資金調達・融資に関するお役立ち情報
#20創業融資審査における「資金使途」のポイント
今回は、多くの起業家が創業期の資金調達手段として利用する創業融資の審査でポイントとなる「資金使途」についてです。金融機関は、融資したお金を何に使うのかをとても重視します。審査における「資金使途」についての考え方をていきましょう。
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1.資金使途を具体的に示す
資金使途とは、貸したお金の使いみちです。金融機関は、使いみちの分からないお金は貸せないというスタンスです。つまり、仮に金融機関が「この会社にはこの金額まで融資しても良い」と判断していても、資金使途を説明できる範囲までしか借りられません。資金使途は、仕入先などから取り寄せた見積書などで具体的に証明することが求められます。
例えば、Aさんが飲食店を開くとしましょう。オープンにかかる経費総額が1千万円で、自己資金が500万円ある場合、残りの500万円を借入希望額として融資申込をします。事業全体でかかる1千万円の内訳をキッチリと明示し、それぞれの項目について各業者からの見積書等で金額の根拠を説明します。飲食店開業には、店舗の契約金や内装工事、厨房設備、テーブルやイスなどの購入費である設備資金のほか、人件費、食材仕入れ、家賃、広告費などの運転資金がかかります。設備資金については、すべて見積書の提出が求められます。特に、内装工事や厨房設備などの大きく費用がかかる部分については、見積書がない場合は審査が進まないので注意しましょう。一方、コンサルタント業を創業するBさんを考えてみましょう。一般的にコンサルタントは、起業にあたり多額の資金がかからないため、必要なのは事務所の契約金や家賃、事務所備品、パソコン、旅費程度でしょう。それら以外の見積書を用意しても、融資金額が増えることは少なく、起業にあたって本当に必要な金額までしか借りられないのが一般的です。最近では、借りられるだけ借りておきたいといった声も多いですが、やはり明確な資金使途が存在しない限りは、事業実態に則した融資金額となることが多いです。
事業計画書を策定するときに、創業融資の制度上(商品上)の形式的な借入限度額だけを調べて、どんな業種でもそこまで借りられると勘違いするケースも多々あります。あまりお金がかからないビジネスをしようとしている場合は、資金使途が明確な使うお金の範囲内でしか借りられないことをよく理解しておいてください。 -
2.赤字補填資金とは
事業をスタートしたものの、計画通りに売上が上がらず赤字となり、資金が不足することがあります。計画通りに売上が上がらずお金が足りなくなったときに借りる資金のことを赤字補填資金といいます。赤字補填資金の融資を受けるのはとても難しく、今後の事業の見通しやその根拠などの徹底した説明が求められます。これを避けるために、自己資金の確保など、創業時の最初の計画で余裕を持った資金計画を作成しておくことや、計画どおりに売上を上げるためには、どのようにしていくのかといった具体的な計画の精度が重要となってきます。
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3.運転資金と設備資金を混同しない
金融機関にとって、商品仕入れ・従業員の給与・広告宣伝費などの運転資金と、製造機器の導入や営業車両の購入、店舗・事務所・工場の内外装工事などの設備資金では審査のポイントが異なります。また、設備資金は、その耐用年数に合わせて長期間の借入を行うこともできます。融資を受ける際に注意しなくてはならないのが、運転資金として融資を受けたにもかかわらず、設備資金へ充当してしまうこと、またはその逆も資金使途違反になります。金融機関は、資金使途違反を重く捉えますので、最悪の場合融資資金の返還を求められることもあります。
いかがでしたでしょうか。資金使途は、融資を受けるうえでとても大事なことです。金融機関から継続的に融資を受けるうえでも、きちんと事前に伝えた資金使途どおりに使いましょう。
- ※ 本コラムは2023年2月22日現在の情報に基づいて執筆したものです。
- ※ 本コラムの内容は執筆者個人の見解です。
執筆者情報
V-Spirits グループ代表
税理士・社労士・行政書士・CFP®
中野 裕哲 監修
■起業コンサルタント®、税理士、特定社労士、行政書士、CFP®。V-Spiritsグループ代表(税理士法人・社会保険労務士法人・行政書士法人・株式会社V-Spirits/V-Spirits会計コンシェル・給与コンシェル・FPマネーコンシェル・経営戦略研究所株式会社)。
年間約300件の起業相談を無料で受託し、起業家をまるごと支援。経済産業省後援 起業支援サイト「DREAM GATE」で11年連続相談数日本一。著書・監修書に『一日も早く起業したい人がやっておくべきこと・知っておくべきこと』(明日香出版社)、『ネコ先生がやさしく教える 起業のやり方』(アスカビジネス)など、16冊、累計20万部超。
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