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- ※ 本コラムの内容は執筆者個人の見解です。
#32会社設立の必要書類に住民票や戸籍謄本は必要ない!印鑑証明書を用意
初めて会社を設立する場合は、どのような書類を準備すればよいのでしょうか。「とりあえず住民票や戸籍謄本があれば大丈夫か」と考えている人もいるでしょう。しかし、結論から言えば、住民票や戸籍謄本は、会社の設立手続きには不要です。では、具体的にどんな書類が必要なのでしょうか。今回は、会社設立に必要な書類を詳しく紹介します。
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1.会社設立時に住民票は必要ない!印鑑証明書が必要
会社を設立する手続きには、基本的に住民票や戸籍謄本は必要ありません。不動産などの取引をする場合などに、本人確認書類として住民票や戸籍謄本の提出が求められるため、「重要な手続きには住民票や戸籍謄本がいる」と考える人がいるのでしょう。しかし、会社の設立手続きに戸籍謄本の提出が必要になるのは、未成年者が起業する場合だけです。親権者と子供の関係性を確認するために、戸籍謄本の提出が求められます。成人する前に会社を設立する場合は、戸籍謄本と親権者の同意書を忘れずに用意してください。いずれにせよ、基本的には会社の設立時に住民票や戸籍謄本は不要で、印鑑証明書だけが必要になることを覚えておきましょう。
ただし、取締役会を設置する場合には、代表取締役以外の取締役は、印鑑証明書に代えて住民票のコピーを登記の添付書面とすることができます。
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2.印鑑証明書はどうやって用意する?
自治体で印鑑登録をしていれば、所定の手数料を支払うことで印鑑証明書を発行できます。自治体の窓口やコンビニ、証明書の自動交付機などで印鑑証明書を用意しましょう。しかし、印鑑登録が終わっていないと印鑑証明書の発行はできません。会社を設立する手続きの序盤で印鑑証明書が必要になるので、早めに登録を済ませておくことが大切です。具体的には、住民票がある自治体に登録する印鑑を持っていきます。値段が安い印鑑でも登録できますが、実印として登録されるので適した印鑑を自治体に持参するようにしましょう。
自治体の窓口で印鑑登録に必要な書類を記入して印鑑を押せば、登録が完了します。このとき、住民票を古い住所から移していない場合は、先に住民票の変更手続きが必要になります。古い住所を管轄している自治体で手続きをしてから、新しい自治体で住民票を変更してもらいましょう。発起人の場合、印鑑証明書は法務局への登記申請より前の、定款の認証の時点で必要になるので早めに発行しておくことが大切です。ただし、印鑑証明書には有効期限があります。発行してから3カ月以内が有効期限なので、あまり早くに発行しないように注意しましょう。
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3.印鑑証明以外で会社設立の際に必要な書類
会社を設立するためには、印鑑証明書以外にも準備すべき書類がたくさんあります。手続きに必要な7つの書類を順番に紹介していきます。
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3-1.登記申請書
登記申請書とは、会社の登記を法務局に対して申請するために必要な書類のことです。会社の名前(商号)や住所などの基本情報、登録免許税の金額や添付書類の一覧を記載します。法務局の窓口でもらえますが、法務省のホームページから簡単にダウンロードできます。具体的な書き方も公開されているので、参考にしながら登記申請書を記入していくとよいでしょう。登記申請書に記載しなければいけない具体的な項目は、次のとおりです。
- 会社名(商号)
- 本店の所在地
- 登記する事由
- 登記事項
- 課税標準金額
- 登録免許税の額
- 添付書類の一覧
- 収入印紙を貼付した台紙
登記申請書を紙で提出する場合A4用紙1枚に収まらない場合は、複数ページになっても問題ありません。ただし、割印を忘れずに押しましょう。このとき使用する印鑑は、印鑑届出書で登録する代表取締役の印鑑です。違う印鑑で割印を押しても意味がないので、間違えないように十分気をつけてください。
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3-2.定款
定款とは、会社の基本的なルールを記載した書類のことです。会社の事業目的などの基本情報も記入します。定款は会社で作成した後、株式会社の場合は公証役場に提出して認証を受ける必要があります。このときに、先に説明した印鑑証明書が必要になるのです。「定款と印鑑証明書はセットで必要」と覚えておくと、会社の設立手続きがスムーズに進むでしょう。
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3-3.登録免許税の収入印紙
登録免許税の支払いに必要な収入印紙は、台紙に貼付して提出するのが一般的です。登記申請書に登録免許税の金額を書きますが、支払った証明にはならないので忘れずに用意しましょう。なお、収入印紙を貼付した台紙は必ず必要な書類ではありません。法務局で登録免許税分の収入印紙を購入して貼ったり、金融機関や税務署で現金納付したりする方法もあります。なお、登録免許税の金額は株式会社の場合は基本的に15万円です。資本金の額によっては、15万円以上の登録免許税がかかることもあるので覚えておきましょう。
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3-4.登記すべき事項を保存した電磁的記録媒体(CD-R等)
「登記すべき事項」は、設立する会社の種類などによって異なります。具体的な記載例が法務省のホームページで紹介されているので、CD-R等を作成するときはぜひ参考にしてください。CD-R等に保存する内容は、基本的に登記申請書類に記載するものとほとんど変わりません。法務局のパソコンで会社に関する情報を取り込みやすくするために、作成する必要があります。また、必ずCD-R等で提出する必要はなく、書面で提出できるケースもあります。
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3-5.取締役の就任承諾書
就任承諾書とは、取締役や監査役などに就任したことを承諾する書類のことです。いくつか種類がありますが、会社の設立手続きで必ず必要になるのは、取締役の就任承諾書だけです。設立する会社の取締役が1人の場合は、別途代表取締役の就任承諾書を用意する必要はありません。また、監査役が就任する場合には、監査役の就任承諾書も必要です。
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3-6.印鑑届出書
印鑑届出書とは、冒頭で説明した個人の印鑑証明書とは別の書類です。会社の印鑑を登録するために法務局に提出が必要になります。会社の実印として登録する印鑑を作成したら、法務局に行ってその印鑑を「代表者印」として印鑑登録しましょう。印鑑届出書を提出して無事に手続きが完了すれば、会社名義の印鑑証明書が発行できます。法人名義の銀行口座を作成するためには、印鑑証明書が必要になる場合があるので届け出のタイミングで発行しておくと便利です。なお、会社を設立するときは、複数の印鑑を用意する必要があります。代表者印、銀行印、領収書などに使う角印の3つは、それぞれ別のものを準備しておくようにしましょう。
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3-7.資本金の払込を証する書面
「資本金の振込を証する書面」とは、会社の発起人がきちんと資本金を支払ったことを証明する書類のことです。具体的には、通帳のコピーが必要になります。資本金を振込む口座は、発起人が個人用に使っているもので構いません。複数人いる場合は、代表口座を1つに絞りましょう。無事に資本金の振込みが完了したら、必ず通帳記入をしてください。会社を設立する手続きには、資本金を振り込んだことが分かる通帳のコピーが必要になります。ネットバンクを利用している場合は、通帳のコピーに代えて取引履歴の画面を使用することもできます。
また、通帳の表紙、口座番号や名義などの詳細な情報が載っているページのコピーも忘れずにとっておきましょう。使用する用紙のサイズは決められていませんが、ほかの書類の大きさと合わせてA4用紙にコピーするのが一般的です。振込内容が分かるページ、通帳の表紙、詳細な情報が載っているページをホチキスなどでまとめて、各ページに割印を押せば「資本金の振込を証する書面」になります。
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印鑑証明書は定款から必要!早めの用意を
会社の設立手続きには、基本的には住民票や戸籍謄本は必要ありません。しかし、印鑑証明書は必ず用意しなければいけない書類です。また、印鑑証明書は会社の設立手続きの序盤から必要になります。そのため、できるだけ早めに用意しておくことが大切です。印鑑登録が終わっていない場合は、会社の設立手続きを始めるよりも前に登録を完了させておきましょう。
- ※ 本コラムは2022年7月25日現在の情報に基づいて執筆したものです。
- ※ 本コラムの内容は執筆者個人の見解です。
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執筆者情報
V-Spirits グループ代表
税理士・社労士・行政書士・CFP®
中野 裕哲 監修
■起業コンサルタント®、税理士、特定社労士、行政書士、CFP®。V-Spiritsグループ代表(税理士法人・社会保険労務士法人・行政書士法人・株式会社V-Spirits/V-Spirits会計コンシェル・給与コンシェル・FPマネーコンシェル・経営戦略研究所株式会社)。
年間約300件の起業相談を無料で受託し、起業家をまるごと支援。経済産業省後援 起業支援サイト「DREAM GATE」で11年連続相談数日本一。著書・監修書に『一日も早く起業したい人がやっておくべきこと・知っておくべきこと』(明日香出版社)、『ネコ先生がやさしく教える 起業のやり方』(アスカビジネス)など、16冊、累計20万部超。
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