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- ※ 本コラムの内容は執筆者個人の見解です。
#30会社設立にあたり役員・取締役は何人必要?それを定めた会社法について
会社の設立を検討している人の中には「発起人や取締役は何人必要なのか」と気になっている人もいるでしょう。「自分1人で株式会社を起業できないのか」と考えている人もいるかもしれません。そこで今回は、株式会社の設立に必要な人数について説明します。関連する法律である会社法でチェックしておきたいポイントもあわせて紹介します。
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1.株式会社の設立に必要な人数って?
株式会社を設立する場合は、どのような役職で何人の人材が必要となるのかを説明します。
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1-1.会社設立にまつわる「株主」と「役員」の役割のおさらい
会社を設立するときは、少なくとも「株主」と「役員」のそれぞれの役割を押さえておく必要があります。株式会社を設立する場合は、会社の株を持っている人を「株主」と呼びます。これに対して、「役員」とは、会社の経営方針を立てる役割を担う人のことです。株式会社における役員について具体例を挙げて説明すると、「取締役」「会計参与」「監査役」があります。いずれも会社の経営を円滑進めるために、大切な役割を持っています。
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1-2.発起人・株主・役員は何人必要なのか?
会社を設立するときに必要な発起人の人数は、1人以上です。会社の発起人になれるのは個人だけでなく、法人でも問題ありません。株式会社は会社で株式を発行して資金を集める仕組みの会社なので、株主は最低でも1人以上は必要です。また、会社法326条には、「株式会社には一人又は二人以上の取締役を置かなければならない」という文言が記載されているので、役員も発起人や株主と同じく最低1人以上おかなければいけません。ちなみに、株主と取締役は同一人物でも大丈夫です。例えば、発起人と株主、取締役の3役を1人で兼任しても問題はありません。したがって、株式会社は1人であっても設立できます。
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2.一人会社設立のメリット・デメリット
株主、取締役の3役を1人で担っている会社を一人会社と呼びます。この説明を聞いて「1人で法人化した方がよいのか」「個人事業主として事業をした方がよいのか」と悩む人もいるでしょう。しかし、いずれも違ったメリット・デメリットがあるため、一概にどちらが良いとは言えません。「金銭的にどちらがお得なのかだけでも知りたい」という人がいるかもしれませんが、これについても売上や利益によって異なるとしか言えないのです。また、法人化によって信用が高まったり、取引の幅が広がったりといったこともあり、税金的な面だけで法人化するかどうかを判断するものでもありません。
法人は個人事業主よりも経費計上できる範囲が広がったり、金融機関から融資を受けやすくなったりもします。社会的な信用度が高く、借入金の連帯保証人となっているなどの事情がなければ、出資金の範囲内で責任が有限になるのも個人事業主にはない法人のメリットと言えるでしょう。しかし、法人を設立するには登記手続きをするだけでもお金がかかります。また、個人事業主よりも法人の方が税務申告は煩雑になります。事務作業の負担や社会保険料の増加なども、法人ならではのデメリットです。
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3.合同会社の設立に必要な人数って?
合同会社とは、法人の所有者と経営者が同一の会社です。株式会社を設立するよりも費用を抑えて設立できるのが合同会社の特徴の1つです。持分会社である合同会社を設立するときに必要になるのは、1名以上の出資者です。株式会社のように役員は必要ありません。また、取締役会や株主総会も不要なので、合同会社の方が比較的気軽に会社を設立できるでしょう。
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4.会社法によって人数は変更された
以前は、株式会社の設立に必要な人数は1人ではありませんでした。会社法施行前は取締役が最低3人以上、監査役が最低1人以上いなければ株式会社の設置はできなかったのです。このルールが変更されたのは、平成18年5月1日です。「会社法」という法律が新たに施行され、1人でも株式会社を設立できるようになりました。会社法が施行されるまで、会社に関連する法律は古い時代に合わせたルールでした。その状況を一新するために、会社法で現代の経済情勢に合うようにさまざまな決まりが導入されたのです。
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5.会社法で新しく決まったこと
会社法では、会社を設立するときに必要な役職の人数以外にも、さまざまなことが決められました。具体的にどのようなことが決まったのか紹介していきます。
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5-1.最低資本金額の撤廃
会社法が施行されるまでは、株式会社を設立するには最低でも1千万円以上の資本金を用意する必要がありました。有限会社であっても、3百万円以上の資本金がなければ設立できませんでした。しかし、会社法によってこのルールが撤廃されたのです。2022年現在では、最低1円以上の資本金があれば設立できるようになっています。
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5-2.類似商号規制の撤廃
類似商号規制制度とは、設立する会社を管轄する法務局に同じ社名があった場合、会社の登記ができない制度のことです。このルールが会社法で撤廃され、類似商号の対象が少なくなりました。会社法施行後は、所在地が同じところに同一の社名で登記しなければ問題ありません。また、類似商号規制制度の撤廃に伴って、類似商号の有無をチェックする「類似商号調査」が省略されました。この調査には相当な時間がかけられていたこともあり、省略されてからは、登記がスピーディーに完了するようになりました。とは言え、意図的に競合他社と似たような社名を付けるなどすると、相手先から訴訟などを起こされる可能性があるので、社名をつけるときは十分注意してください。
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5-3.「金融機関による払込金保管証明書」が不要に
「金融機関による払込保管証明書」とは、会社の資本金を1つの口座に払い込んだことを証明する書類のことです。会社法が施行されるまでは、会社の資本金の一時預かりを依頼する金融機関を決定する必要がありました。なかなか預け先が見つからず、会社を設立するまでに時間がかかるケースも多々あったようです。会社法が施行されてからは、預金通帳のコピーを「資本金を証明する書類」として作成すればよくなりました。会社の設立に関する手続きが簡素化さたことで、楽に資本金の払い込みができるようになったのです。
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5-4.取締役の任期延長
会社法が施行される前の任期は、取締役が2年、監査役が4年とされていました。任期を迎えると再度人選をする必要がありました。しかし、会社法では、取締役と監査役のどちらも最長任期が延長されて10年に変更されたのです。会社を設立するときに役員の任期を最長の10年に設定すれば、役員の任期に合わせて登記する回数が少なく済みます。役員の任期を10年に設定すれば、最初の役員変更は会社を設立してから10回目の決算期(定時総会)に行えばよいことになります。
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5-5.有限会社の新規設立ができなくなった
株式会社を設立するときに守らなければいけないルールが有限会社並みに緩和されたことで、会社法の施行後に新規で有限会社を設立できなくなりました。施行前に有限会社として登記している会社は、施行後も引き続き「(特例)有限会社」を名乗れます。ただし、法律上は有限会社ではなく、株式会社として扱われることになっています。なお、商号変更の登記を行うことで、特例有限会社から株式会社への移行が可能です。
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5-6.合同会社が新たに設けられる
先に紹介した「合同会社」は、会社法の施行によって新たに加わった会社の形態です。株式会社を設立するよりも低コストで、負担が少ない会社の形態として、有限会社に代わるかたちで合同会社が設けられました。
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昔と今とではルールが違うことも!よく確認しよう
会社法によって、株式会社の設立に必要な人数が緩和されました。したがって、今では1人でも株式会社を設立できます。このように、昔からのルールが変更されて、それまでの常識が一変することもあります。会社を設立するときは思い込みで行動するのではなく、きちんとルールを確認してから手続きを進めるようにしましょう。
- ※ 本コラムは2022年7月11日現在の情報に基づいて執筆したものです。
- ※ 本コラムの内容は執筆者個人の見解です。
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執筆者情報
V-Spirits グループ代表
税理士・社労士・行政書士・CFP®
中野 裕哲 監修
■起業コンサルタント®、税理士、特定社労士、行政書士、CFP®。V-Spiritsグループ代表(税理士法人・社会保険労務士法人・行政書士法人・株式会社V-Spirits/V-Spirits会計コンシェル・給与コンシェル・FPマネーコンシェル・経営戦略研究所株式会社)。
年間約300件の起業相談を無料で受託し、起業家をまるごと支援。経済産業省後援 起業支援サイト「DREAM GATE」で11年連続相談数日本一。著書・監修書に『一日も早く起業したい人がやっておくべきこと・知っておくべきこと』(明日香出版社)、『ネコ先生がやさしく教える 起業のやり方』(アスカビジネス)など、16冊、累計20万部超。
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