「会社設立に税理士は必要?契約するベストなタイミングはいつ?」
「会社設立で税理士は何をしてくれるのかな?契約するとどんなメリットがあるの?」
結論から言って、会社設立に税理士は必要な存在といえます。
なぜなら、会社設立では、税金に関する専門的な知識がないと容易に処理できない手続きが数多くあるからです。
また、補助金や融資制度の利用、節税対策においては、税理士のサポートがないと損をしてしまう可能性もあります。
ただ、税理士にお願いするタイミングには「設立前」「設立後」という選択肢があり、下表で示すメリットで、あなたが何を求めるかによって判断が異なってきます。
<設立前から依頼するメリット> |
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●資本金や役員報酬の金額が相談できる ●適切な決算期が決められる ●補助金や融資制度の提案やサポートが受けられる |
<設立後に依頼するメリット> |
●税務関係の申請書・届出書の作成や提出を任せられる ●会社の税務を代行してもらえる ●経営に関するアドバイスがもらえる |
本記事では、会社設立で税理士が担う役割や、あなたが税理士にお願いするタイミングを具体的に解説します。
この記事で分かること |
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●会社設立で税理士が必要かどうか ●会社設立を税理士に依頼する具体的なメリット ●あなた(自社)が税理士を雇うべき適切なタイミング ●会社設立に最適な税理士の選び方 |
税理士の雇用形態には、
●一定期間継続して契約する「顧問契約」●決算申告業務だけなど一部の仕事を依頼する「スポット契約」
の2種類があります。
会社の税務に関して常にサポートしてもらえる状態を望むのであれば、顧問契約がおすすめです。
一般的に顧問契約は、安くても20万円超(年間)の顧問料がかかります。
ですが、顧問契約をすることにより、会社設立費用を割引してくれる場合もあります。
起業をスムーズに開始したい人に役立つ内容ですので、ぜひ最後まで目を通していただけたらと思います。
目次
1.会社設立に税理士が必要な3つの理由
会社設立だけをお願いするのであれば、司法書士が単独で行うこともできます。
しかし、実態としては、司法書士・行政書士・社会保険労務士・税理士の士業が連携して、登記前後における手続きを代行サービスとして提供しています。
会社設立代行とは|必ず知っておきたい6つの基礎知識とは
あなたが会社を設立する際に、税理士が必要かどうかを判断するには、税理士は何をサポートしてくれるのかを知ることが重要です。
会社設立では、税金に関して知識がないと容易に処理できない作業や、サポートがないと節税等で失敗してしまうような事項が数多く発生します。
そうした煩雑な手続きを代行し、税務関連の有益な提案をしてくれるのが税理士です。
1章では、会社設立に税理士が必要な3つの理由を具体的に解説します。
理由②|税務書類を作成してもらえる
理由③|税務相談に対応してもらえる
順にみていきましょう。
1-1.理由①|税務代理を任せられる
1つ目の理由は、税理士がいれば「税務代理」を任せられることです。
税務代理とは、税務署に対して税金に関する申告や申請を納税者の代わりに行うことです。
会社設立でいうと、『経営者が行うべき確定申告や、青色申告の申請などの煩雑な手続きを代行すること』になります。
法人化すると、経理や決算が複雑化し、申告書や申請の手続きに手間をとられます。
特に、青色申告は、特別控除などを受けられる半面、提出しなければならない書類の種類が多く、書き方も白色申告と比べて複雑です。
また、帳簿は、「複式簿記」という専門知識が問われる内容を記載する必要があるため、初めての人が自力でミスなく行うのは容易ではありません。
税理士に頼めば、作成から申請までも引き受けてもらえます。
税務調査への立会いや、税務署の決定への不服申立てなども、税務代理の業務です。
1-2.理由②|税務書類を作成してもらえる
税理士が必要な2つ目の理由は、煩雑な「税務書類(税金関連の提出書類)の作成」を頼めることです。
税務書類の作成は、多くの場合、先述の税務代理の流れで行われます。
会社設立では、下記の税務書類作成が必要となります。
<会社設立時>
●税金関係の書類作成と届出
●労働保険関係の加入手続き
●社会保険関係の加入手続き
<設立後>
●確定申告書
●青色申告の承認申請書
また、顧問税理士※には、会社経営に関するものだけでなく、相続税の申告書など普段の生活で必要となる書類作成も依頼できます。
※顧問税理士:企業と期間を決めて契約を結んでいる税理士。のちほど説明
1-3.理由③|税務相談に対応してもらえる
税務相談に対応してもらえることは、設立時に税理士が必要と言える大きな理由です。
税務相談とは、納税や経営成績、財政状況についての納税者の疑問に応え、適切なアドバイスを行う業務のことです。
設立時に税理士に相談できるのは、主に下記のような事項です。
●納税についての相談●資本金の適切な金額
●役員報酬の設定
●適切な決算期について
●補助金や融資制度の提案やサポート
ほかに経営者にとって重要な節税対策のアドバイスも税務相談に含まれます。
特別な経験や知識のある人でない限り、こうしたお金にまつわる事項を、自分だけで解消していくことは難しいでしょう。
納税や経営、財務について、適切なアドバイスをくれる税理士は、会社設立において大変心強い存在と言えます。
2.【タイミング別】会社設立で税理士に依頼するメリット
冒頭で述べたように、会社設立で税理士が担う役割はタイミングによって違います。
たとえば下記のような税務相談は、設立前に依頼する事項です。
●資本金や役員報酬、決算期等の適切な設定
●補助金や融資制度の提案やサポート
確定申告書、青色申告の承認申請書等の税務書類作成は、設立後、事業が始まってからの業務です。
このような違いがあるため、2章では、会社設立で税理士に依頼するメリットを、「設立前」と「設立後」に分けて解説します。
会社設立|税理士に依頼するメリット |
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設立前から依頼するメリット |
●資本金や役員報酬の金額が相談できる ●適切な決算期が決められる ●補助金や融資制度の提案やサポートが受けられる |
設立後に依頼するメリット |
●税務関係の申請書・届出書の作成や提出を任せられる ●会社の税務を代行してもらえる ●経営に関するアドバイスがもらえる |
あなたが税理士を必要とするのは、設立前、設立後のどちらでしょうか?
順に説明しますので、自身の状況と照らし合わせながらご覧ください。
2-1.【設立前】税理士に依頼する3つのメリット
会社設立前に、税理士に依頼する主なメリットは下記となります。
② 適切な決算期が決められる
③ 補助金や融資制度の提案やサポートが受けられる
①資本金や役員報酬の金額が相談できる
資本金や役員報酬の金額は、会社設立後の納税額に大きく関わります。
会社設立前に税理士に相談すると、事業内容や売上げ予測など資金繰りの見通しを踏まえて、適切な金額設定についてアドバイスがもらえます。
②適切な決算期が決められる
決算期は納税額に影響し、また一度決めると簡単に変更できないため、慎重な設定が求められます。
会社設立前に、税理士に相談すると、あなたの事業に最適な決算期を提示してもらえます。
③補助金や融資制度の提案やサポートが受けられる
税理士は、補助金(助成金)の最新情報や融資制度の利用を提案してくれます。
制度利用には、事業内容や収支の見込みなどを記載した、詳細な事業計画書の提出が必要になりますが、そうした書類の作成から申請までをサポートしてもらえるのもメリットと言えるでしょう。
2-2.【設立後】税理士に依頼する3つのメリット
会社設立後に税理士に依頼するメリットは、下記の3つです。
② 会社の税務を代行してもらえる
③ 経営に関するアドバイスがもらえる
①税務関係の申請書・届出書の作成や提出を任せられる
法人の税務関係の申請、申告書は、個人に比べて複雑で、税務知識がないと作成は困難です。
税理士に依頼すると、会社の決算申告や確定申告、消費税申告書など、すべての税務関係の書類の作成や提出を任せられます。
②会社の税務を代行してもらえる
帳簿付けや決算申告などの法人の税務は複雑で、量も多く、税務知識のない人が1人で行うのは容易ではありません。
税理士は、こうした煩雑な会社の税務を代行してくれるうえ、税務調査等にも対応します。
※税務調査:申告した内容に間違いがないか、税務署によって行われる調査
③経理に関するアドバイスがもらえる
設立期には、経理業務に慣れないため、会計処理や税務処理に関する悩みが生じがちです。
数字のプロである税理士は、その会社に適した経理・会計処理や税務処理や、資金繰りなどの適切なアドバイスを行ってくれます。
3.会社設立で税理士に依頼する際の2つの注意点
会社設立で税理士に依頼すると多くのメリットがありますが、一方で注意点が2つあります。
●顧問かそうでないかを「目的」と「費用」で判断する
それぞれ解説します。前もってしっかり理解しておきましょう。
3-1.設立前か設立後かの「タイミング」を見極める
会社設立で税理士に依頼する際は、「いつ頼むのか?」のタイミングに注意しましょう。
前章でお伝えしたように、設立前と設立後で、享受できるメリットが異なります。
たとえば、資本金や役員報酬の設定から、融資制度利用など、設立前に専門家のサポートが必要と考えるなら、依頼のタイミングは「会社設立前」が良いでしょう。
準備段階で専門家の助けは必要ないのであれば、税理士を選ぶのは「会社設立後」でも遅くはありません。
自分が税理士に何を頼みたいかを見極めて、依頼する最適な時期を定めましょう。
設立後のタイミングについては、5.【会社設立後】税理士と契約すべきタイミングで詳しく述べますので、そちらも参考にしてください。
3-2.顧問かそうでないかを「目的」と「費用」で判断する
顧問税理士なのか、単発の業務をスポットで依頼するのかを判断しましょう。
会社設立では、顧問という継続的な契約形態だけでなく、「設立前の相談だけ」、「決算申告業務だけ」など、一部の仕事をスポットで税理士に依頼することができます。
どちらの契約にするか、判断する指標は2つです。
●費用を抑えたいならスポット契約を選択する
3-2-1.税理士に期待していることは何かを明確にする
まず判断の指標となるのが「目的」です。
税理士に頼みたいことがはっきりしていて、現状、それだけ依頼できれば問題ないのであれば、「スポット契約」で十分でしょう。
ただスポット契約では、契約業務以外の相談はできません。
会社の税務、経理関連の悩み全般を、年間を通して、いつでもサポートしてもらえる状態を期待するなら、顧問税理士が必要です。
3-2-2.費用を抑えたいならスポット契約を選択する
もうひとつ、重要な指標となるのが「費用」です。
会社設立前で、税理士費用はなるべく抑えたいと考えるなら「スポット契約」を選びましょう。
スポット契約は顧問料がない分、費用負担が軽減されます。
ご参考までに、会社設立にかかる税理士費用の相場を示した下表をご覧ください。
税理士への依頼内容 | 費用相場 |
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顧問料(顧問税理士を契約する費用) | 月額3~5万円(年間36~60万円) |
決算申告(スポット) | 年額10~25万円 |
会社設立業務(スポット)※税理士報酬のみ | 3〜5万円 |
※税理士費用は、依頼する税理士や会社の条件によって差異があります。こちらは目安として参考にしてください。
顧問契約を結んでいても、依頼する内容によっては、顧問料以外に追加費用がかかることがあります。
一概には言えませんが、事業規模の小さい会社の創業時は、スポット契約の検討をおすすめします。
依頼したい業務内容を絞って効率良く依頼することで、税理士費用を最低限に抑えることができます。
4.【結論】会社設立で税理士に依頼するべき人
会社設立での税理士の役割を網羅的に解説しましたが、今の段階で税理士の手を借りるかどうか、どんな形態でお願いすべきかどうか、未だ決めかねている方がいるかもしれません。
4章では、ここまでの結論として、税理士に依頼すべき人を「3つのパターン」に分けて端的に示します。
●会社設立前に顧問税理士を依頼するべき人
●税理士の依頼は「会社設立後」がおすすめの人
自分はどこにあてはまるかを判断していきましょう。
4-1.「会社設立前」にスポットで税理士を依頼するべき人
下記にあてはまる人は、会社設立前にスポットで税理士を依頼しましょう。
「会社設立前」にスポットで税理士を依頼するべき人 |
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✓ 会社設立での税金に関わる業務を安価で専門家に依頼したい人 |
✓ 現状、会社設立までのサポートだけを税理士に求めている人 |
スポット契約は、顧問料が発生しないためコストが安く済みます。
もう一度、税理士費用の相場をみてみましょう。
税理士への依頼内容 | 費用相場 |
---|---|
顧問料(顧問税理士を契約する費用) | 月額3~5万円(年間36~60万円) |
決算申告(スポット) | 年額10~25万円 |
会社設立業務(スポット)※税理士報酬のみ | 3〜5万円 |
※税理士費用は、依頼する税理士や会社の条件によって差異があります。こちらは目安として参考にしてください。
ご覧のとおり、顧問契約を結ぶと、月額で3万〜5万円程度の顧問料がかかってしまいます。
設立に関わる税務作業は専門家に頼みたいけれど、資金に余裕がなく、なるべくコストを抑えたいとお考えの方には、依頼内容を絞ってスポット契約をすることをおすすめします。
4-2.「会社設立前」に顧問税理士を依頼するべき人
下記にあてはまる人は、会社設立前から顧問税理士の雇用を選択しましょう。
「会社設立前」に顧問税理士を依頼するべき人 |
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✓ 法人の税務の知識が乏しく、設立前、後に関わらず長期的なサポートが必要な人 |
✓ 会社関連の税務や決算は基本的に専門家に任せて、仕事に集中したい人 |
税務の知識が乏しく、自力での作業や申請に自信がない人は、税理士に設立から設立後まで長期的なサポートを依頼することをおすすめします。
専門知識が必要な税務関連、会計などの業務を基本的にすべて任せることができるので、経営者は苦手なことに煩わされず、仕事に集中できます。
顧問料はかかりますが、経理や経営で不安や疑問が生じたときに、いつでもアドバイスとサポートが受けられることは、税務系の作業が重荷の人にとっては、お金と時間には変えられないメリットと言えます。
4-3.税理士の依頼は「会社設立後」がおすすめの人
下記のケースなら、税理士への依頼は会社設立後に検討すると良いでしょう。
税理士の依頼は「会社設立後」がおすすめの人 |
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✓ 会社設立を行政書士や司法書士に依頼している人 |
✓ 会社設立時の手続きを自力で行える人 |
✓ 会社設立でかかる費用を最小限にしたい人 |
会社設立時、多くのケースにおいてサポートを依頼される士業は、司法書士と行政書士です。
定款などの書類作成全般を任せられるのが行政書士、登記を独占業務とするのが司法書士となります。
昨今は、会社設立代行として、行政書士、司法書士、税理士が連携して専門業務を行っている会社もあり、依頼した行政書士(司法書士)が、税務関連の部分だけを税理士に託すケースもあります。
こうしたほかの士業や、設立代行に依頼している場合は、会社設立を税理士に頼む必要はありません。
設立の手続きを士業に頼らず行える人、費用面から自力で手続きをしたいという人も、税理士への依頼は焦らず、設立後にタイミングをみて行うことをおすすめします。
『4-3.税理士の依頼は「会社設立後」がおすすめの人』に該当する方には、次章5.【会社設立後】税理士と契約すべきタイミングで、税理士への依頼を考えた方がいい最適な時期について言及します。
5.【会社設立後】税理士と契約すべきタイミング
会社設立後に「税理士と契約するタイミング」を図るのに、念頭に置くと良い3つの基準があります。
●会社設立後1~2年後を目安にする
●売上が1,000万円を超えたタイミング
自社に適切なタイミングを見定めていきましょう。
5-1. 決算申告書の作成が近づくタイミング(1期目終了近く)
決算申告書に税理士の署名がある方が決算申告書に対する銀行や税務署の心象が良いため、
実際1期目終了近くにスポットでもお願いする方が多いです。
5-2.会社設立後1〜2年後を目安にする
1期目終了近くにお願いしない場合は、会社設立後1〜2年後が目安です。
1〜2年も経てば、事業が軌道に乗り、売上げも安定するでしょう。
一定の成果が現れると、税務や会計業務がより複雑になりますし、節税対策の検討も必要になってきます。
また、事業規模が拡大するにつれ、税務調査※に入られる可能性が高まることも、税理士が必要といえる要因のひとつです。
税理士がいれば、税務調査に立ち会って対応してくれるので、当日の質疑応答に対する不安が解消されます。
※税務調査:税に関して申告した内容に間違いがないか、税務署によって行われる調査
5-3.売上げが1,000万円を超えたタイミング
売上げが1,000万円を超えたら、税理士の雇用を考えた方が良いタイミングです。
年間売上げが1,000万円を超えると、翌々年に「課税事業者」※となります。
課税事業者になると、所得税の申告に加え、消費税の申告もしなければならなくなり、会計処理が複雑かつ重要になります。
簡易課税制度の承認を申請するといった作業に加え、節税の知識がないと損をしてしまうような局面も増えてきます。
したがって、売上げが1,000万円を超えたら、税理士との顧問契約を検討しましょう。
また、インボイスを取得すると同じく消費税の課税事業者になるので、売上げが1,000万を超えていなく
ても税理士にお願いしてもいいでしょう。
※課税事業者:消費税を納付する義務がある法人、および個人事業主
6.会社設立に最適な税理士の選び方
いざ税理士に依頼しようと決意しても、税理士も事務所も数が多く、どこに頼めばいいのか迷ってしまいますよね。
ここでは、会社設立で税理士への依頼をお考えの方に向けて、最適な税理士の選び方をお伝えします。
●自社の業界(業種)に精通している税理士を選ぶ
●あなた(自社)と相性が良い税理士を選ぶ
知人の紹介やネット検索で評価の高い税理士が、あなた(自社)にとって相性の良い税理士であるとは限りません。
適切かどうかを自分で判断できるよう、しっかり頭に入れておきましょう。
6-1.創業支援を得意とする税理士を選ぶ
まず重要なのが、創業支援を得意としている税理士でなくてはならないということです。
なぜなら税金に関わる業務だけでなく、資金調達までしっかりサポートしてもらえるからです。
会社設立時には、資本金、運転資金に設備費用と、とにかくお金がかかります。
創業支援を熟知した税理士なら、補助金(助成金)の最新情報や融資制度の利用を提案してくれます。
制度利用には、詳細で煩雑な事業計画書の提出が必要になりますが、そうした書類作成から申請までの一連の手続きを任せられます。
会社設立では、創業期に求められる役割を心得た、資金調達までサポートしてくれる税理士を選びましょう。
6-2.自社の業界(業種)に精通している税理士を選ぶ
2つめは、設立する会社の業界(業種)に詳しい税理士を選ぶことです。
税理士のよく知らない業界だった場合、的確なアドバイスや有益な情報が得られにくい場合があるからです。
同じ会社設立でも、税理士によって得意とする業界は異なります。
たとえば、製造業や小売業が得意な税理士に、IT分野や金融業の相談をする際は、まず事業内容を細かく伝える必要があり、業界用語の説明等にも時間と手間がかかります。
業界によって、特有の慣行や法規制があることも多く、税理士に知識がないとアドバイスの内容がずれてしまったり、効果的に節税できなかったりすることも考えられます。
会社設立では、より有意義なアドバイスが期待できる、自社の業界(業種)に精通している税理士を選びましょう。
ほとんどの税理士事務所では、ホームページに得意分野や実績を掲載しているので、その内容をまずは確認するようにしてください。
6-3.あなた(自社)と相性が良い税理士を選ぶ
シンプルな表現になりますが、1番と言ってもいいほど大切なのが、相性が良い税理士を選ぶことです。
事あるごとに相談し、連絡を取り合う必要がある相手と相性が悪くては、スムーズな会社設立は望めません。
『相性が良い税理士』を、具体的に解析すると下記のイメージです。
☑どんなことでも話しやすい
☑話を聞いてくれていると感じる
☑事業の目指す方向性を理解してくれている
☑親身になってくれる
☑信頼できる
☑気分屋ではない
☑上から目線の態度をとらない
☑連絡を怠らない
あなたとの相性を判断するためには、税理士と直接会って、上記の事項をチェックしてください。
相性が良いという感覚は、一般的に考え方(価値観)が合致したときに生じます。
考え方の合わない税理士に、事業展開を相談しても、納得できる返答は得にくいです。
長く付き合っていく税理士選びは、相性を見定めて慎重に選びましょう。
【料金の高い税理士が有能とは限らない】
どんな士業にも言えることですが、高い料金設定の税理士だからといって有能とは限りません。
高額な手数料を支払ったにもかかわらず、思うようなサポートが受けられなかったというケースは数多くあります。
反対に、価格が安い税理士に依頼した結果、期待以上の働きや提案をしてもらえたという場合もあります。
税理士選びは価格だけに左右されず、上記3点の指標を念頭におき、直接会って話してから判断しましょう。
7.会社設立で自分で準備しないといけないこと
会社設立を税理士などの専門家に委託したとしても、必ず自分で決めて準備をしなくてはならないことがいくつかあります。
7章では、会社の設立前と設立後に分けて「自分で準備しなくてはならないこと」を解説します。
●設立登記完了後すぐに準備をしなくてはならないこと
順にみていきましょう。
7-1.会社設立前に自分で準備をしなくてはならないこと
会社設立の手続きを専門家に依頼するとしても、書類等に記載する内容は自分で決めておかなければいけません。
決めておく必要がある事項を表にまとめましたのでご覧ください。
① 会社名(商号) |
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基本的に自由だが「会社の看板」になることを意識し、下記のルールを念頭に置いて慎重に決める。
|
② 所在地 |
設立する会社の本社を置く住所。 自宅を所在地にする際は、賃貸物件の場合は「法人利用が可能であること」を確認する必要がある。 |
③ 事業の目的 |
定款に記載する事項で、「何をして収益を得る事業なのか」を明確にしておくことが重要。 設立してすぐに行う事業だけでなく、成長して将来的にやりたい事業まで考慮して決定すると良い。 |
④ 資本金について |
資本金の額、および出資者(資本金を出す人)を検討して決定しておかなければならない。 |
⑤ 役員の有無 |
代表取締役や監査役、取締役、会計参与などのこと。 設置の有無は自由だが、取締役会を設置する場合は最低3名以上の役員が必要となる。 |
⑥ 会社設立日 |
設立申請を行って、法務局が受け付けた日が設立日となる。 日にちは自由だが、法務局が休みの土日祝日は設定できない。 |
⑦ 事業年度 |
法人税などの税金を計算するための単位となる期間のこと。通常は1年に設定する。 |
⑧法人実印を用意する |
7-2.設立登記完了後すぐ準備すること
これから会社を設立する方は、今は登記までで頭がいっぱいかもしれませんが、申請書が受理され登記が完了したら、できるだけ早く行わなければいけないことがあります。
- 法人実印を登録する
- 法人口座を開設する
登記完了後に焦らないで済むように、その後のこともしっかり頭に入れておきましょう。
① 法人実印を登録する |
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登記の際に取得した印鑑証明書は発起人個人のものであるため、設立完了後は、すぐに法人実印を印鑑登録する必要がある。 印鑑証明書は、法人口座開設や年金事務所への届出のほか、法人としての諸契約を行う際に必須であるため、すぐに登録できるよう法人実印は設立後ではなく、あらかじめ準備しておくと良い。 |
② 法人口座を開設する |
下記の理由から、登記が完了したら、金融機関の口座名義が会社名になっている「法人口座」の開設を最優先で行う。
●法人口座がなければ社会的信用を得にくい ●法人口座がなければほとんどの場合、融資が受けられない ●会計処理や税務処理を正しく行うため法人口座が必要 |
会社を設立したら、何より先に行うべきなのが法人口座の開設です。
法的には、個人口座で事業を行っても問題はないものの、表中で示したように法人口座がないと社会的な信用を得にくく、融資を受けることも困難です。
法人口座は設立後にしか開設できないため、登記が完了したその足で、手続きに向かう人も少なくありません。
(※freee株式会社が提供する「freee会社設立」を利用した場合)
「ビジネスで使うお金」と「プライベートで使うお金」をしっかり分けておかないと、会計処理や税務処理を正しく行うことができません。
実際、法人口座がなければ事業が開始できないといっても過言ではないでしょう。
ただ、急ぐべきとは言うものの、創業期の起業にとって、法人口座開設は簡単とは言えません。
- 起業したばかりだと口座開設審査のハードルが高い
- 煩雑な手続きがあり時間がかかる
次章では、会社を設立したばかりの人にもおすすめな『ネット銀行』を紹介します。
よく読んで、上手に利用していきましょう。
8.創業期の法人口座はネット銀行がおすすめ
会社設立後、スムーズに事業を開始するためには、法人口座をどこで開設するのかを早めに決めておきたいですよね。
法人口座には、大きく分けて2つの選択肢があります。
- 店舗型銀行(都市銀行や地方銀行、信用金庫等)
- ネット銀行
このうち、特に創業期は、『ネット銀行』がおすすめです。
なぜなら、ネット銀行は店舗型銀行よりも振込手数料や口座維持費が安いうえに、24時間365日当日振込が可能(※1)で忙しい創業期にピッタリだからです。
まずは、店舗型銀行との違いを示した一覧をみてください。
ネット銀行 | 店舗型銀行 (都市銀行や地方銀行、 信用金庫等) |
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口座開設審査にかかる時間 | 最短即日〜1週間 | 2週間~1カ月 |
ブランド力 | 比較的低い | 比較的高い |
店舗(対面窓口) | 無し | 有り |
営業時間 | 24時間365日利用可能 ※2 | 窓口原則平日9時〜15時 ※3 |
振込手数料 (ほか金融機関宛て3万円以上)※4 |
145〜229円 | 330〜660円 |
インターネットバンキング利用料や口座維持費等 ※4 | 無料 | 約1,700〜3,200円(月額) |
※1.着金のタイミングは相手先銀行による
※2.メンテナンス時など例外を除く。
※3.ATMは時間外も利用できるが手数料がかかる場合がある。
※4.手数料、維持費は各銀行で差異があり、また変更される可能性があります。
この比較で分かる、創業期の法人口座開設に「ネット銀行」をおすすめしたい理由は4つです。
- スピーディーに口座開設できる
- 振込手数料が安い
- 口座維持費が無料
- 24時間365日いつどこでも操作できる
下表をご覧ください。
① スピーディーに開設できる |
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口座開設完了までがスピーディーかつ、スムーズに行えるのが、創業期には何より魅力! 店舗型銀行はブランド力がある分、審査も厳しく、設立間もない会社が法人口座を開設しようとすると、たくさんの書類のやり取りが必要になります。場合によっては、窓口に行く必要もあります。 ネット銀行の申込は、原則オンラインで完結するため、スピーディーです。 登記簿謄本や印鑑証明書など必要書類もオンライン上の提出で完結します。(一部郵送対応あり) |
② 振込手数料が安い |
ネット銀行をおすすめしたい理由の2つめは、法人の振込手数料が安いこと。 店舗型銀行なら「330〜660円程度」かかる他金融機関宛3万円以上の振込手数料が、ネット銀行なら「145〜229円」 法人は振込先が多いため、件数や年数が積み重なるにつれ、この差額は大きく響いてきます。 |
③ インターネットバンキング利用料や口座維持費が無料 |
ネット銀行は、インターネットバンキング利用料や口座維持費が無料な場合が多いです。 店舗型銀行だと一般的に口座維持費は、月額1,700〜3,200円程度です。仮に、月2,000円とすると維持費だけで年間20,000円もかかることになり、違いは歴然です。 |
④ 24時間365日いつどこでも操作できる※1 |
4つめの理由は、取引も振込も時間に縛られず、24時間365日いつどこでも操作できること。 店舗型銀行では、営業日の15時以降および銀行窓口休業日は基本的に翌営業日扱いになりますが、ネット銀行は休業日を気にする必要はありません。 15時を過ぎても当日振込が可能です。(※2) 忙しい創業期に、銀行の営業時間に合わせて窓口に出向く必要がなく、早朝でも深夜でも、移動中であっても、スマホやパソコンから簡単に操作できるのが、ネット銀行の魅力です。 |
※1.システムメンテナンス時を除く
※2. 着金のタイミングは相手先銀行による
いかがでしょうか。
株式会社設立後の法人口座開設では、スピーディーでメリットの多い「ネット銀行」の利用を検討しましょう。
\創業期の法人口座開設ならGMOあおぞらネット銀行/
法人口座の開設であれば、GMOあおぞらネット銀行の法人口座がおすすめです。
この記事を読んでいる経営者さまの皆さんは税理士に依頼すべきことは依頼し、効率良く会社設立~設立後まで事業を効率良くスピーディーに回していきたいと考えているかと思います。
そのような経営者の皆さんに、GMOあおぞらネット銀行は、下記のサービスを提供しています。
【おすすめポイント3つ】
・条件を満たせば最短即日法人口座開設で事業もスピーディーに始められる(※1)
・業界最安値水準の振込手数料145円で経費削減(※2)
・24時間365日いつでも取引可能(※3)忙しい経営者のみなさまもインターネットバンキングでらくらくお取引
※1(1)取引責任者さまと代表さまが同一の場合 (2)自撮り動画(セルフィー)で本人確認をした場合
※2 2024年3月時点の各社公表資料等による当社調べ。調査対象範囲は、大手行およびインターネット専業銀行のうち法人顧客向け口座を提供している銀行を対象にしています。また、各社の手数料割引のプログラムや期間限定等のキャンペーン等は除いております。
※3 システムメンテナンス時は除く
上記以外にも、会計ソフトとの連携でらくらく経費精算も可能。
Pay-easy(ペイジー)に対応しているので企業後に発生する税金や社会保険料のお支払いにも対応。ダイレクト納付に対応しているのはGMOあおぞらネット銀行だけです。
会社設立直後から、事業をスムーズに進めてスタートダッシュを決めたい経営者の方は、GMOあおぞらネット銀行での法人口座開設をぜひご検討ください。
9.まとめ
会社設立での税理士の依頼を3つのパターンに分け、それぞれのおすすめのタイミングをまとめました。
「会社設立前」にスポットで税理士を依頼するべき人 |
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✓ 会社設立での税金に関わる業務を安価で専門家に依頼したい人 ✓ 現状、会社設立までのサポートだけを税理士に求めている人 |
「会社設立前」に顧問税理士を依頼するべき人 |
✓ 法人の税務の知識が乏しく、設立前、後に関わらず長期的なサポートが必要な人 ✓ 会社関連の税務や決算は基本的に専門家に任せて、仕事に集中したい人 |
税理士の依頼は「会社設立後」がおすすめの人 |
✓ 会社設立を行政書士や司法書士に依頼している人 ✓ 会社設立時の手続きを自力で行える人 ✓ 会社設立でかかる費用を最小限にしたい人 |
会社設立後に税理士と契約する際は、下記を基準にして検討しましょう。
- 会社設立後1〜2年後を目安にする
- 売上げが1,000万円を超えたタイミング
会社設立で適切な税理士の選び方は以下のとおりです。
- 創業支援を得意とする税理士を選ぶ
- 自社の業界(業種)に精通している税理士を選ぶ
- あなた(自社)と相性が良い税理士を選ぶ
あなたの起業に関するお悩みの解消に、この記事がおおいに役立つと嬉しく思います。
※ 本コラムは2024年3月26日現在の情報に基づいて執筆したものです。
※ 当社広告部分を除く本コラムの内容は執筆者個人の見解です。