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- ※ 本コラムの内容は執筆者個人の見解です。
#26資本金の額と法人口座開設のしやすさは関係があるの?資本金と口座の関係
「会社の資本金が少ないと、口座開設の審査に影響がある」という話を耳にしたことがある人もいるのではないでしょうか。会社法において、会社を設立する場合は、資本金が1円でも問題ありません。しかし、資本金を少なくしたことが原因で法人口座の開設ができなければ、会社を効率良く運営できなくなる可能性があります。そこで、この記事では、法人の資本金の額と法人口座の関係について解説します。
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1.結論:資本金の額は法人口座開設に影響する
会社の資本金の額が著しく少ない場合は、法人口座を開設できない可能性があります。なぜなら、資本金が少ない会社は「不審な会社」と判断されることが多いからです。この背景には、過去に法人口座を振り込め詐欺などの犯罪に利用する手口が増えたことがあります。そのため、資本金が少ない小規模法人は、「会社としての体力がない」「法人口座を使って犯罪をたくらんでいる会社」などと判断される可能性があるのです。会社法上では、資本金の額は1円でも問題ありません。しかし、あまりにも少額だと法人口座を開設できなくなる可能性があるため、資本金の額はよく検討するようにしましょう。
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2.「資本金」とはどのようなものか確認
会社設立において資本金とは、会社を設立するときの元手を表します。資本金は、経営資金にも影響を及ぼすので、金額を慎重に決定することが大切です。
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3.資本金が少ない場合のデメリット
ここでは、会社の資本金が少ないと発生するデメリットを2つ紹介します。
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3-1.経営できなくなるかも
会社を設立する費用を抑えるために、資本金1円で立ち上げたとしましょう。しかし、この場合、売上が上がるまでは、なかなか事業を回すお金を得られないので、1円でも使ってしまうと債務超過に陥ることになります。債務超過とは、法人の資産よりも負債が多い状態のことを指し、会社が倒産してもおかしくない状態です。つまり、資本金が少ない会社は、起業して早々にピンチに見舞われてしまう可能性があります。
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3-2.口座開設ができないかも
資本金は、会社の体力や信用力を表します。そのため、資本金の額が少ないと体力や信用力がない会社と捉えられるので、口座開設の審査に落ちる可能性があります。設立したばかりの会社は、決算書もなく審査でチェックできる項目も限られるため、金融機関において会社の資本金は重要な審査項目になります。会社を審査するうえで大切な項目の1つである資本金が少なければ、審査に通ることは難しいでしょう。起業時に、法人口座を開設できなければ、売上も入金できず、会社経営に支障をきたすことでしょう。
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4.資本金はいくらが妥当なのか?
資本金は、会社の運転資金の元手になるお金です。そのため、会社を設立して間もない頃は、利益が出なくても、数カ月であれば事業を継続できる金額程度は必要になります。資金繰りの観点から言えば資本金は多ければ多いに越したことはありません。しかし1千万円以上の資本金を設定すると、会社の設立当初から消費税の課税対象になります。消費税の課税を免除されるためには、資本金は1千万円未満に設定するといいでしょう。
また、業種によっては、許認可上最低限必要な資本金額がありますので、許認可が必要な事業を行う場合は資本金額を特に注意しましょう。 -
5.資本金が少ないならネット銀行がおすすめ
口座開設はネット銀行を選ぶことも選択肢の一つです。「なぜネット銀行がいいのか」と疑問を持つ人のために、具体的な理由やネット銀行のメリット・デメリットを解説します。
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5-1.なぜネット銀行なのか
そもそもネット銀行とは、都市銀行や地方銀行とは違い、実店舗が少ない、またはま店舗を持たない銀行のことです。基本的に、ネット上で口座開設の申込や預金口座の取引などが完結します。ネット銀行は、実店舗で営業する一般的な銀行と比較して、口座開設の手続きがネットで完結でき、利用者の都合のよい時間に手続きが可能という特徴があります。
法人口座がないと、会社の資金管理がしづらくなります。出鼻をくじかれないためにも審査が不安な会社は、自分の都合の良い時間に手続きができるネット銀行を活用するといいでしょう。
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5-2.ネット銀行のメリット・デメリット
ネット銀行の利用には、さまざまなメリットがあります。例えば、一般的な銀行よりも振込手数料が安く、預金金利が高い傾向があることです。一般的な銀行の場合、法人口座のインターネットバンキングは有料なことが多いですが、ネット銀行では無料で利用できることもメリットといえるでしょう。さらに、24時間365日いつでも利用でき、ネットでほぼすべての手続き・取引が完了するため、忙しい平日の日中に時間を取って銀行の窓口に行く必要がありません。
ただし、ネット銀行は、都市銀行などと比較するとまだ信用度がやや低い点はデメリットです。また、担当者と対面で話せる窓口がなく、電話等でのやり取りとなり、会社のお金回りに関する相談がなかなか対面で行えないこともネット銀行のデメリットといえるでしょう。
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6.法人設立・設置届出書の注意事項資本金の入金方法とタイミング
会社の資本金の額を決めても、「どうすれば資本金を準備した状態になるか分からない」という人もいるでしょう。きちんと資本金の準備が完了した状態にならないと、会社の登記手続きが進まないので事前に確認することが必要です。ここでは、資本金を準備する方法を説明します。
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6-1.発起人の個人口座に振込む
会社の資本金は、発起人の個人の口座に振込めばいいので新しく口座を作る必要はありません。ただし、資本金を振込んだことの証拠として通帳のコピーが必要になるので、手元に通帳があるか確認しておきましょう。ネット銀行の口座を利用する場合は、通帳がないので必要事項が記載されたページを印刷すれば大丈夫です。資本金を口座に振込むタイミングは、定款作成日以降であればいつでも問題ありません。
発起人が複数いる会社を設立する場合は、「誰が」「いくら」口座に振り込みをしたのかを確認する必要があります。預け入れでは、発起人の氏名が通帳に記載されないので気をつけましょう。なお、発起人が1人の会社を設立する場合は、預け入れでもお金を出した人が誰か想定できるので問題ありません。 -
6-2.払込証明書を作成する
銀行口座に資本金を振込んだ後に、通帳の所定のページをコピーしましょう。具体的には、通帳の表紙、表紙の裏面(支店名、支店番号などが記載されたページ)、資本金の振込内容が記載されているページが必要になります。
続いて、払込証明書を作成します。払込証明書に記載すべき項目は、次のとおりです。- 日付
- 会社名(商号)
- 本店所在地
- 代表取締役の氏名
- 1株の払込金額
- 払込株数
- 払込総額
作成した払込証明書の左上と代表取締役の氏名の右側に、1つずつ会社代表印を押すと完成です。
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7.資本金が多い方が口座開設しやすい
資本金が少ない会社でも、法人口座は開設できますが、資本金が多い方が審査に通りやすくなる傾向にあります。会社を設立するときは、法人口座の審査のことも考えて資本金を設定するのも一つの方法です。会社の口座を開設するなら、自社にとって利用しやすく審査に通りやすい銀行を選ぶといいでしょう。どの銀行でも、法人口座の開設に必要な書類をしっかりと揃えて申し込むことが大切です。
- ※ 本コラムは2022年6月13日現在の情報に基づいて執筆したものです。
- ※ 本コラムの内容は執筆者個人の見解です。
GMOあおぞらネット銀行の法人口座について詳しくはこちら
執筆者情報
V-Spirits グループ代表
税理士・社労士・行政書士・CFP®
中野 裕哲 監修
■起業コンサルタント®、税理士、特定社労士、行政書士、CFP®。V-Spiritsグループ代表(税理士法人・社会保険労務士法人・行政書士法人・株式会社V-Spirits/V-Spirits会計コンシェル・給与コンシェル・FPマネーコンシェル・経営戦略研究所株式会社)。
年間約300件の起業相談を無料で受託し、起業家をまるごと支援。経済産業省後援 起業支援サイト「DREAM GATE」で11年連続相談数日本一。著書・監修書に『一日も早く起業したい人がやっておくべきこと・知っておくべきこと』(明日香出版社)、『ネコ先生がやさしく教える 起業のやり方』(アスカビジネス)など、16冊、累計20万部超。
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