
税務調査で必ずチェックされるのが接待交際費。私的経費であっても、仕事上の必要経費として計上するケースが多発しているためだ。そのため、税務調査時の経費判断においても事実認定となるだけに、税理士等の専門家の申告であっても個人の税務調査で指摘されやすい。
そこで今回は、個人事業主(個人)、会社(法人)の接待交際費について、税務調査で仕事上の必要経費と認められるか否かの判断ポイントをOB税理士などの見解をベースに解説する。
1.個人の接待交際費で問題視されるのはココ

「接待交際費」の税金上の取り扱いについては、個人は所得税法、法人が法人税法で判断される。そもそも法律が違うため、取り扱いも異なる。
まずは、個人の「接待交際費」に関する税務処理および節税対策のポイントを紹介する。 個人が対象となる所得税法では、接待交際費は全額経費として認めている。
そして、必要経費については、
①総収入金額に対応する売上げ原価、その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
②その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額
と、基準になる金額の考え方を示している。
つまり、業務を行ううえで直接必要なものであれば「必要経費」となり、金額の上限の“壁”もない。そのため、税務調査で確認される最大のポイントは事業との関係性だ。
事業との関係性を否認できるかが調査官の腕の見せ所となる。
それでは、接待交際費になるもの、ならないものについて具体的に解説する。
・取引先への中元や歳暮、祝儀や香典にかかる費用
・取引先から招待されたパーティーなどへの参加費用
・取引先とのゴルフや旅行、観劇に招待する費用(高額な費用などは税務調査の際にも問題となるケースが多く、接待しなければならない理由が必要)
・事業との関係性が認められない友人や家族との食事・飲食・旅行費用
「接待交際費」を経費で落とすには、プライベートでの支出ではなく、「仕事」ということがマストの条件。ゆえに事業に直接必要であったということを説明・証明できなければならない。
証明さえできれば、たとえ高額であっても経費として計上することができる。つまり、税務調査を想定して、この「説明・証明」ができる準備を日ごろからしておくことが重要なのだ。
そのためには、領収書等の保管をはじめ、領収書には以下の項目を必ず記録しておくことが大切だ。
・会食等に行った年月日
・参加した得意先等の氏名や名称、関係性
・会食等に参加した者の数
・会食等の開催場所
・そのほかお中元・お歳暮・贈答品の相手先やパーティーなどの案内状等
最後に、国税OB税理士は、「税務調査に際して調査官は以下の点から必要経費かどうかを判断する」と指摘する。
・事業に関連する経費か
・(事業に関連する)取引先・仕入先などに支出された経費であるか
・領収書等は存在しているか
・経費計上する動機は事業を円滑に進めていくためのものか
・事業の内容や取引規模などから判断して、社会通念上妥当な金額であり妥当な支出回数であるか
とはいうものの、調査官もベテランから新人まで幅広い。若手や新人の場合、社会経験が少ないだけでなく、最近では上司との飲み会にも参加しないなど、接待交際シーンでどういったお金が発生しているのか、接待する相手によっていくらぐらいが妥当な金額なのかなど、想像でしか判断できないことも少なくない。
こういったギャップも想定しながら、接待交際費として認められるように準備しておく必要がある。最終的には税務署が「経費」として認めるか否かである。
2.会社の「接待交際費」の取り扱い

一方で、会社になると少し違ってくる。実は会社が取り扱う接待交際費については、会計上は勘定科目として「接待交際費」としてあげるが、法人税法上では原則、損金不算入となっており、「必要経費」として計上すことができない。
しかし一定条件のもと特例措置で損金算入が認められることで、「経費として計上してもよい」としているだけなのだ。
会社が支出する「接待交際費」は、事業に関係のある取引先等へのおもてなし、お中元やお歳暮などの贈物をした際にかかった費用だ。
国税庁Webサイトの「交際費等の範囲と損金不算入額の計算」には、交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者などに対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(以下「接待等」といいます。)のために支出するものをいいます。
特例で認めている損金計上できる接待交際費は、会社規模に応じて取り扱いが違う。
会社規模の振り分けは「資本金」が基準だ。
・1億円以下の法人
・1億円超~100億円以下の法人
・100億円超の法人
この3区分により経費計上できる金額が決まってくる。
2-1.資本金が「1億円以下」の法人
ここでは、基本的に税務署管轄になる、資本金1億円以下の法人に絞って解説する。
税務当局では、資本金1億円以下の法人を「小規模企業」と定め、基本的に税務署が管轄する。この資本金1億円以下の小規模企業は、次の1、2のいずれかの金額を接待交際費として経費に計上できる。
①支出した接待交際費のうち「接待飲食費」の50%相当額
②支出した接待交際費の金額のうち年間800万円までの金額(※一部例外あり)
①については、支払った接待交際費の中で、“取引先の接待などにかかった飲食費”となり、お中元やお歳暮などの費用は含めることはできない。具体的に損金計上できる費用は、
・取引先、得意先を接待するための飲食代
・テーブルチャージ料やサービス料
・会場費
・得意先へ差し入れしたお弁当代
・飲食店等での飲食後、その飲食店等で提供されている飲食物の持ち帰りに要するお土産代
などだ。
国税OB税理士によれば、「接待ゴルフや観劇、旅行などのイベント時の飲食費や飲食店等へ取引先を連れていくタクシー代などは、送迎するために支出する送迎費となることからこれもNG。ここを含めてしまう経営者も多いため注意したい」と言う。
一方で、②を選択する場合は、飲食や贈物なども年間800万円以下であれば、全額経費計上できる。上記の①の経費とは別に以下も接待交際費となる。
・カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手ぬぐい、その他これらに類する物品を贈与するために通常要する費用
・会議に関連して、茶菓、弁当、その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用
・新聞、雑誌等の出版物または放送番組を編集するために行われる座談会、その他記事の収集のために、または放送のための取材に通常要する費用
などだ。
ただ、こちらを選択すると年間800万円を超えてしまった場合、超過分は経費計上できなくなる。この1、2のどちらを選択するのかは各会社の任意だ。
3.1人当たり1万円以下の飲食などの費用

さて、取引先と会食した際に支払ったお金でも、接待交際費として取り扱わなくてよい「経費枠」がある。
2024年度の税制改正において、1人あたりの飲食費が1万円以下であれば、交際費に該当しないこととなり、全額経費計上できることになった。
従来は5千円以下だったことから「5千円基準」と言っていたが、物価高等の影響から「1万円基準」となったわけだ。
ご存じの方も多いと思うが、1人当たり1万円以下ということで、その計算方法は、合計額を参加人数で割る。例えば、参加者が4人で、飲食費の合計が4万円であれば、全額が経費となる。ここで注意したいのが、会社の消費税の処理方法だ。税抜経理方式の場合は、1万円の判定は税抜金額で行う。
例えば、税抜き処理しているのであれば、1人当たり「1万円+消費税1千円=1万1千円」の飲食費まで経費として計上できる。税込み処理していると、税込み1万円が経費計上の上限になってしまう。税抜き経理の方が、経費計上額を大きくすることができるわけだ。
保管する領収書等に関しては、飲食をした年月日、飲食店名、参加人数、合計額を記録する。さらに、代表者1人で良いので、接待先の社名、役職、氏名も記録する。「相手先を残さずに、領収書だけあればなんとかなると思っている経営者も少なくないが、税務調査では必ず、そういった部分が確認され、否認されることが一般的。
逆に領収書は残っていなくてレシートのみの場合でも、前述の内容が明確に分かれば認められる」と国税OB税理士は指摘する。
なお、勘定科目については自由だが、「交際費と区別するために会議費としておく会社が多い」(前出の国税OB税理士)としている。
取引先や仕入先と食事をとりながら、会議や打合せをすることがあるが、この時にかかった飲食代などの費用も「会議費」として経費計上できる。会議の席でのお弁当代や茶菓子、飲物代も会議費だ。
飲食等が1次会と2次会など複数にわたって行われた場合でも、それぞれが単独で行われていると認められるときには、それぞれにかかる飲食費ごとに1人当たり1万円以下の会議費として計上することができる。例えば、1次会は居酒屋、2次会はカラオケと会場を別にしているようなケースだ。
一方で複数にわたって行われた飲食等が一体の行事・行為であると認められるときは、合計で1万円基準が働くので注意が必要だ。例えば、同一の飲食店等で1,2次会が行われ、その飲食等に要する費用を分割して支払い、領収証を2枚に分けてもらったなどがこれに当たる。
この1万円基準を利用すれば、接待交際費から除外できるため、資本金1億円以下の法人の場合の「接待飲食費」の50%相当額か年間800万円までの金額といった制限の対象にもならない。なお、会議費と交際費を分ける場合、交際費の増減を把握するためには、会計ソフトの科目の補助コードを使ってすぐに区別できるようにしておくと良い。
法人の場合、法人規模によって交際費課税の特例が設けられているが、取引先との飲食は、費用が高くならないように1人当たり1万円以下となるように心掛ければ、全額経費に計上できるため節税対策につながる。ただ、この「1万円基準」は、取引先が1人もいない社内の集まりは、会議費として計上できないので注意したい。
さらに、オーナー経営者などは、プライベートな飲食費や事業と関係のない者との会食費も1万円基準や接待交際費などを利用して損金計上することも見受けるが、こうした私的な使い込みは税務調査で指摘されるため、十分に注意しておく必要がある。とくにオーナー社長の接待交際費は指摘されることが多い。さらに、接待交際費は特例で認められているだけなので、税制改正において改正される可能性もあり、最新のルールを十分確認しておく必要がある。
※本コラムは2025年3月31日現在の情報に基づいて執筆したものです。
※当社広告部分を除く本コラムの内容は執筆者個人の見解です 。
※個別具体的なケースに係る税務上の取扱い等につきましては、税理士または最寄の税務署にご確認ください。
(執筆:一般社団法人租税調査研究会 専務理事・事務局長 宮口貴志)
