てることが大切です。
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経営不振になる原因③過小資本
過小資本とは、会社の利益に対する資本が少ない状態のことです。一般的に自己資本比率が10%を切ると、過小資本と言われます。中小企業や小規模事業者が過小資本になる多くの要因は、節税対策をしすぎた場合です。
経費を増やすと利益が減り、その分節税の効果があります。しかし、資金が手元に残らないため、外部の影響によって思わぬ支出が増えた際に倒産につながってしまう可能性があります。
そのため、過剰な節税対策を控えることで適切な自己資本比率を保つことも必要です。
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経営不振になる原因④売掛金の回収難
取引先から売掛金が回収できずに不良債権化が進むことが、経営不振の原因になります。不良債権が溜まると自社の資金繰りが厳しくなり、売上がたっているのにも関わらず、原材料や人件費を払えなくなるためです。
売掛金の回収が困難になっている原因として、多くは取引先の資金繰りが困難になっていることが挙げられます。長年の付き合いがあり、支払を強く要求できないといった自社のみで解決できる問題でないところが難しい点です。
売掛金の回収においては、請求内容を必ず書面で残し、請求から支払管理、回収までに自社内での改善点がないかを確認してみましょう。
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経営不振に陥ったら早めに対策することが大切
事業が上手くいかず経営不振の状態が続いていくと、倒産の危機に陥ってしまいます。経営不振になってから対策を行うのでは、会社の資金状況によっては打てる手立てが限られてしまうため、できる限り早急に対応していくことが重要です。
今回の記事では、経営不振になる原因として「売上の減少」「利益の減少」「過小資本」「売掛金の回収難」をご紹介しました。自社が経営不振になる原因は何かを、現状分析し解決につなげていきましょう。
次回の記事では、経営の分析をテーマに、より良い経営へのヒントをご紹介します。
- ※ 本コラムは2022年12月2日現在の情報に基づいて執筆したものです。
- ※ 本コラムの内容は執筆者個人の見解です。
執筆者情報
株式会社SoLabo 代表取締役/ 税理士有資格者
田原 広一(たはら こういち) 監修
現在までの融資実績は4500件以上
株式会社SoLaboにおいて、8期目まで3億円以上の融資を受ける
事業再構築助成金第4回~6回におけるサポート実績は、採択数日本一を誇る(2021年~2022年時点:SoLabo社調べ)
【書籍】
『独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方35の秘訣』(幻冬舎)
『増補改訂版 独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎)
【運営サイト】
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