経営改善に関するお役立ち情報

#4経営支援を相談できる機関と専門家を紹介

自社の経営がうまくいっていない時は、できるだけ早く手を打ち経営改善を図る必要があります。しかし、経営改善の方法は多数あり、自社の問題を解決するのに適した方法を見つけることが困難な場合もあります。

今回は、中小企業や小規模事業者の経営を支援している専門家を紹介します。

専門家に経営支援を依頼することによって、自社の問題の効率的な解決につながりやすくなります。経営支援を第三者に依頼したいと考えている人は参考にしてみてください。

  1. 改善したい部分を確認しそれに応じた専門家に相談する

    経営支援を受けるときには、経営の中でどのような部分に課題があり、何を改善したいのかを明確にしましょう。経営支援を行う機関や専門家は、特定の分野に特化していることが多いため、自社の状況や課題にマッチする案件を取り扱う専門家に相談した方が効率的な支援を受けられるためです。

    中小企業庁の「課題解決に向けた経営相談」のWebサイトによると、中小企業が直面する課題としては人材の確保や育成、後継者の育成などの「人材」が最も多く、次に営業力や販売力の維持強化などの「営業・販路開拓」が続きます。

    【中小企業の課題の例】
    課題を抱えている部分 内容
    人材 人材の確保・育成、後継者の育成・決定
    営業、販路開拓 営業力・販売力の維持強化、国内の新規顧客・販路の開拓
    生産、製造 設備増強、設備更新、設備廃棄
    財務 運転資金の確保、設備投資資金の確保、コストの削減、借入金の削減
    商品やサービスの開発、改善 新商品・新サービスの開発、商品・サービスの付加価値化

    明確な改善点が不明な場合は、経営全般の相談に応じている支援先に、明確な改善点がある場合は、その課題に特化した専門家に依頼しましょう。

    なお、自社の経営課題を明確にするための経営分析の手法は「経営分析とは 見るべき指標と計算方法を解説」の記事で紹介しています。

  2. 公的な経営支援

    国や地方自治体では、中小企業や小規模事業者を支援するためのさまざまな施策があります。中には無料で利用できる支援もあり、業況や今後の目標に応じて相談場所を選べます。

    • よろず支援拠点
    • 都道府県等中小企業支援センター
    • 商工会や商工会議所
    • 中小企業活性化協議会
    • 中小企業電話相談ナビダイヤル(電話相談)
    • がんばる中小企業経営ホットライン(電話相談)
    • 経営相談チャットサービス
    • 中小企業金融相談
    • 金融庁電話相談

    上記は、国や地方自治体が運営している中小企業や小規模事業者の支援を行うための機関です。実際に担当者や専門家と話ができる場所や電話やチャットを活用するものなど、相談方法は多数にあります。自分にあった相談機関を見つけましょう。

    1. 適切な支援先がわからない時はよろず支援拠点

      2014年より設置されているよろず支援拠点は、全国47都道府県に拠点があり、何度でも無料で相談できます。多様な支援機関がある中で「どこに相談すればよいか分からない」という悩みを抱えている中小企業や小規模事業者も多く、よろず支援拠点は、そういった企業に対し、的確な支援機関を紹介することを目的としています。

      【よろず支援拠点の支援内容】
      支援内容 概要
      ワンストップ機能 相談者の問題や課題を整理し的確な支援機関を紹介する
      コーディネート機能 個々の支援機関では対応できない課題に対して、商工会や商工会議所、金融機関等の地域の支援機関をつなぐハブとして総合的な課題の解決を行う
      経営アドバイス 中小企業診断士やITコーディネーターをはじめとするさまざまな分野の専門家が、企業の本質的な問題を見抜き、経営に関する一歩踏み込んだ支援を行う

      よろず支援拠点に相談するには、事前の申込が必要です。申込方法は、拠点によって異なるので、それぞれの拠点のWebサイトで確認してください。
      よろず支援拠点一覧:https://yorozu.smrj.go.jp/base/

    2. 経営や助成金まで幅広い相談なら都道府県等中小企業支援センター

      都道府県等中小企業支援センターは、全国47都道府県と13の政令指定都市に相談窓口があり、何度でも無料で相談が可能な機関です。中小企業や小規模事業者の経営改善や、各地域で利用できる助成金の紹介などの支援を行っています。

      都道府県によって異なりますが、都道府県等中小企業支援センターには、中小企業診断士やITコーディネーター、税理士の資格保持者など経営に関する専門家が在籍しています。

      例えば、ワンストップ総合相談窓口では、都内の中小企業や小規模事業者、創業予定者に対し、経営全般、IT化支援、労務、税務・会計・法律に至るまで幅広い経営の課題に関する相談に、都道府県等中小企業支援センターに所属している専門の相談員が、その人に合わせた助言や専門家の紹介をしてくれます。

      都道府県によって異なりますが、相談には事前の申込が必要な場合もあります。それぞれの支援センターのWebサイトで確認してください。
      都道府県等中小企業支援センター:https://www.chusho.meti.go.jp/soudan/todou_sien.html

    3. 専門家への相談が可能な商工会や商工会議所

      商工会は、主として町村区域にあり、会員である事業者に対して経営改善を行うことを主な事業としています。商工会議所は、主に市の区域にあり、中小企業の経営支援だけでなく、国際的な活動を含めた幅広い事業を実施しています。

      商工会と商工会議所には、経済産業大臣の定める資格を持つ「経営指導員」が常駐しており、経営、金融、税制、労働など経営全般にわたって全面的な経営支援を受けることができます。事務所での相談や電話相談のほか、経営指導員が巡回での相談も行っています。

      上記の5つの購入段階を経て消費者は、商品・サービスの購入に至るという考え方です。自社の商品・サービスにおける消費者の段階を見極めることによって、消費者に対するアプローチを変えることができ、効率的な顧客獲得ができるようになります。

      【商工会の支援内容】
      • 経営相談/支援
      • 税務相談/経理指導
      • 金融相談/斡旋・取引
      • 販路開拓支援
      • 労務相談
      • 連鎖倒産防止相談
      • 分野別専門家派遣など

      ※商工会によって実施していない場合もあります。

      【商工会議所の支援内容】
      • 経営支援・創業
      • 経営革新の推進
      • 金融支援
      • 事業継承
      • インターンシップ、人材育成事業
      • グローバルな経済活動
      • 福利厚生の充実など

      ※商工会議所によって実施していない場合もあります。

      相談を受けたい場合は、商工会もしくは商工会議所の会員になりましょう。会員の申請は商工会・商工会議所のWebサイトより確認してください。
      全国の商工会一覧:https://www.shokokai.or.jp/?page_id=1754
      全国の商工会議所一覧:https://www5.cin.or.jp/ccilist

      商工会や商工会議所によって異なりますが、入会するためには一般的に入会金や月会費、または年会費がかかります。ただし、商工会・商工会議所によっては、会員でなくても相談に乗ってくれるところもあります。

      過剰債務等で経営が悪化している場合は中小企業活性化協議会

      中小企業活性化協議会は、全国の商工会議所などが運営している、中小企業の活性化を目的する公的機関です。「中小企業の駆け込み寺」として、金融機関や専門家、支援機関と協力し、収益力改善や経営改善、事業再生などの支援を行っています。過剰債務や資金繰りの悪化などの課題がある際に中小企業活性化協議会を活用してみるのが良いでしょう。

      【支援内容】
      支援内容 概要
      収益力改善支援 有事に移行する恐れのある中小企業に対し、収益力の策定を支援
      プレ再生支援 将来の本格的な再生計画策定を前提とした経営改善を支援
      再生支援 収益性のある事業はあるが、財務上に問題のある事業者に対し、専門家の助けを借り抜本的な再生支援を実施
      再チャレンジ支援 事業継続が困難な中小企業などに対し、円滑な廃業や経営者の再スタートに対する支援を実施
      早期経営改善計画策定支援 早期の経営改善を必要とする事業者に対し、経営革新等支援機関の助けを借り、資金繰り計画などの策定を支援
      経営改善計画策定支援 リスケや新規融資等の金融支援を必要としているが自らの力では経営改善計画を策定できない事業者に対し、経営革新等支援機関の助けを借り、資金繰り計画などの策定を支援

      中小企業活性化協議会に相談したい場合は、近くの窓口に問い合わせしましょう。
      窓口一覧:https://www.smrj.go.jp/supporter/revitalization/01.html

    4. 電話やチャットで気軽に相談できる場所一覧

      国が行っている支援の中には、電話やチャットで相談できる場所もあります。よろず支援拠点など、直接相談に行く時間がない場合などにも活用できます。

      中小企業電話相談
      ナビダイヤル
      電話相談 電話:0570-064-350
      平日9:00~17:00
      経営上の諸問題や中小企業施策の活用に関する相談が可能
      がんばる中小企業経営
      ホットライン
      電話相談 電話:050-3171-8814
      平日9:00~17:00
      中小企業診断士等の経営アドバイザーに経営全般の相談が可能
      経営相談
      チャットサービス
      LINE チャット
      AI:24時間365日
      専門家:平日9:00~17:00
      個々の支援機関では対応できない課題に対して、商工会や商工会議所、金融機関等の地域の支援機関をつなぐハブとして総合的な課題の解決を行う
      中小企業金融相談 電話相談 電話:0570-783-183
      平日土日祝日9:00~17:30
      資金繰りに関する相談が可能
      金融庁電話相談 電話相談 電話:0120-156811
      平日9:00~17:00
      民間金融機関に関する取引についての相談が可能

      中小企業電話相談ナビダイヤルや、がんばる中小企業経営ホットラインは、経営全般に関する相談が可能です。

      経営相談チャットサービスは、インターネットやLINEを活用し、経営全般に関する相談ができます。AIによる相談はいつでもできますが、決められた応答のみとなっているので、自社の状況に合わせて相談に乗って欲しい場合は、専門家とチャットができる時間に相談すると良いでしょう。専門家とのチャットが出来るのは、平日の9時から17時までの間です。

      中小企業金融相談は資金繰りについて、金融庁電話相談は融資などの民間金融機関に関する相談を受け付けているので、資金に関する悩みがある方は活用してみてください。

  3. 専門家の経営支援

    公的な機関に加えて、民間にも経営支援を行っている企業や事務所があります。民間の専門家は企業や事務所ごとに強みが異なるため、自社の課題の解決に強みのある企業や事務所を選びましょう。

    【民間の専門家一覧】
    専門家名 内容業務内容・強み
    人材コンサルティング会社 自社の課題に合わせた会社を選択できる
    中小企業診断士 中小企業の経営課題全般に対応
    社会保険労務士 労務改善や助成金の申請
    税理士 税務に関する申請サポートや節税に関する相談

    コンサルティング会社に経営支援を依頼することで、客観的な視点から自社の経営について知ることができます。また、経営を改善するための幅広いノウハウを持っているので、効率的な経営課題の解決につながります。

    どのコンサルティング会社に相談をするべきか決定する際には、経営分析をして自社の課題を明確にして、その課題に強いコンサルティング会社に相談すると良いでしょう。経営分析をする時間が無い、または特定の問題だけでなく総合的な経営支援が欲しいときは、総合系のコンサルティング会社に相談をしてみましょう。

    1. 専門的な知識をもとに全般的な相談が可能な中小企業診断士

      中小企業診断士は中小企業の成長戦略の策定やその実行のためのアドバイスなどのコンサルティングを行う専門家です。企業の成長戦略の策定のため、専門的知識を持って経営計画を立てて支援を行っていきます。また、中小企業診断士は金融機関や行政と企業の間の橋渡し役を担うこともあります。

      【中小企業診断士の支援内容】
      • 経営戦略/計画策定支援
      • 人材育成
      • 管理システム構築
      • 製造業における現場の改善と技術指導
      • 技術経営戦略
      • 創業/新分野進出支援
      • 公的診断/調査研究
      • 行政施策支援

      経営に関する支援としては、企業を成長させるための経営計画の作成支援や、研修などの人事に関する支援、国が行っている経営改善の事業「経営革新計画策定支援」などです。大手も対象にするコンサルティング会社に対し、中小企業診断士は、中小企業の経営に関するプロフェッショナルなので、経営に課題を感じている中小企業の経営者の人は、中小企業診断士に相談してみるのが良いでしょう。

    2. 労務や助成金の申請に関することは社会保険労務士

      社会保険労務士(社労士)は企業の「人材」に関する専門家であり、労働や社会保険に関する諸問題や年金に関する支援を行っています。具体的な相談内容としては、助成金の申請や雇用の際に必要になる雇用契約書や就業規則などの相談が挙げられます。雇用や社会保険などの分野において唯一の国家資格のため、専門的な相談が可能です。

      【社会保険労務士の支援内容】
      支援内容 概要
      助成金の申請 助成金申請のための書類作成サポートを受けられる
      社会保険などに関する申請業務と手続き代行 健康保険や厚生年金保険の算定基礎届けや月額変更届、労働保険の年度更新手続きや健康保険の給付申請手続きなどの手続きや申請の代行を支援
      労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類の作成 労働保険関連の帳簿には労働者名簿、賃金台帳、出勤簿の3種類の帳簿の作成
      労務関係におけるコンサルティング 企業における労務に関する課題や社会保険など労務関係における相談ができる

      特に経営に関する支援を受ける際には、助成金の申請や労務関係に関するコンサルティングを受けて、資金繰りの見直しをすると良いでしょう。

    3. 税に関することは税理士

      税理士は、税に関する専門家であり、税金に関する相談や確定申告書などの作成・申請に関する相談が可能です。税務代理業務や税務書類の作成などは税理士にしかできない無償独占業務となっているので、税に関する相談は税理士に行うのが良いでしょう。

      【税理士の支援内容】
      支援内容 概要
      税務代理 確定申告や青色申告の承認申請を行う
      税務書類の作成 確定申告書や相続税申告書、税務署へ提出する書類作成を行う
      税務相談 税金に関するアドバイスやコンサルティングを行う
      会計業務 税理士業務に付随し、財務書類の作成や会計帳簿の記帳代行などを行う

      特に経営改善として税理士に依頼するケースでは、税務相談を利用して経理上で節税できるところがないかを確認してみると良いでしょう。

  4. まとめ

    第3者に経営支援を依頼することによって、客観的な立場からアドバイスをもらえるようになります。自社だけでは気付かなかった課題や問題にアプローチできる可能性もあるので、専門家の経営支援を活用していきましょう。

    公的な支援機関としては、よろず支援拠点や都道府県等中小企業支援センター、商工会や商工会議所などがあります。場所によっては無料で相談が可能なため、業況が厳しい時も活用しやすくなっています。

    民間の専門家には、コンサルティング会社や士業事務所などがあります。一般的に民間の専門家へ依頼するには費用がかかりますが、専門家の視点からアドバイスをもらえるので、課題が明確な時に活用してみると良いでしょう。

  • ※ 本コラムは2023年1月20日現在の情報に基づいて執筆したものです。
  • ※ 本コラムの内容は執筆者個人の見解です。

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執筆者情報

株式会社SoLabo 代表取締役/ 税理士有資格者 田原 広一(たはら こういち) 監修

株式会社SoLabo 代表取締役/ 税理士有資格者
田原 広一(たはら こういち) 監修

現在までの融資実績は4500件以上
株式会社SoLaboにおいて、8期目まで3億円以上の融資を受ける
事業再構築助成金第4回~6回におけるサポート実績は、採択数日本一を誇る(2021年~2022年時点:SoLabo社調べ)

【書籍】
『独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方35の秘訣』(幻冬舎)
『増補改訂版 独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎)

【運営サイト】
創業融資ガイド » https://jfc-guide.com/
補助金ガイド » https://so-labo.co.jp/hojyokin/

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