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#7事業再構築補助金
ウィズコロナやポストコロナ、生産性向上など現代の中小企業には、対応すべき課題が山積しています。そのような複雑な環境の中で生き残れるよう、国は積極的に経営革新に取り組む中小企業に補助金を用意しています。その代表格に事業再構築補助金があります。事業再構築補助金とは、事業の継続が難しくなったコロナ禍において、新しい事業展開を検討する中小・中堅企業等の思い切った「事業再構築」の挑戦を支援する補助金です。新規事業の立ち上げにも活用することができますので、そのポイントについてご紹介します。
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1.必須の申請要件
事業再構築補助金を申請するには、以下の4つに該当している必要があります。
- ①売上が減っていること
- ②事業再構築指針に示す「事業再構築」を行うこと
- ③認定経営革新等支援機関と事業計画を策定すること
- ④付加価値額が3.0%(一部5.0%)以上増加する事業計画を策定すること
それぞれ詳細な内容を見ていきましょう。
①売上が減っていること
事業再構築補助金を申請するには、コロナの影響で「売上が減っている」ことを示す必要があります。
2022年7月時点では、以下の条件になっています。2020年4月以降の連続する6カ月間のうち、任意の3カ月の合計売上高が、コロナ以前(2019年または2020年1月~3月)の同3カ月の合計売上高と比較して10%以上減少していること。(売上高に代えて、付加価値額を用いることも可能)
②事業再構築指針に示す「事業再構築」を行うこと
事業再構築指針とは、「事業再構築」の定義等について明らかにしたものです。事業再構築補助金を申請するには、事業再構築指針に則った「新分野展開」「事業転換」「業種転換」「業態転換」「事業再編」のいずれかに該当する取組を行う必要があります。塁型 定義 新分野展開 主たる業種又は主たる事業を変更することなく、新たな製品等を製造等することにより、新たな市場に進出すること 事業転換 新たな製品等を製造等することにより、主たる業種を変更することなく、主たる事業を変更すること 業種転換 新たな製品等を製造等することにより、主たる業種を変更すること 業態転換 製品等の製造方法等を相当程度変更すること 事業再編 会社法上の組織再編行為(合併、会社分割、株式交換、株式移転、事業譲渡)等を行い、新たな事業形態のもとに、新分野展開、事業転換、業種転換又は業態転換のいずれかを行うこと ③認定経営革新等支援機関と事業計画を策定すること
認定経営革新等支援機関とは、中小企業を支援できる機関として、経済産業大臣が認定した機関です。全国で3万以上の金融機関、支援団体、税理士、中小企業診断士等が認定を受けており、中小企業庁のホームページで、認定支援機関を検索することが可能です。事業再構築補助金を申請するには、事業計画を認定支援機関と策定する必要があります。④付加価値額が3.0%(一部5.0%)以上増加する事業計画を策定すること
付加価値額とは、営業利益、人件費、減価償却費を足したものをいいます。補助事業終了年度(補助事業終了月の属する申請者における決算年度)の付加価値額と比較して、補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)増加する見込みの事業計画を策定する必要があります。原則は3.0%以上ですが、グリーン成長枠は5.0%以上の増加が要件となります。なお、第5回公募で公募終了となった「卒業枠」、「グローバルV字回復枠」以外の枠については、付加価値額の増加目標が未達成となった場合でも、補助金の返還等のペナルティはありません。 -
2.事業再構築補助金の申請類型
事業再構築補助金では「通常枠」、「大規模賃金引上枠」、「回復・再生応援枠」、「最低賃金枠」、「グリーン成長枠」、「緊急対策枠」と、全部で6つの枠が設定されています。
「通常枠」は最も一般的な枠です。補助金額は、以下のようになっています。
従業員数 補助額 補助率 20人以下 100万円~2,000万円 中小企業の場合は、2/3(6,000万円超は1/2)
中堅企業の場合は、1/2(4,000万円を超える部分は1/3)21~50人 100万円~4,000万円 51~100人 100万円~6,000万円 101人以上 100万円~8,000万円 「回復・再生応援枠」と「最低賃金枠」は、通常枠よりも補助金額の上限を引き下げる一方補助率を引き上げた枠で、通常枠より採択されやすくなっています。
「緊急対策枠」は、第7回公募から新たに設けられた、原油価格・物価高騰等の予期せぬ経済環境の変化の影響を受けている中小企業等の事業再構築を支援する枠です。「緊急対策枠」は、回復・再生応援枠と最低賃金枠よりも補助金額の上限が高く設定されており、通常枠に申請できない「2021年以降に創業した事業者」でも、条件を満たせば申請することができます。
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3.事業計画の策定にあたって
事業計画書の様式や書き方に決まりはありません。事業再構築補助金・採択事例のページで採択事例が紹介されていますので、そちらを参考に作成を進めていくのもよいでしょう。補助金を受けるには採択審査で採択される必要があり、要件を満たすすべての方が採択となるわけではありません。採択されるためには、認定経営革新等支援機関と相談しながら、具体的で、誰が見ても分かりやすい事業計画を作成することが重要と考えます。
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4.申請について
申請は公募期間中に行う必要がありますので、中小企業庁のホームページなどで申請受付期間を確認してください。
事業再構築補助金のポイントについて紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
補助金を上手く活用しながら、ウィズコロナ・ポストコロナ時代の環境変化を新たなビジネスチャンスととらえ、事業を発展させていきましょう。
- ※ 本コラムは2022年8月10日現在の情報に基づいて執筆したものです。
- ※ 本コラムの内容は執筆者個人の見解です。
- ※ 事業再構築補助金の制度詳細については、中小企業庁等のホームページ等で最新の情報を直接ご確認ください。
執筆者情報
V-Spirits グループ代表
税理士・社労士・行政書士・CFP®
中野 裕哲 監修
■起業コンサルタント®、税理士、特定社労士、行政書士、CFP®。V-Spiritsグループ代表(税理士法人・社会保険労務士法人・行政書士法人・株式会社V-Spirits/V-Spirits会計コンシェル・給与コンシェル・FPマネーコンシェル・経営戦略研究所株式会社)。
年間約300件の起業相談を無料で受託し、起業家をまるごと支援。経済産業省後援 起業支援サイト「DREAM GATE」で11年連続相談数日本一。著書・監修書に『一日も早く起業したい人がやっておくべきこと・知っておくべきこと』(明日香出版社)、『ネコ先生がやさしく教える 起業のやり方』(アスカビジネス)など、16冊、累計20万部超。
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