資金調達・融資に関するお役立ち情報
#13起業時に重要な要素 経営者の「経験、能力、信用」
一般的な企業の融資審査では、過去の事業の実績である決算書をもとに融資の可否判断が行われますが、起業する場合は過去の実績がありません。そこで代わりに経営者(起業者)の履歴書情報から、今回のビジネスを行ううえで必要な経験を積んでいるか、実績はあるか、お金の管理能力はどうかなどをチェックされます。今回は「経営者の経験、能力、信用」についてお話しいたします。
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【経験】
日本政策金融公庫であれば、今回起業する事業内容に関連する職歴が6年あることが一つの目安です。6年まではいかなくても、3年くらいは経験があることが求められます。最低でも1年以上は経験していないと厳しい審査となります。全くの未経験だと門前払いに近い対応をされるのが通常です。フランチャイズビジネスにおいても同様のことがいえます。
経験が大事と一言でいっても、年数だけでなく、経験の中身が問われます。密度の濃い経験であればあるほど、評価は高くなります。例えば、小売店であれば、単なる販売員のアルバイト経験より、正社員として店長の経験がある方が評価は高くなります。さらに店長でも、エリア1位の販売実績を上げたとか、就任後1年で前年比130%の売上を達成したとか、社長賞を受賞したというような場合の方が評価は高くなります。ただし、そこはあくまで会社内での実績ですので、実際に事業を行ううえで活かせる能力が一番重要です。 -
【能力】
経営者としての資質があるかが問われます。面談での態度や話し方などで信用できる人物かどうかがチェックされます。例えば、面談での立ち居振る舞いや回答などが経営者として頼りないという印象であったり、回答内容に嘘偽りがあると見抜かれたりすれば、当然、減点の対象です。また、自分が行う事業を審査員に対して分かりやすく説明することができるか否かによっても印象が大きく変わります。ほかにも、約束の時間や必要書類の提出期限など約束事は絶対に守るといったことが求められます。経営者としてこの事業を絶対に成功させるという覚悟があるかも面談で見られます。
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【信用】
信用面で重要なのがお金の管理能力です。お金にだらしない人だと審査は突破できません。審査では、経営者個人の過去の銀行通帳の提出を求められ、家賃や税金、光熱費などの滞納がないかが調べられます。また、カード会社や信販会社、金融機関、ノンバンクなどが共有する個人信用情報網で借入状況や支払い状況、ブラックリストに載っていないかなどが調べられます。例えば、電話代を払わずによく電話を止められている、カードローンを組んで滞納があるなど、過去のことが原因で融資不可になる失敗事例も多くあります。最近では、スマートフォンを分割購入することが多くなっていますが、こちらについても支払いに延滞が発生した場合には個人信用情報に反映されるので注意が必要です。起業・独立を決意した時点から、お金の管理は慎重にしましょう。
また資産背景の確認も入ります。これまでどれだけお金を貯めてきているか、不動産を持っているかなど、事業に使わないお金や担保に提供しない不動産でも、提示した方がプラスに働きます。場合によっては、家族や両親の資産状況も加味できるケースがあります。金融機関から一番評価を得られるのは、起業に向けて一定期間コツコツ資産形成してきた人です。将来を見据えてお金をしっかりと管理できる経営者と評価されます。
いかがでしたでしょうか。経営者の「経験、能力、信用」どれも重要でひとつも欠かすことができないものです。起業までにより密度の濃い経験を積むと同時に、お金の管理をしっかりし、コツコツと資産形成をしていくといいでしょう。
- ※ 本コラムは2022年11月9日現在の情報に基づいて執筆したものです。
- ※ 本コラムの内容は執筆者個人の見解です。
執筆者情報
V-Spirits グループ代表
税理士・社労士・行政書士・CFP®
中野 裕哲 監修
■起業コンサルタント®、税理士、特定社労士、行政書士、CFP®。V-Spiritsグループ代表(税理士法人・社会保険労務士法人・行政書士法人・株式会社V-Spirits/V-Spirits会計コンシェル・給与コンシェル・FPマネーコンシェル・経営戦略研究所株式会社)。
年間約300件の起業相談を無料で受託し、起業家をまるごと支援。経済産業省後援 起業支援サイト「DREAM GATE」で11年連続相談数日本一。著書・監修書に『一日も早く起業したい人がやっておくべきこと・知っておくべきこと』(明日香出版社)、『ネコ先生がやさしく教える 起業のやり方』(アスカビジネス)など、16冊、累計20万部超。
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