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#43会社設立時の役員報酬はどうする?不可欠とされる議事録は何を書けばよいのか?

会社を設立するときの重要な決定事項として、「役員報酬」があります。しかし、初めて会社を設立する人にとっては、役員報酬をいくらにすればよいのか分からず悩みの種になることもあるでしょう。役員報酬と議事録は密接な関係がありますが、これについても知識がなくて不安を感じている人がいるかもしれません。そこで今回は、役員報酬のルールや決め方のポイントを紹介します。議事録についてもあせて解説します。

  1. 1.役員報酬の基本ルール

    まずは、会社を設立するときに大切な検討項目になる「役員報酬」についての基本的なルールをチェックしていきましょう。

    1. 1-1.役員報酬は簡単に変更できない

      役員報酬を変更するためには、株式会社の場合、臨時株主総会などの株主総会で決議を行わなければいけません。役員の一存で役員報酬の変更はできません。そして、株主総会では、その内容を議事録にきちんと明記する必要があります。もしも、役員報酬を変更する理由に妥当性が認められなかったり、議事録を作成しなかったりすると税務調査で問題があると判断されます。こうなると、役員報酬を損金として算入できなくなる可能性があり、追徴課税を受けてしまうこともあるので注意が必要です。追徴課税とは、本来払うべき税金の額との差額や、追加で課税される税金のことです。会社にとって本業がある中で臨時株主総会を開くのは、時間や手間がかかります。そのため、「役員報酬は原則、事業年度の途中で変更できないもの」と心得ておくとよいでしょう。会社を設立するときは、慎重に役員報酬の金額を考えることが大切です。

    2. 1-2.最初の役員報酬は会社設立から3カ月以内に決める

      役員報酬は、会社の設立が完了してから3カ月以内に金額を決定することが義務づけられています。設立時に作成する定款に記載するか、または株主総会で決定する必要があります。それは、役員報酬は損金算入できる支出だからです。役員報酬の金額を自由に変更できると、会社の利益をコントロールできてしまいます。そのため、役員報酬の金額の設定や変更に関するルールは厳正に定められています。

    3. 1-3.役員報酬の支払い

      役員報酬は会社を設立してから3カ月以内に決めなければいけませんが、支払い時期は自由です。例えば、「初めの2カ月の役員報酬をゼロにして、3カ月目から支払う」という方法でも問題ありません。会社としての利益が安定するまで、役員報酬の支払いをしないのも1つの方法です。

      また、役員報酬は日割りという考えがなく、「数日間だけの金額を支払う」という対応はできません。1日分の役員報酬でも、30日分でも支給金額は同額になります。仮に、日割りの役員報酬を支給するとその金額が基準額になります。そのため、翌月以降の役員報酬の支払いで基準額を超えた部分は損金不算入になるので十分注意しましょう。

  2. 2.役員報酬に関する議事録の必要性

    会社法では、役員報酬の変更時には「議事録の作成と保存」が義務づけられています(会社法318条)。仮に、役員が自由に報酬額を決定できると、会社の利益を調整される可能性があります。また、支給額が増えれば会社財産だけでなく、株主の利益に大きな損失が出ることもあるのです。こうした理由から、株主を保護するために役員報酬には上限を設けることができます。また、株主総会などの議事録に詳細な記録をするというルールを設けておくと、誰でも株主総会の内容や結果を確認できます。したがって、役員報酬を変更するときは議事録の作成が必ず必要ということになります。

  3. 3.議事録の書き方

    株主総会の議事録を作成する場合は、下記の5つの項目は必ず記載しましょう。

    1. 株主総会を開催した日時や場所
    2. 議事の経過の要領とその結果
    3. 株主総会に出席した人の氏名
    4. 議長の氏名
    5. 議事録を作成した取締役の氏名

    2については、決定した役員報酬の金額について記載すれば大丈夫です。3に記載する氏名は、会社の取締役などの氏名を書きましょう。4については、議長がいない場合は議事録に記載する必要はありません。

    もし、虚偽の議事録を作成すると、株主総会での決議は無効になります。税務調査などで議事録に疑いがかけられないように、株主総会で実際に出た意見や発言を書くようにしましょう。「誰が」「何を」「どうしたか」など5W1Hを意識して、できるだけ株主総会の内容を詳細に記録することが大切です。なお、議事録の作成は税理士や会計士などには依頼できません。指導や助言は受けられますが、議事録は株主総会の参加者や会社の秘書などで作成するようにしましょう。

  4. 4.役員報酬を期中に変更できる場合

    期中に役員報酬の変更が認められるケースは、「減額するか」「増額するか」によって異なります。減額が許されるのは、次の4つのケースです。

    1. 財務状況や業績が悪化し、株主に対して経営責任をとるためにやむを得ない場合
    2. 財務状況や業績が悪化し、役員報酬の減額が経営状況の改善を図れる場合
    3. 役員が不祥事を起こし、会社の社会的な評価の低下を防ぐために一時的に減額する場合
    4. 融資先の銀行との借入金予定協議で減額はやむを得ないと判断された場合

    一方、役員報酬の増額が認められるのは、役員の仕事の責務が増えた場合だけです。例えば、常務取締役が専務取締役に昇格した場合は期中であっても役員報酬を増額できます。ただし、役員報酬を減額・増額する場合は、必ず臨時株主総会などの株主総会で決議をしなければなりません。議事録も忘れずに作成しましょう。

  5. 5.役員報酬を決めるポイント

    役員報酬を決めるときは、売上予測や利益予想が非常に大切です。売上予測のほかにも、毎月の固定費や粗利益を算出して、会社としての利益がどれくらい出そうか詳細に検討しましょう。そのうえで、役員報酬に回せる金額を決定するのがポイントです。なお、損金算入ができない役員報酬は、会社としての「利益」になってしまいます。利益額が大きければ、その分、決算で納付する法人税額が増えてしまいます。法人税法に関する知識を得た状態で役員報酬を決定することが、結果として節税につながるので念頭に置いておきましょう。自社にとって適切な役員報酬が分かりづらい場合は、税理士や会計士などの専門家に相談するのも1つの方法です。

  6. 6.合同会社における役員報酬のルール

    合同会社の役員報酬の額は、株式会社と同様に会社を設立してから3カ月以内に決めなくてはなりません。金額を変更するときは、原則、事業年度が開始してから3カ月以内に変えるルールになっています。合同会社の場合は、株主総会ではなく「社員総会」で役員報酬が決定できることを覚えておきましょう。議事録の作成は、株式会社と違って作らなくても問題ありません。しかし、税務署や年金事務所などから議事録の提示を求められるケースもあります。議事録や同意書、決定書などの書類がないと、税務調査のときに役員報酬の損金算入が否認されることがあるので注意が必要です。少し手間はかかりますが、役員報酬を変更したときは議事録を作成しておいた方が安心でしょう。

  7. 7.一人会社の場合はどうする?

    役員や株主、取締役が1人しかいない「一人会社」で役員報酬を変更する場合も、株主総会は必要です。ただし、参加者を招集する手続きは不要です。自分が株主総会の議長として、役員報酬の金額の承認可決をします。議事録の作成も忘れずに行いましょう。なお、議事録は株主総会の開催日から10年間は会社に据え置く必要があります。失くしてしまうと株主総会をした証明ができなくなるので、きちんと管理しましょう。

    役員報酬には厳密なルールがある!

    役員報酬は簡単には金額の変更ができず、後から変更すると手間がかかります。そのため、会社を設立するときに、きちんと役員報酬の金額を考える必要があります。ルールが厳密に定められているので、一つひとつ内容を確認することが大切です。今回紹介した役員報酬を決めるときのポイントなどを参考に、自社に合った金額を検討してみてください。

  • ※ 本コラムは2022年10月17日現在の情報に基づいて執筆したものです。
  • ※ 本コラムの内容は執筆者個人の見解です。

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執筆者情報

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V-Spirits グループ代表
税理士・社労士・行政書士・CFP®
中野 裕哲 監修

■起業コンサルタント®、税理士、特定社労士、行政書士、CFP®。V-Spiritsグループ代表(税理士法人・社会保険労務士法人・行政書士法人・株式会社V-Spirits/V-Spirits会計コンシェル・給与コンシェル・FPマネーコンシェル・経営戦略研究所株式会社)。
年間約300件の起業相談を無料で受託し、起業家をまるごと支援。経済産業省後援 起業支援サイト「DREAM GATE」で11年連続相談数日本一。著書・監修書に『一日も早く起業したい人がやっておくべきこと・知っておくべきこと』(明日香出版社)、『ネコ先生がやさしく教える 起業のやり方』(アスカビジネス)など、16冊、累計20万部超。

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