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- ※ 本コラムの内容は執筆者個人の見解です。
#42会社設立で失敗したくない!注意点や一度は検討しておくべきことを徹底解説
自分の会社を設立するときは、「絶対に失敗したくない」と誰しもが思うでしょう。しかし、会社の設立手続きは煩雑なので、何から手をつけていいのか分からなくなる場合もあります。そこで今回は、会社を設立するときの注意点を詳しく紹介します。適切な会社の形態や金銭的なポイントなどもあわせてチェックしていきましょう。
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1.本当に株式会社がベストなのか
「会社を立ち上げるなら株式会社」と考えている人もいますが、設立手続きを進める前に、そもそも自分がやりたい事業について株式会社がベストな選択なのかを検討することが大切です。そこでこの章では、会社の形態ごとの特徴を解説します。
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1-1.個人事業主か法人か
事業を始めたいだけなら、個人事業主として活動する方法があります。会社を設立すると「法人」として扱われるため、「個人」よりも社会的な信用が得られます。しかし、会社になると個人事業主よりも維持費がかかります。例えば、会社は「法人住民税」の納税義務があります。この税金は会社の経営がどれだけ赤字でも、決算のタイミングで最低約7万円を納めなければいけません。また、会社は社会保険の加入が必須になるので、毎月社会保険料を支払う必要もあります。社長が1人で運営している会社でも社会保険の加入義務があり、従業員が社会保険に加入すれば、従業員の社会保険料も2分の1を負担しなければいけません。
しかし、会社を設立すると個人事業よりも信用力が高いことにより、上場企業や大手企業などと取引できる可能性があります。さらに、法人化すると経費に計上できる費用の種類の幅が広がります。例えば、社宅の費用や旅費日当なども会社の経費にできるので、節税効果が期待できる場合もあります。
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1-2.株式会社か合同会社か
初めて会社を設立する場合は、「株式会社」か「合同会社」のどちらかの形態を選択するのが一般的です。経営者と出資者が分離できるのが株式会社、経営者と出資者が同じなのが合同会社と覚えておきましょう。株式会社は合同会社と比べると、取引先などからの信頼度が得られることが多くなります。しかし、株式会社は設立時に必要な費用負担が大きいという側面もあります。法人登記にかかる費用の総額は、実費だけでも株式会社が約22万円から24万円、合同会社が約10万円です。合同会社は株式会社よりも低コストで設立できるだけでなく、経営の自由度が高いこともメリットとして挙げられます。株式会社と合同会社にはそれぞれメリットとデメリットがあるので、一概にどちらがよいとは言えません。会社を設立する前に「自社にどちらの形態が適しているか」を詳細に検討することが大切です。
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2.知っておきたい会社設立のお金に関すること
会社を設立するためにかかる費用が気になる人もいるでしょう。この章では会社の設立にかかる費用の項目や資本金の額などについて説明します。
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2-1.会社設立は何にいくらお金がかかる?
株式会社を設立する場合、必要な手続きをするだけでも総額24万円程の費用がかかりますが、内訳は次のとおりです。
- 定款の印紙代:4万円
- 謄本の交付手数料:約2千円(定款のページ数によって変わる)
- 公証人役場の認証手数料:3万円~5万円(資本金の額によって変わる)
- 登録免許税:最低15万円(資本金の0.7%)
定款の印紙代は紙ではなく電子で提出する場合、必要ありません。ただし、電子定款を利用するためにはICカードリーダライタなどの機器や電子署名用のソフトウエアが必要になります。持っていない場合は新たに購入しなければいけません。上記の費用のほかにも、会社を設立した後の当面の運転資金も必要になります。設備を充実させるための資金もかかるでしょう。したがって、会社を設立するためにはある程度まとまったお金が必要になるということです。
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2-2.融資を検討してみよう
会社を設立・運営するために必要な資金が足りないときは、金融機関からの融資を利用する方法があります。例えば、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」は会社を設立した段階から利用できます。ただし、こうした制度には審査があります。また、申込をしてからお金が手元に来るまでには、1カ月程度かかるので設立前から準備を始めるとよいでしょう。
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2-3.資本金はいくら用意する?
設立する会社の業種によって必要な資本金の額は異なりますが、一般的には百~1千万円を用意します。ルール上、資本金が1円でも会社を設立できますが、現実的ではありません。なぜなら、会社を設立したときの資本金は、当面の運営費になるからです。会社を運営していくために必要な人材や設備を用意したうえで、半年間は利益がなくてもやっていける程度のお金を資本金にするとよいでしょう。
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3.会社設立でやるべきことと注意点
会社を設立するときは、色々なルールを守って手続きを進める必要があります。そこでこの章では、会社の事業目的や商号を考えるときの注意点を詳しく紹介します。
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3-1.事業目的の注意点
事業目的とは、設立する会社で行う事業内容を定めたものです。事業目的は、「適法かどうか」「営利性があるか」「明確性があるか」を意識して設定します。なお、事業目的は定款に記載しなければなりません。設立登記をすると定款の内容は簡単に変更できないので、設立直後に始める事業だけでなく、将来的に挑戦したい事業も記載しておくようにしましょう。
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3-2.商号の注意点
商号とは、会社の名前のことです。商号は自由に決められますが、同じ住所に同じ商号の会社は設置できないので注意しましょう。また、希望の商号でネット上のドメインが取得可能であることもあらかじめチェックしておくとよいでしょう。
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4.設立後にすべきことも知っておこう
会社を始めるためには、設立手続きが終わってもやるべきことがたくさんあります。具体的にどのようなことが必要なのかを解説していきます。
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4-1.役所や税務署に届け出をする
会社の設立手続きが終わったら、本店を管轄する都道府県や市町村の役場や税務署に必要な届出を提出しましょう。都道府県や市町村の役場は基本的に「法人設立届出書」だけですが、税務署はたくさんの届出が必要です。具体的には、次のような書類があります。
- 法人設立届出書
- 青色申告の承認申請書
- 源泉所得税の納金の特例の承認に関する申請書
- 給与支払事務所等の開設届出書
また、上記のほかにも「棚卸資産の評価方法の届出書」や「減価償却資産の償却方法の届出書」の提出が必要な場合もあるので覚えておきましょう。また、定款の記載次第では「申告期限の延長承認申請書」も提出しておいたほうがよいでしょう。提出する書類のコピーを取っておくと、いつでも内容を確認できます。提出前に書類一式コピーを取っておきましょう。
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4-2.法人口座を開設する
社長の個人口座を会社用として使う方法もありますが、法人名義の口座を開設するのがおすすめです。なぜなら、会社で使っている口座が個人名義だと、取引先の顧客やなどから不信感を抱かれる可能性が高いからです。法人口座を開設すると資金管理もしやすくなるので、会社の設立手続きが終わった段階で申し込むとよいでしょう。
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後悔しないよう慌てずよく検討しよう
会社の設立をずっと夢見ていた人の中には、「早く会社として活動したい」と強く思う人もいるでしょう。しかし、会社を設立すると非常にたくさんの手続きを間違えないようにこなす必要があります。自分の会社を立ち上げるからには、後悔しないように落ち着いて漏れなく手続きを進めることが大切です。今回紹介した内容を参考に、納得できる進め方で会社設立に臨みましょう。
- ※ 本コラムは2022年10月11日現在の情報に基づいて執筆したものです。
- ※ 本コラムの内容は執筆者個人の見解です。
GMOあおぞらネット銀行の法人口座について詳しくはこちら
執筆者情報
V-Spirits グループ代表
税理士・社労士・行政書士・CFP®
中野 裕哲 監修
■起業コンサルタント®、税理士、特定社労士、行政書士、CFP®。V-Spiritsグループ代表(税理士法人・社会保険労務士法人・行政書士法人・株式会社V-Spirits/V-Spirits会計コンシェル・給与コンシェル・FPマネーコンシェル・経営戦略研究所株式会社)。
年間約300件の起業相談を無料で受託し、起業家をまるごと支援。経済産業省後援 起業支援サイト「DREAM GATE」で11年連続相談数日本一。著書・監修書に『一日も早く起業したい人がやっておくべきこと・知っておくべきこと』(明日香出版社)、『ネコ先生がやさしく教える 起業のやり方』(アスカビジネス)など、16冊、累計20万部超。
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