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- ※ 本コラムの内容は執筆者個人の見解です。
#24株式会社設立の「発起人」ってどんな人のこと?複数人いる場合は?
株式会社設立について調べていると、「発起人」という言葉を頻繁に目にします。しかし、株式会社を初めて設立する人の中には、発起人の意味が分からず不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。そこで、今回は、株式会社設立において大切な発起人の意味や役割を解説すると共に、発起人が持つ責任や複数人で株式会社設立する場合の注意点もあわせて紹介します。
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1.発起人とは
株式会社を設立する際に、発起人という言葉は必ず出てきます。そのため、株式会社における発起人の意味を、しっかりと押さえておくことが必要です。ここでは、発起人の意味や取締役との言葉の違いもあわせて解説します。
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1-1.発起人の意味
発起人とは、株式会社を設立する人のことです。発起人は、このほかにも「株式会社を設立しようと考えた人」「株式会社設立の手続きをした人」「資本金の出資をする人」など、さまざまな意味で使われていることがあります。発起人とは、株式会社設立時に資本金を出資した人のことです。したがって、株式会社設立のために奔走した人であっても、出資していなければ発起人とはなりません。株式会社の設立が無事完了すれば、発起人は株主となります。株主は、株式会社の意思決定に深く関わることになるので、発起人は株式会社にとって非常に重要な人物です。
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1-2.取締役との違い
株式会社設立にあまり詳しくない人の中には、発起人と取締役の違いが分からない人もいるでしょう。簡単に説明すると、「株式会社を作るのが発起人」「設立した株式会社を運営するのが取締役」という違いがあります。つまり、株式会社を所有と経営は別ということです。株式会社であれば、株式会社の株主である発起人が取締役を指名して決定します。株式会社を設立した後の運営は、取締役と株主総会での決定で行うのが一般的です。発起人も株主総会に出席するため意思決定に関わることになります。
しかし、取締役のように株式会社の経営に直接関与する権利はないのです。ちなみに、すべての株式会社で発起人と取締役が別になっているわけではありません。個人事業主から法人成りした株式会社であれば、発起人と取締役が同じ人物であることも多いです。
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2.発起人の資格
発起人は誰でもなれるわけではありません。発起人になれるのは、年齢が15歳以上の人か法人に限られます。発起人になるためには、印鑑登録をした印鑑の押印が必要です。しかし、15歳未満の人は印鑑登録自体ができないため、株式会社の発起人になれません。年齢が15歳を超えても未成年ですが、法定代理人である親権者の同意を得れば、株式会社の発起人になることは可能です。この場合は、株式会社の発起人になるときに法定代理人の印鑑証明書、戸籍謄本、同意書などを用意する必要があるので覚えておきましょう。
株式会社株式会社、また発起人は、日本人だけでなく外国人でもなる資格があります。このほか、破産者や刑罰を受けて執行猶予中の人物でも発起人になることは可能です。発起人の人数は、特に定めがないので1人はもちろん、複数人でも問題ありません。ただし、株式会社の発起人を複数人に任せる場合は、後ほど詳しく紹介する注意点をよく確認する必要があります。
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3.発起人の役割
株式会社の発起人が任される役割には、主に以下の7つがあります。
- 株式会社の重要事項や事業内容などの概要を決定する
- 株式会社の定款を作成して署名する
- 募集設立時に株主の募集をする
- 創立総会の開催をする
- 株式会社設立時に取締役を選任する
- 出資金を支払う
- 株式会社設立に必要な営業や準備をする
なお、株式会社の設立後、役員にならない発起人は、株主として株式会社の意思決定に関わることになります。
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4.発起人の責任
発起人が負う責任は、基本的に株式会社を設立するまでの行動に対してです。例えば、株式会社設立手続きで発起人が任された役割を果たせずに、株式会社に対して損害を与えた場合は、責任を問われます。もしも、職務を果たさなかった発起人が原因で株式会社を設立できなかった場合は、設立に関する行為や支出した費用の責任を負うことになります。また、財産引受や現物出資や価額が定款に記載した価額との差額が大きい場合は、発起人と設立時の取締役が連帯して株式会社の損害額の補てんを行うことになります。(一部例外あり)
発起人が悪意を持っていたり、重大な過失で第三者に損害を及ぼしたりした場合も賠償の対象です。ちなみに、発起人が原因で受けた賠償の義務は、連帯責任が原則になっています。そのため、問題を起こした発起人以外の発起人や設立時取締役による損害も、連帯して賠償する必要があるのです。ただし、発起人が原因で受けた賠償、問題を起こした発起人以外の発起人や設立時取締役による損害、いずれの場合も、株主総会の同意を得れば賠償義務は問われないことを頭に入れておきましょう。
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5.発起人は複数いても問題ない。発起人が複数であるメリットとデメリット
上述したとおり、株式会社の発起人は人数の上限がありません。発起人が1人でも、問題なく株式会社を設立できます。例えば、友人や家族にお願いして株式会社に出資してもらう場合に、その人たちを発起人にすることも可能です。また、発起人が負う重い責任を分散できる点も発起人を複数にするメリットの一つです。発起人を1人に限定するのではなく、株式会社経営に関する知識が豊富な人など、優秀な人材を発起人として集めれば、株式会社にとって大きな力になるでしょう。発起人同士でスキルや人脈面などで協力し合えると、より事業を軌道に乗せやすくなる可能性が期待できます。
一方、発起人が複数いると株式会社設立時の手続きなどで用意する書類が増えます。発起人が1人の株式会社と比べると、書類の準備に手間がかかる点はデメリットです。また、発起人が1人なら関係者の取りまとめをする必要がありませんが、複数人だと意見をまとめるのに苦労することがあります。発起人は、全員に等しく発言権があるため、株式会社に関する重要な判断をする局面で、足並みをそろえられずに株式会社を設立できなくなる可能性も否めません。発起人を複数で構成するなら、あまり人数が多くなりすぎないように注意しましょう。また、人選も大切です。発起人にしようとする人と「自分の考えの方向性が同じか」「意見が割れる可能性が低いか」などを中心によく考えるようにしましょう。
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6.発起人が複数いる場合の株式比率の注意点
株式会社を設立した後に、重要事項を決める場合は株主総会を開いて決定することになります。株主総会での意見の決定方法は、議決権に基づいた多数決です。株式総会で大きな発言権を持つのは、株式を所有している割合が多い人のため、発起人が複数いると株式の所有割合や決議の種類によっては、自分の決議が通らない可能性があります。株式総会で行われる決議は、「普通決議」「特別決議」の2種類です。普通決議は、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数で決議されます。
したがって、自分が株式会社の株式の50%超を持つようにすれば、意見が通らなくなることはないでしょう。しかし、特別会議の場合は議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権に対して3分の2以上で決議になります。普通決議よりも、自分の意見を通すのに必要な株式割合が大きくなるので、発起人を複数にする場合は注意が必要です。
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7.発起人には責任が伴うことも。複数人で担う場合も意見割れに注意
発起人は、株式会社設立において非常に大切な役割を持つため、責任も重いです。この責任を分散するために、複数人で発起人を担う方法もあります。しかし、複数人の発起人がいる場合、株式会社設立時などに必要な手続きがスムーズに進まなかったり発起人の中で意見が割れたりする可能性があるため注意が必要です。今回紹介した内容を参考に、自社における発起人の選定や在り方について考えてみてはいかがでしょうか。
- ※ 本コラムは2022年5月30日現在の情報に基づいて執筆したものです。
- ※ 本コラムの内容は執筆者個人の見解です。
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執筆者情報
V-Spirits グループ代表
税理士・社労士・行政書士・CFP®
中野 裕哲 監修
■起業コンサルタント®、税理士、特定社労士、行政書士、CFP®。V-Spiritsグループ代表(税理士法人・社会保険労務士法人・行政書士法人・株式会社V-Spirits/V-Spirits会計コンシェル・給与コンシェル・FPマネーコンシェル・経営戦略研究所株式会社)。
年間約300件の起業相談を無料で受託し、起業家をまるごと支援。経済産業省後援 起業支援サイト「DREAM GATE」で11年連続相談数日本一。著書・監修書に『一日も早く起業したい人がやっておくべきこと・知っておくべきこと』(明日香出版社)、『ネコ先生がやさしく教える 起業のやり方』(アスカビジネス)など、16冊、累計20万部超。
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