イベント情報&レポート
sunabarコミュニティイベント第15弾
マネーフォワードFintech研究所長と語る
「組込型金融」徹底解剖!
こんにちは。sunabarイベント担当の門馬です。
2022年4月7日(木)に、sunabarコミュニティイベント#15「マネーフォワードFintech研究所長と語る「組込型金融」徹底解剖!」を開催しました。
昨今、欧米をはじめ日本においても金融サービスが生活に溶け込んだ「組込型金融」(エンベデッド・ファイナンス)の普及が進んでおり、ユーザー利便性の観点からもこの流れが加速するとして、本年を「組込型金融元年」と称する動きも見られています。そこで今回は、株式会社マネーフォワードの執行役員 CoPA(Chief of Public Affairs) 兼 Fintech研究所長の瀧 俊雄氏をお迎えし、「組込型金融」の全貌について余すことなく徹底的に解剖するイベントです。
本レポートではイベント内容の一部をご紹介します。(司会:当社 執行役員 企画・事業開発グループ長 小野沢 宏晋)
※ 本レポートは2022年4月7日時点の情報です。
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瀧 俊雄 氏株式会社マネーフォワード 執行役員 CoPA 兼 Fintech研究所長/一般社団法人
Fintech協会 アドバイザー
慶應義塾大学卒業後、野村證券入社。野村資本市場研究所にて、家計行動、年金制度、金融機関ビジネスモデル等の研究業務に従事。スタンフォード大学MBA、野村ホールディングスの企画部門を経て、2012年よりマネーフォワードに参画。内閣府規制改革推進会議専門委員(デジタルワーキング・グループ)、東京都国際金融フェロー、一般社団法人電子決済等代行事業者協会代表理事、一般社団法人MyDataJapan理事、一般社団法人Fintech協会アドバイザー。
株式会社マネーフォワード:https://moneyforward.com/
組込型金融(エンベデッド・ファイナンス)ってなに?
組込型金融(エンベデッド・ファイナンス)とは、非金融事業者のサービスに、銀行機能などの金融サービスを組み込んで提供することです。アプリケーションや会社の経理機能そのもののフローに金融サービスを組み込むことで、処理の簡略化、コストダウン等が見込まれます。また、新サービスを開発したい事業者にとっては、そのサービスの世界感を壊すことなく金融サービスを組み込むことができ、新しい顧客体験を提供することもできます。
イベントでは、まず組込型金融(エンベデッド・ファイナンス)についての説明を、事例とともに紹介してもらいました。
小野沢 宏晋(以下、小野沢)「組込型金融の分かりやすい事例をご紹介いただけますか?」
瀧 俊雄氏(以下、瀧氏)「アメリカの例になりますが、組込型金融の身近な好例としてはAmazonの「1-Click(ワンクリック)注文(*)」があります。ユーザーはAmazonで支払いそのものや支払い方法を選びたいわけではなく、素早く物を手に入れたいわけです。」
(*)1-Click(ワンクリック)注文:予めして下支払い方法や配送先の情報をもとに、すぐに発送してくれるサービス。
瀧氏「銀行の世界でいうと、振込や振替のAPIになります。また、こちらも海外の事例になりますが、会社の運転資金を手当てしたいときに、銀行の窓口まで行かなくてもできることがあります。例えば会計ソフトのなかにクレジットラインやクレジットカードのサービスが控えている状況があるのですが、それも組込型金融のひとつの好例だと感じています。」
岩田 充弘(以下、岩田)「銀行の立場からの話をさせていただきます。銀行のサービスを使うときは、ユーザーが支店やネットバンキングといった銀行そのものに都度アクセスする必要がありました。銀行にアクセスしなくても銀行のサービスが使えることが、組込型金融です。」
岩田「1つの例として、当社と業務提携をしたFinTechスタートアップのMEME社が開発中の金融教育サービスがあります。そのサービスでは当社の銀行APIをはじめ当社の組込型金融機能を提供し、銀行そのものに都度アクセスする必要がなく金融教育を実践できる環境を実現しています。」
日本と海外の組込型金融の違い
小野沢「日本と海外の組込型金融の違いについて、アメリカの場合はイネーブラーと呼ばれる間をつなぐスタートアップ企業や業者がとても多く、サービスの中から組込型金融が広がっている印象があります。そういった違いはどこから生まれてくるのでしょうか。」
瀧氏「組込型金融が注目されはじめたのは2017年頃になります。例えばアメリカのChimeというネオバンクでは、普通預金の金利を高く設定しているため、コロナ給付金の受取口座として人気が高くなりました。このようなサービスがアメリカでは多く提供される一方、サービスの入れ替わりも激しい状況です。つまり良くも悪くもサービス競争が盛んなことが、日本と海外、特にアメリカとの違いだと感じています。」
瀧氏「一方、日本の組込型金融の状況は、まず貴社の銀行API接続業者が増えて230社になっている点に凄さを感じています。銀行APIを自社ためだけに使うプライベートアクセスであれば、金融庁への登録が不要なため、自由度の高いサービス開発が可能となり、RPAの延長で銀行口座を使えるといった考え方ができます。私はその点にロマンを感じますし、魅力的な状況だと思っています。」
小野沢「我々も期待を込めて組込型金融のサービスを提供していますが、銀行API接続の裾野がここまで広がった状況は嬉しいと感じています。」
参考情報:GMOあおぞらネット銀行の銀行API接続
理想の組込型金融とは
小野沢「理想的な組込型金融を考えた場合、どのように見られていますか?」
岩田「私は銀行が見えない状態が組込型金融の理想の姿だと考えています。ユーザーが銀行の機能を使うときに、銀行にアクセスする必要があり、手間も大変です。その状況を無くす、軽減することだと考えています。」
瀧氏「お金を使う場所に決済が利用者のすぐ近くにあることが、組込型金融の理想だと思います。銀行の機能は社会に必要不可欠なものです。そのなかで銀行は利用者と銀行機能を繋ぐインターフェイス、つまり接点の役割を果たしていますが、銀行機能が窓口からATMになり、そしてインターネットバンキングからAPIになりつつあり、利用者に近づいています。そういった意味で、UX(顧客体験)の総量に占める銀行の割合が減ってきている現状は自然な流れで、組込型金融の理想に近づいているのだと思います。」
日本の組込型金融が発展するには?
瀧氏「日本はまだ根本的にデジタル化が進んでおらず、クラウドサービスを利用している企業が多いとは言えず、もっとクラウド化されるべきだと考えています。クラウド化が進めばおのずと組み込まれるべき金融機能はたくさんあるため、伸びしろしか感じていません。」
瀧氏「しかし一方で、日本はまだ有償の参照系APIがあります。有償の場合、高い頻度でデータを取得するためにはコストが嵩み、フリクションレスが阻まれる 課題が発生します。その課題に対して私が重要だと考えているのは、発生したイベントに対して通知行うWebhook APIの整備です。データの取得を簡便になるためです。」
岩田「当社の銀行APIラインアップでは、イベント通知のWebhookを無償で提供しています。例えば振込入金口座に対し、入金が発生したタイミングで通知が行われますので、給与が振り込まれた瞬間にスマートフォンに通知が届くといった顧客体験を提供することも可能になります。」
瀧氏「APIを通じて、利用頻度の高い機能を自然に利用者に普及させていくことに対しての推進も、重要だと考えています。」
岩田「組込型金融の発展には、多様な価値観のある事業者が多く参入する状況、つまりエコシステムが重要だと考えています。アメリカではAPIのエコシステム、APIエコノミーが実現できていますが、日本でもAPIや組込型金融のエコシステムを広めていくことを、当社を通じて実現していけたらと考えています。」
2周年を迎えたsunabar -GMOあおぞらネット銀行API実験場-
sunabar -GMOあおぞらネット銀行API実験場-(以下、sunabar)は、2022年4月7日に2周年を迎えました。これまで延べ250社以上の法人のお客さまにご利用いただいており、個人のお客さまに至ってはさらに多くの方にご利用いただいています。
sunabarは、仮想のインターネットバンキング上で、APIを活用したアプリケーションを無料でお試しいただける「銀行API実験場」に加えて、「エンジニアコミュニティ」、「開発支援」、「資金調達支援」の4つの機能を提供しています。本イベントではsunabarの最新情報を紹介しました。
そのなかでsunabar「銀行API実験場」について、これまで本番環境でしか実行できなかったAPIの認可利用設定のシミュレーションがsunabarでも可能となる「API認可機能」の追加を発表しました。
本機能に関しては、「認可機能もsunabarで試したい」というお声を以前からいただいておりました。また、昨今の組込型金融(エンベデッド・ファイナンス)普及により、当社の「かんたん組込型金融サービス」をご利用になる企業さまも増加しており、ご利用企業さまの開発スピードを落とさないためにも本機能の追加開発いたしました。
マネーフォワードFintech研究所長と語る
「組込型金融」徹底解剖!
こんにちは。sunabarイベント担当の門馬です。
2022年4月7日(木)に、sunabarコミュニティイベント#15「マネーフォワードFintech研究所長と語る「組込型金融」徹底解剖!」を開催しました。
昨今、欧米をはじめ日本においても金融サービスが生活に溶け込んだ「組込型金融」(エンベデッド・ファイナンス)の普及が進んでおり、ユーザー利便性の観点からもこの流れが加速するとして、本年を「組込型金融元年」と称する動きも見られています。そこで今回は、株式会社マネーフォワードの執行役員 CoPA(Chief of Public Affairs) 兼 Fintech研究所長の瀧 俊雄氏をお迎えし、「組込型金融」の全貌について余すことなく徹底的に解剖するイベントです。
本レポートではイベント内容の一部をご紹介します。(司会:当社 執行役員 企画・事業開発グループ長 小野沢 宏晋)
※ 本レポートは2022年4月7日時点の情報です。
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瀧 俊雄 氏株式会社マネーフォワード 執行役員 CoPA 兼 Fintech研究所長/一般社団法人
Fintech協会 アドバイザー慶應義塾大学卒業後、野村證券入社。野村資本市場研究所にて、家計行動、年金制度、金融機関ビジネスモデル等の研究業務に従事。スタンフォード大学MBA、野村ホールディングスの企画部門を経て、2012年よりマネーフォワードに参画。内閣府規制改革推進会議専門委員(デジタルワーキング・グループ)、東京都国際金融フェロー、一般社団法人電子決済等代行事業者協会代表理事、一般社団法人MyDataJapan理事、一般社団法人Fintech協会アドバイザー。
株式会社マネーフォワード:https://moneyforward.com/
組込型金融(エンベデッド・ファイナンス)ってなに?
組込型金融(エンベデッド・ファイナンス)とは、非金融事業者のサービスに、銀行機能などの金融サービスを組み込んで提供することです。アプリケーションや会社の経理機能そのもののフローに金融サービスを組み込むことで、処理の簡略化、コストダウン等が見込まれます。また、新サービスを開発したい事業者にとっては、そのサービスの世界感を壊すことなく金融サービスを組み込むことができ、新しい顧客体験を提供することもできます。
イベントでは、まず組込型金融(エンベデッド・ファイナンス)についての説明を、事例とともに紹介してもらいました。
小野沢 宏晋(以下、小野沢)「組込型金融の分かりやすい事例をご紹介いただけますか?」
瀧 俊雄氏(以下、瀧氏)「アメリカの例になりますが、組込型金融の身近な好例としてはAmazonの「1-Click(ワンクリック)注文(*)」があります。ユーザーはAmazonで支払いそのものや支払い方法を選びたいわけではなく、素早く物を手に入れたいわけです。」
(*)1-Click(ワンクリック)注文:予めして下支払い方法や配送先の情報をもとに、すぐに発送してくれるサービス。
瀧氏「銀行の世界でいうと、振込や振替のAPIになります。また、こちらも海外の事例になりますが、会社の運転資金を手当てしたいときに、銀行の窓口まで行かなくてもできることがあります。例えば会計ソフトのなかにクレジットラインやクレジットカードのサービスが控えている状況があるのですが、それも組込型金融のひとつの好例だと感じています。」
岩田 充弘(以下、岩田)「銀行の立場からの話をさせていただきます。銀行のサービスを使うときは、ユーザーが支店やネットバンキングといった銀行そのものに都度アクセスする必要がありました。銀行にアクセスしなくても銀行のサービスが使えることが、組込型金融です。」
岩田「1つの例として、当社と業務提携をしたFinTechスタートアップのMEME社が開発中の金融教育サービスがあります。そのサービスでは当社の銀行APIをはじめ当社の組込型金融機能を提供し、銀行そのものに都度アクセスする必要がなく金融教育を実践できる環境を実現しています。」
日本と海外の組込型金融の違い
小野沢「日本と海外の組込型金融の違いについて、アメリカの場合はイネーブラーと呼ばれる間をつなぐスタートアップ企業や業者がとても多く、サービスの中から組込型金融が広がっている印象があります。そういった違いはどこから生まれてくるのでしょうか。」
瀧氏「組込型金融が注目されはじめたのは2017年頃になります。例えばアメリカのChimeというネオバンクでは、普通預金の金利を高く設定しているため、コロナ給付金の受取口座として人気が高くなりました。このようなサービスがアメリカでは多く提供される一方、サービスの入れ替わりも激しい状況です。つまり良くも悪くもサービス競争が盛んなことが、日本と海外、特にアメリカとの違いだと感じています。」
瀧氏「一方、日本の組込型金融の状況は、まず貴社の銀行API接続業者が増えて230社になっている点に凄さを感じています。銀行APIを自社ためだけに使うプライベートアクセスであれば、金融庁への登録が不要なため、自由度の高いサービス開発が可能となり、RPAの延長で銀行口座を使えるといった考え方ができます。私はその点にロマンを感じますし、魅力的な状況だと思っています。」
小野沢「我々も期待を込めて組込型金融のサービスを提供していますが、銀行API接続の裾野がここまで広がった状況は嬉しいと感じています。」
参考情報:GMOあおぞらネット銀行の銀行API接続
理想の組込型金融とは
小野沢「理想的な組込型金融を考えた場合、どのように見られていますか?」
岩田「私は銀行が見えない状態が組込型金融の理想の姿だと考えています。ユーザーが銀行の機能を使うときに、銀行にアクセスする必要があり、手間も大変です。その状況を無くす、軽減することだと考えています。」
瀧氏「お金を使う場所に決済が利用者のすぐ近くにあることが、組込型金融の理想だと思います。銀行の機能は社会に必要不可欠なものです。そのなかで銀行は利用者と銀行機能を繋ぐインターフェイス、つまり接点の役割を果たしていますが、銀行機能が窓口からATMになり、そしてインターネットバンキングからAPIになりつつあり、利用者に近づいています。そういった意味で、UX(顧客体験)の総量に占める銀行の割合が減ってきている現状は自然な流れで、組込型金融の理想に近づいているのだと思います。」
日本の組込型金融が発展するには?
瀧氏「日本はまだ根本的にデジタル化が進んでおらず、クラウドサービスを利用している企業が多いとは言えず、もっとクラウド化されるべきだと考えています。クラウド化が進めばおのずと組み込まれるべき金融機能はたくさんあるため、伸びしろしか感じていません。」
瀧氏「しかし一方で、日本はまだ有償の参照系APIがあります。有償の場合、高い頻度でデータを取得するためにはコストが嵩み、フリクションレスが阻まれる 課題が発生します。その課題に対して私が重要だと考えているのは、発生したイベントに対して通知行うWebhook APIの整備です。データの取得を簡便になるためです。」
岩田「当社の銀行APIラインアップでは、イベント通知のWebhookを無償で提供しています。例えば振込入金口座に対し、入金が発生したタイミングで通知が行われますので、給与が振り込まれた瞬間にスマートフォンに通知が届くといった顧客体験を提供することも可能になります。」
瀧氏「APIを通じて、利用頻度の高い機能を自然に利用者に普及させていくことに対しての推進も、重要だと考えています。」
岩田「組込型金融の発展には、多様な価値観のある事業者が多く参入する状況、つまりエコシステムが重要だと考えています。アメリカではAPIのエコシステム、APIエコノミーが実現できていますが、日本でもAPIや組込型金融のエコシステムを広めていくことを、当社を通じて実現していけたらと考えています。」
2周年を迎えたsunabar -GMOあおぞらネット銀行API実験場-
sunabar -GMOあおぞらネット銀行API実験場-(以下、sunabar)は、2022年4月7日に2周年を迎えました。これまで延べ250社以上の法人のお客さまにご利用いただいており、個人のお客さまに至ってはさらに多くの方にご利用いただいています。
sunabarは、仮想のインターネットバンキング上で、APIを活用したアプリケーションを無料でお試しいただける「銀行API実験場」に加えて、「エンジニアコミュニティ」、「開発支援」、「資金調達支援」の4つの機能を提供しています。本イベントではsunabarの最新情報を紹介しました。
そのなかでsunabar「銀行API実験場」について、これまで本番環境でしか実行できなかったAPIの認可利用設定のシミュレーションがsunabarでも可能となる「API認可機能」の追加を発表しました。
本機能に関しては、「認可機能もsunabarで試したい」というお声を以前からいただいておりました。また、昨今の組込型金融(エンベデッド・ファイナンス)普及により、当社の「かんたん組込型金融サービス」をご利用になる企業さまも増加しており、ご利用企業さまの開発スピードを落とさないためにも本機能の追加開発いたしました。