会社設立に必要な印鑑4種類と選び方は?費用相場・セット購入・注意点までを解説

会社設立に必要な印鑑は何種類で、どう選べばよいのでしょうか。オンライン登記申請の普及により印鑑提出は任意となりましたが、銀行口座開設・契約書への捺印など設立後の実務では欠かせません。

本記事では、会社設立で用意すべき印鑑の種類・役割・選び方・費用相場・セット購入のメリット・購入時の注意点まで、設立前に知っておくべき情報をまとめて解説します。

目次

1.会社設立と印鑑の関係|任意でも準備すべき理由

会社設立と印鑑の関係を正しく理解しておくことで、準備の優先順位を把握できます。

「法改正で印鑑が不要になった」という情報を見て準備を後回しにしてしまう方がいますが、実際には設立後の実務で印鑑は必須です。法改正の正確な内容を把握したうえで、準備を進めましょう。

1-1.オンライン登記申請では印鑑提出は任意

令和2年(2020年)4月の法改正により、商業登記規則が改正され、設立登記の申請書に代表者印を押印する義務が廃止されました。オンライン申請(電子申請)を利用する場合は印鑑なしで登記申請が完結します。

ただしこれは「登記申請時の押印義務の廃止」であり、印鑑自体が不要になったわけではありません。設立後の実務では依然として印鑑が必要な場面が多数あります。

1-2.任意でも用意すべき理由(銀行口座開設・契約書・取引先への信頼性)

登記申請で印鑑が不要になったとはいえ、設立後すぐに必要になる場面が多くあります。法人口座の開設(特に都市銀行・地方銀行では銀行印・印鑑証明書が必要)、取引先との重要な契約への捺印、賃貸借契約など不動産関係の手続きなどが代表例です。

また、取引先に対して「法人印がある=信頼できる企業」という心理的な安心感を与える効果もあります。法人印の有無が商談の信頼性に影響する場合もあるため、設立と同時に準備しておくことを強くおすすめします。

2.会社設立で用意すべき印鑑4種類と役割

会社設立で用意すべき印鑑は、法人が使う印鑑と、個人(発起人・代表者)が使う印鑑に分けて考えることが重要です。以下では、法人が用意する4種類の印鑑を解説します。

なお、発起人・代表取締役の個人実印は印鑑届書の提出などに必要ですが、これは会社の印鑑ではなく個人の印鑑です。本章では法人が用意する印鑑のみについて解説します。

印鑑の種類 主な用途 サイズの目安 法的効力
代表者印(会社実印) 登記申請・重要契約・金融機関手続き 18〜21mm 最高(法的拘束力あり)
銀行印 法人口座の開設・銀行取引 16.5〜18mm 金融取引上の効力
角印(会社認印 請求書・見積書・領収書への捺印 21〜24mm角 低い(慣習的な使用)
ゴム印(住所印) 封筒・書類への会社情報スタンプ 任意 なし(事務効率化用)

2-1.代表者印(会社実印)|法的効力が最も高い必須の印鑑

代表者印は「会社の実印」であり、法的効力が最も高い印鑑です。会社設立時の登記申請(任意)・金融機関との契約・不動産売買や賃貸借契約・融資契約など、重要な場面で使用されます。

法務局に印鑑登録を行い、印鑑証明書を取得できる印鑑が代表者印です。法的拘束力のある契約には、必ず代表者印を使用します。代表者が変わった場合は、改めて法務局への登録変更が必要です。

サイズは18〜21mmの丸印が一般的で、法務局の規定(一辺の長さが1cm以上3cm以内の正方形に収まること)を満たす必要があります。シャチハタなどのゴム印は代表者印として登録できません。

代表者印は、取引相手から「この契約・書類に法的な効力がある」と認識される重要な印鑑です。他の印鑑と混同しないよう印鑑ケースに種類を明記し、代表者が厳重に管理することが原則です。

2-2.銀行印|法人口座開設に使用する専用印鑑

銀行印は、法人口座を開設する際に金融機関に届け出る専用の印鑑です。振込・口座振替・小切手発行などの銀行取引に使用されます。

代表者印と同じ印鑑を銀行印として届け出ることもできますが、リスク管理の観点から別々に用意することが一般的です。万が一紛失・盗難の場合に、銀行取引のみを止めることができます。サイズは16.5〜18mmの丸印が主流です。

銀行によっては、法人口座開設時に銀行印の印影が書類に押印されます。鮮明で安定した印影が取れる品質のものを選びましょう。

2-3.角印(会社認印)|請求書・見積書・領収書への捺印に使用

角印は正方形の形をした会社の認印で、日常的な業務書類への捺印に使用します。請求書・見積書・納品書・領収書・社内稟議書など、日常的に使用する書類への押印が主な用途です。

代表者印と異なり法的効力は高くありませんが、「この書類は正式に会社が発行したもの」であることを示す慣習的な印として、多くの取引で求められます。サイズは21〜24mm角が一般的です。

角印がないと請求書・見積書の発行のたびに代表者印を使うことになり、代表者印の劣化・紛失リスクが高まります。日常業務では角印を使い、重要書類のみに代表者印を使うという使い分けが理想的です。

2-4.ゴム印(住所印)|日常業務の書類作成を効率化するスタンプ

ゴム印(住所印)は、会社名・住所・電話番号・FAX番号などをスタンプで押せるインク式のゴム製印鑑です。封筒の差出人表記・書類への会社情報記載などに使用します。

ゴム印は法的効力を持つ印鑑ではありませんが、書類作成の効率化に大きく貢献します。書類に会社情報を1つ1つ手書きする手間を省けるため、設立直後から書類業務が多い場合は、特に重宝します。

3.法人印鑑の選び方【サイズ・素材・書体】

法人印鑑を選ぶ際は、サイズ・素材・書体の3つのポイントを押さえておきましょう。

3-1.サイズ|代表者印は18〜21mm、銀行印・角印のサイズ規定

代表者印(丸印)は18〜21mmが一般的で、法務局の規定(一辺の長さが1cm以上3cm以内の正方形に収まること)を満たす必要があります。最も多く選ばれるのは18mmサイズです。

銀行印は16.5〜18mmが主流で、代表者印と区別しやすいよう少し小さいサイズが選ばれることが多いです。角印は21〜24mm角の正方形型が一般的で、書類に「会社名」と「印」が見やすく収まるサイズが好まれます。

印鑑のサイズは変更できないため、発注前に用途・書類に押印した際の見た目を考慮して選びましょう。

3-2.素材|柘・黒水牛・チタンの特長と選び方

印鑑の素材は、大きく「木材系・角系・金属系」に分かれます。柘(つげ)は木材の中で最も耐久性が高く、安価で法人印鑑の素材として定番です。1〜3万円程度の印鑑セットに多く使用されます。

黒水牛は硬度が高く耐久性に優れ、押印の安定感があります。長期間にわたって使用することが多い代表者印の素材として人気があります。チタンは最も耐久性が高く、錆びにくいため長寿命です。費用は高めですが、長く使い続けることを考えると費用対効果が高い素材です。

3-3.書体|篆書体・印相体・古印体・隷書体の4種類と特長

法人印鑑によく使われる書体は「篆書体(てんしょたい)・印相体(いんそうたい)・古印体(こいんたい)・隷書体(れいしょたい)」の4種類です。

篆書体は日本の印鑑に最も多く使われる伝統的な書体で、独特の曲線が特徴です。印相体は篆書体をベースに変形させた書体で、判読しにくいため偽造防止効果が高く、代表者印に多く採用されます。

古印体は古い日本の印鑑に見られる書体で、素朴な風合いがあります。隷書体は横線を強調した読みやすい書体で、角印のような認印に向いています。代表者印や銀行印には防犯性の観点から篆書体・印相体を選ぶことをおすすめします。

書体は偽造防止の観点から「判読しにくいもの」を代表者印・銀行印に選び、角印には比較的読みやすい書体を選ぶというのが一般的な選び方です。印鑑購入時に書体のサンプルが確認できる業者を選ぶと安心です。

4.法人印鑑の費用相場とセット購入のメリット

法人印鑑の費用は素材・サイズ・書体・購入先によって大きく異なります。相場観を把握したうえで、自社に合った選択をしましょう。

4-1.印鑑の種類別費用相場(代表者印・銀行印・角印・ゴム印)

各印鑑の単品購入時の費用相場は以下の通りです。代表者印(18mm):1〜3万円程度(チタン製は3万円以上)、銀行印(16.5mm):5,000円〜2万円程度、角印(21mm角):5,000円〜1万5,000円程度、ゴム印:1,500〜5,000円程度です。

素材が上がるほど費用も高くなりますが、代表者印のように長く使い続けるものは耐久性の高い素材を選ぶことで、長期的なコストが下がります。設立初期は費用を抑えつつ、事業が軌道に乗った後に高品質な印鑑に切り替えるという方法も有効です。

相場はネット通販と実店舗で大きく異なります。同じ素材・サイズでも、ネット通販の方が20〜50%程度安くなるケースが多いです。品質が担保されているブランドからの購入をおすすめします。

4-2.3点セット(代表者印・銀行印・角印)のメリットと相場

代表者印・銀行印・角印の3点をセットで購入すると、単品合計より20〜30%程度安くなる場合があります。3点セットの相場は1万5,000〜3万円程度(素材・サイズによる)です。

3点セットは会社設立時の最低限必要な印鑑がまとめて揃うため、印鑑の購入先を一本化できるメリットもあります。素材・書体・ケースを統一した印鑑セットは管理もしやすくなります。

4-3.4点セット(+ゴム印)との違いと選び方

3点セットにゴム印(住所印)を加えた4点セットは、2〜4万円程度が相場です。設立直後から書類業務が多い場合(請求書・封筒の差出人など)は、ゴム印も合わせて購入する4点セットが効率的です。

まず事業が安定するまでは3点セット、書類業務が増えてきたらゴム印を追加するという段階的な準備も合理的な選択肢です。

4-4.格安品・ネット通販を選ぶ際の注意点

ネット通販では安価な印鑑セット(1万円以下)が販売されています。費用を抑えたい場合は有効な選択肢ですが、いくつかの注意点があります。

格安品は素材が柔らかい場合があり、使用頻度が高い代表者印では欠けや変形のリスクがあります。特に代表者印は法的拘束力の強い書類に使用するため、品質が安定した専門店またはブランド品を選ぶことをおすすめします。

銀行印・角印は比較的使用頻度が低い場合もあるため、ネット通販のセット品で費用を抑えることも検討できます。購入時はレビュー・素材・品質保証の有無を確認しましょう。

印鑑の品質は実際に押印してみないと分かりにくい面があります。信頼できる業者の製品を選び、必要に応じて試し押しの対応があるか確認しておきましょう。

5.法人印鑑の購入方法と発注タイミング

購入先の選択と発注タイミングを事前に把握しておくことで、設立スケジュールを円滑に進められます。

5-1.印鑑専門店・ネット通販・100円ショップとの違いと選び方

印鑑の購入先は大きく「印鑑専門店(実店舗)」「ネット通販の印鑑専門店」「ホームセンター・100円ショップ」の3種類があります。実店舗の印鑑専門店は品質・種類が充実しており、対面で相談しながら選べる安心感があります。ただし価格は高めです。

ネット通販の印鑑専門店は、品質と価格のバランスが取りやすく、セット商品も豊富です。代表者印・銀行印・角印のセットで1.5〜3万円程度が目安です。

100円ショップやホームセンターの既製印鑑は個人の認印としては使えますが、法人の代表者印・銀行印としての使用には品質・耐久性が不十分なため推奨しません。

5-2.設立登記の申請日から逆算した発注タイミング(最低1〜2週間前が目安)

印鑑の作成には通常3〜7営業日かかります(即日対応の業者もありますが割高になる場合あり)。設立登記の申請日から逆算して最低1〜2週間前には発注を完了させることが目安です。

設立日を月初や縁起のよい日に設定している場合は、特にスケジュールが詰まりやすくなります。会社設立を決めたら、印鑑の発注を最優先で進めることをおすすめします。

印鑑の到着が遅れた場合、設立登記の申請日を後ろ倒しにする必要が生じます。余裕を持って2週間前には発注を完了させることが安全です。

6.会社設立前に行う印鑑登録の方法

代表者印を法務局に登録することで、法的効力のある印鑑証明書が取得できるようになります。登録の流れを確認しておきましょう。

6-1.法務局への印鑑届出の流れ

会社設立登記の申請と同時に「印鑑届書」を提出することで、代表者印が法務局に登録されます。印鑑届書には会社の実印(登録したい印鑑)と代表者個人の実印・個人の印鑑証明書が必要です。

設立登記が完了した時点で法人の印鑑登録も完了します。設立後に代表者が変わった場合や印鑑を紛失・変更した場合は、改めて変更の届出が必要になります。

印鑑届書は登記申請と同時に提出しなかった場合でも、後から単独で提出することができます。ただし、印鑑証明書が必要な手続き(法人口座開設など)の前に完了させておく必要があります。

6-2.印鑑カードの交付申請

印鑑登録が完了したら、次に「印鑑カード交付申請書」を法務局に提出して印鑑カードを取得します。印鑑カードは印鑑証明書を取得するために必要なカードです。

印鑑カードの交付手数料は無料で、窓口または郵送で申請できます。代理人による申請も委任状があれば可能です。設立登記完了後すぐに申請しておくことで、法人口座開設などの後続手続きをスムーズに進められます。

7.法人の印鑑証明書の取得方法

法人の印鑑証明書は、銀行口座の開設・重要な契約書の締結など多くの場面で必要になります。取得方法を把握しておきましょう。

印鑑証明書の取得には印鑑カードが必要です。印鑑カードを取得していない場合は先に交付申請を行う必要があります。

7-1.窓口・郵送・オンライン申請の3種類

法人の印鑑証明書は、法務局の窓口・郵送・オンライン申請(登記・供託オンライン申請システム)の3種類の方法で取得できます。窓口では即日受取が可能で、オンライン申請では手数料が430円と若干安くなります(窓口・郵送は450円)。

詳しい取得方法や必要書類については、「法人 印鑑証明 必要なもの」の記事で解説しています。

7-2.手数料と受付時間の目安

手数料は1通あたり、窓口・郵送が450円、オンライン申請が430円です。法務局の窓口受付時間は平日9時〜17時(または16時)が一般的です。コンビニでは取得できない点が個人の印鑑証明書と大きく異なります。

8.法人口座の開設には銀行印と印鑑証明書が必要な場合がある

印鑑の準備が整ったら、次のステップとして法人口座の開設に進みましょう。

法人口座を開設するためには銀行印と印鑑証明書が必要なケースが多く、印鑑の準備が完了していることが前提となります。口座開設の方法は銀行によって異なります。

8-1.都市銀行では銀行印と印鑑証明書の提出を求められるケースが多い

メガバンク・地方銀行の窓口での法人口座開設では、銀行印・印鑑証明書・登記事項証明書などの提出が求められるのが一般的です。この際、銀行印として届け出た印鑑が以降の銀行取引に必要となります。

8-2.GMOあおぞらネット銀行の法人口座はオンライン完結で書類負担が少ない

GMOあおぞらネット銀行の法人口座開設はオンラインで完結します。原則、印鑑証明書の提出が不要で、必要書類も代表者の本人確認書類と事業内容が分かる書類の2点(※)で、設立直後でも申し込みやすい環境が整っています。

また、GMOあおぞらネット銀行は設立1年未満の法人の場合、他行宛て振込手数料が登記上の設立月から12か月、毎月20回まで無料の特典もあるため、「創業期の選択肢」として注目されています。

※申込内容によって異なります

まとめ

会社設立で用意すべき印鑑は、代表者印・銀行印・角印・ゴム印の4種類です。オンライン登記申請では印鑑押印は任意ですが、銀行口座開設や取引先との契約など設立後の実務で必ず必要になります。

サイズ・素材・書体を用途に合わせて選び、設立登記申請の1〜2週間前には発注を完了させましょう。費用は3点セットで1.5〜3万円程度が目安です。

印鑑が揃ったら印鑑登録を行い、法人口座の開設へと進みましょう。

※本コラムは2026年7月31日現在の情報に基づいて執筆したものです。
※当社広告部分を除く本コラムの内容は執筆者個人の見解です。

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