イベント情報&レポート

sunabarコミュニティイベント第17弾

保険×銀行 業界クロストーク
組込型保険×組込型銀行の未来!

こんにちは。sunabarイベント担当の植村です。
2022年6月28日(火)に、sunabarコミュニティイベント#17 保険×銀行 業界クロストーク「組込型保険×組込型銀行の未来!」を開催しました。

組込型金融(エンベディット・ファイナンス)を構成する事業領域を大きく分けると、銀行、保険、決済、貸付、投資の5つに区分されます。
今回のsunabarイベントは、そのうちの一つである保険業界で、Insurance as a Service (IaaS)の実現を目指すGuardTech検討コミュニティの温水淳一氏(三井住友海上火災保険株式会社)と、岸和良氏(住友生命保険相互会社)をゲストにお迎えし、銀行と保険業界における組込型金融事例や組込型金融によって新たに創造される顧客体験、今後のAPIの可能性などを語り合いました。

本レポートではイベント内容の一部をご紹介します。(司会:当社 執行役員 企画・事業開発グループ長 小野沢 宏晋)

温水 淳一 氏
温水 淳一 氏三井住友海上保険株式会社/GuardTech検討コミュニティ 発起人・事務局

2018.10頃より、銀行APIに関心を持ち、保険業界におけるオープンAPI普及をめざした活動を開始
2019.4 有志5名で保険APIワークショップ設立
2019.9 同ワークショップを一般社団法人 Fintech協会・保険分科会に継承
2019.10 有志5名でGuardTech検討コミュニティ設立
<社歴>
1989.4 住友海上火災保険株式会社(現三井住友海上火災保険株式会社)入社 主に関連会社でシステム開発を担当
2018.4 一般社団法人 日本損害保険協会(損保協会)出向
2021.4 三井物産インシュアランス株式会社 出向
三井住友海上保険株式会社:https://www.ms-ins.com/
GuardTech検討コミュニティ:https://www.facebook.com/groups/683922625714856

岸 和良氏
岸 和良氏住友生命保険相互会社 理事 デジタルオフィサー

システム企画などを担当後、2016年より健康増進型保険“住友生命「Vitality」”を担当し、2021年より現職。デジタル戦略の立案・執行、社内外のDX人材の育成活動などを行う。
株式会社豆蔵デジタル担当顧問、株式会社NODE客員Director、株式会社経済産業新報社顧問、株式会社ネクストエデュケーションシンク最高デジタル担当顧問
住友生命保険相互会社:https://www.sumitomolife.co.jp/

事例で見る「組込型銀行」と「組込型保険」

組込型金融(エンベデッド・ファイナンス)とは、非金融事業者のサービスに、銀行機能などの金融サービスを組み込んで提供することです。アプリケーションや会社の経理機能そのもののフローに金融サービスを組み込むことで、処理の簡略化、コストダウン等が見込まれます。また、新サービスを開発したい事業者にとっては、そのサービスの世界感を壊すことなく金融サービスを組み込むことができ、新しい顧客体験を提供することもできます。

まず当社組込型金融プロダクトチーム長の岩田 充弘から「組込型銀行」の事例を紹介しました。

岩田 充弘(以下、岩田)「ライバー(ライブ配信者)の方が配信を終えたあと、視聴者から受け取った有料ギフト(投げ銭)を即時に報酬としてもらえる仕組みです。銀行APIを使って振込を自動化しておくことで、昼夜を問わず24時間365日、報酬を受け取ることができます。組込型銀行によって顧客体験が変わった事例のひとつで、効率化以上のお金の新しい体験が生まれました。」

岸 和良氏(以下、岸氏)「私はお客さまの体験が変わるものを、体験型消費やプロセス体験型消費と呼んでいます。体験に金融という価値が入ると商材の幅が広がりますね。事業者は収益を得て、お客さまは体験価値が高まります。他のサービスに銀行機能を組み込むことで、サービスがワンストップに一体化して便利になるという体験は、結局のところ顧客体験価値向上に繋がりますね。」

【組込型銀行の事例】ライブ配信サービスにおける報酬の即時振込

ライバーと呼ばれるライブ配信者は、ライブ配信中に視聴者からギフトを受け取ることができます。ライバーはギフトの換金が可能ですが、振込に時間を要していました。銀行APIを導入して経理処理を簡略化することで、ライバーへの即時振込が可能になりました。

参考情報:
API接続サービスご利用事例

続いて、「組込型保険」の事例を紹介していただきました。

岸氏「6月の異常な暑さの中、満を持して発売されている「熱中症お見舞金保険」を紹介します。私がアイアル少額短期保険をはじめとした住友生命グループのデジタルチームメンバーと作ってきたものです。ご加入者の中でも特にお子さまの加入が多く、お申込み全体の約25%を占めています。暑い中でのマスク着用や、クラブ活動などの熱中症リスクの備えとして、「お守りとして良いよね!」という声もいただいています。苦労して作りましたが、我々としても得られるものがありました。」

岩田「熱中症お見舞金保険」について、実は組込型銀行も一翼を担っていまして、保険金の支払いに当社の銀行API(振込依頼API)を採用いただいております。契約者さまが熱中症になってしまった場合、振込手続きを自動化し、最短で即日のお支払いが可能です。」

岸氏「熱中症お見舞金保険は保険料が安いので、できるだけコストを抑える必要がありました。送金についてネットで検索したところ、「GMOあおぞらネット銀行」がヒットしました。実際に話を聞くととてもリーズナブルでした。今では、決済処理といえばGMOあおぞらと言っています。組込型保険に組込型銀行ありってことですね。」

小野沢「銀行APIがお金の流れについてのDXパーツとしてフィットした、ということですね。」

【組込型保険の事例】熱中症お見舞金保険

決済サービスPayPayアプリ内で提供されている「PayPayほけん」の専用商品。保険料が1日100円からという低価格も相まって、簡単かつ手軽に加入が可能です。当社の銀行APIもサービスの一翼を担っています。

参考情報:
【インシュアテック実現事例】「熱中症お見舞金」保険の最短請求当日支払いを「かんたん組込型金融サービス」が支えています!

小野沢「温水さんからも組込型保険の事例をご紹介いただけますか?」 

温水 淳一 氏(以下、温水氏)「保険業界では、簡易でショートレンジな保険を取り扱う少額短期保険(ミニ保険)というジャンルが存在します。もとは無認可共済(法根拠のない共済)の受け皿としてできた制度ですが、今では組込型保険の実験場のようになっており、いわゆるイネーブラーと呼ばれるテックプレイヤーがクラウド型のサービスを提供しています。そのなかで、現在積極的に少額短期保険を展開しているFinatextさまの例を二つご紹介します。」

温水氏「一つ目は「サービス組み込み用キャンセル保険」です。イベントや飲食店で何らかのアクシデントでキャンセルが生じた場合のキャンセル料を保障します。二つ目は「母子保険はぐ」です。妊娠中の様々なリスクに対する保障で、妊娠中はお母さん、出産後はお母さんとお子様と、被保険者(保険がかけられている人)が一人増えるというユニークな保険です。革新的な商品であることが評価され、いずれの保険も日本少額短期保険協会の「少額短期保険大賞」を受賞しています。」

【組込型保険の事例】少額短期保険(ミニ保険)

・サービス組み込み用キャンセル保険(Finatext)
さまざまな事前予約型サービスのキャンセル料の補償を、サービスに組み込んだかたちで提供できる事業者向けソリューション。

参考情報:
Finatext、あいおいニッセイ同和損害保険が出資するスマートプラスSSIと共同で「サービス組み込み用 キャンセル保険」を提供開始

・母子保険はぐ(Finatext)
産前産後のママと生まれた赤ちゃんの為の少額短期保険サービス。

参考情報:
母子保険はぐ

保険と銀行 “UX(顧客体験)”の違い

それぞれの事例が出揃ったところで、保険と銀行のUXの違いについてのディスカッションが行われました。

岩田「銀行も40年ほど前は振込を対面窓口で行う必要がありましたが、ATMができ、2000年代以降はネット銀行ができたりと利便性においての変化は感じています。しかし現在、価値観はさらに多様化し、求めることの種類も増え、個々の顧客ニーズもさらに細分化されたなかで、銀行のWebサイトを見ると、めったに使わない機能も含め、全てのメニューが誰に対しても同じように並んでいるため、個々のニーズを捉えられていないとも感じています。一方で保険は、個々の顧客ニーズをしっかりと拾い、様々なオプションを付けるなど、商品性に反映させています。この数十年で培ったたゆまなき努力の差が、銀行と保険の違いとして明確に表れているように感じます。」

銀行業界の視点から顧客ニーズに対してのUXの違いを語った岩田に対し、保険業界の温水氏からは、トランザクション(取引)数と顧客接点の頻度の差がUXの違いを生んでいると語ります。

保険と銀行 “UX(顧客体験)”の違い

温水氏「保険と銀行の大きな違いは、トランザクション数と顧客接点の頻度です。決済は日常的に利用されている機能なので、トランザクションも顧客接点も膨大です。かたや保険の主な顧客接点は「加入」と「保険金の支払い」となります。さらに保険金の支払いは何か起こった時に限られるものですから、圧倒的に顧客接点の数が少ないです。また、保険は請求があった場合に、保険金の支払いが発生しますが、「査定」というプロセスが必要なことが多く、フリクションレスが難しいという違いもあります。」

温水氏「逆を言えば、組込型保険を進めようとする際、例えば保険の期間を短くした保険を用意して、トランザクション数を増やすことで、顧客接点の機会を増やすといった手段は考えられます。また、特定の条件に当てはまると査定無しに保険金が支払われる商品も存在します。例えば、PayPayほけん商品「フライト遅延保険」では、欠航や一定時間以上の遅延などの条件で保険金が振り込まれ、お客さまは圧倒的なスピードで保険金が手に入ります。このような保険商品であれば組込しやすいです。」

一方で岸氏は、保険のUXがデジタル中心になっていない点を挙げ、保険業界ではAPIの利用頻度がまだ少ない現状を語ります。

岸氏「現行の保険のシステムは顧客体験がデジタル中心になっていません。そもそも組込型保険は、他社のデジタル商品のサービスの中に保険が入り込んでいくので、APIが無いと話になりません。しかし保険商品の契約の多くは、代理店や営業所職員が紙で行っているため、APIをあまり必要としていません。そのため保険のシステムを変えていかないと、保険業界でのAPIのニーズは高まらないと考えています。」

小野沢「保険と銀行それぞれの、お客さまとの接点の違い・役割の違いが、組込型保険と組込型銀行の役割の違い・作るものの違いに直結しているとあらためて感じました。また、共有のキーワード「顧客体験」に対する強いこだわりも感じることができました。」

組込型金融のさらなる普及のため、保険と銀行ができることは?

最後に「組込型金融」と大きな枠組みで捉えた際に、保険と銀行がお互いに手を組むことで組込型金融をさらに発展させていく可能性や思いについてお聞きしました。

岩田「銀行は多数のものを効率的に捌くこと、保険は多様性を把握した上で、一人一人のお客さまに特化したサービスを提供することが得意だと感じました。お互いの業界の強みを掛け合わせることで生まれる可能性があるのではと感じました。」

温水氏「業界を超えて交わる機会を増やしたいです。普段、銀行の方と交わる機会が少ないですが、GuardTech検討コミュニティでは保険業界だけではなく、銀行や証券業界の人も多く在籍いただいています。その方々がリードしていろいろな意見を言ってくださり、保険業界としては非常に貴重な意見だと感じています。」

温水氏「また、メタバースにも注目しています。保険はリアル(現実空間)をベースとしていますが、実際にメタバースの中での保険として、DeFi保険と呼ばれるものがあります。パラメトリックにすぐ処理をするスマートコントラクト型の保険です。すべてデジタルで完結しているため、我々の悩みの種である査定がありません。バーチャルでブーストする可能性がある世界だと考えているので、銀行業界の人とさらに交わって、来たるべきWeb3の時代に保険APIをブーストさせたいと思っています。」

岸氏「私もメタバースやWeb3の文脈の「トークン」に興味がありまして、今は銀行が担っている決済のサービスと並列化するものとして、分散型組織をトークンのようなもので繋ぎ、それによってPtoP保険や人助けにクラウドファンディングをもっと戦略的に使っていくなどの可能性があると思います。」

岸氏「また、保険の中に銀行機能が組み込まれている事例はすでにいくつか存在しますが、今後はスタートアップの方たちと手を組んで何か作りたいです。銀行には法人口座もありますので、決済や融資といった金融機関としての銀行だけでなく、法人を繋いでいる一面もあると感じています。そういった繋がりが強まるとAPIはあたりまえの世界になり、組込型金融は今後もさらに進んで行くと考えています。」

※本レポートは2022年6月28日時点の情報です。

登壇者Twitter

  • 企画・事業開発グループ
    執行役員
    小野沢 宏晋

  • 企画・事業開発グループ
    組込型金融プロダクトチーム長
    岩田 充弘

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