会社を設立するのに不可欠な資本金。現在は新会社法によって、資本金1円からでも株式会社や合同会社をを設立できるようになりました。しかし極端に少ない額でも会社の設立ができることで、かえって資本金をいくらにしたらいいのかと迷っている人もいるのではないでしょうか。本記事ではそもそも資本金とはどういったものかという概要や、資本金額の決め方について詳しく解説していきます。
目次
1.資本金の概要
この段落では資本金とはどういったものなのかなど、概要について解説していきます。
1-1.資本金とは?
簡単にいえば、資本金とは会社を立ち上げた時点で持っている自己資本のことです。会社法では第445条第1項で「株式会社の資本金の額は、設立又は株式の発行に際して株主となる者が、当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額とする」と定められています。特長としては、同様に資金調達の手段である借入金では返済義務が生じるのに対して、資本金には返済義務がないことが挙げられます。かつては、株式会社を設立するには最低1千万円の資本金が必要と旧商法によって定められていました。これは、その会社に出資する人々を保護する目的で作られた制度でした。
しかし、実際にはその制度が会社設立時の負担であることが問題視され、2005年に定められた会社法によって、最低1円から設立することができるようになりました。これにより、会社を立ち上げるハードルは大きく下がることになりました。一方で、特に会社設立当初は、資本金は会社の体力を示すバロメーターでもあるため、社会的信頼を得るためには極端に少ない金額はマイナスに機能することがあることに留意すべきでしょう。
1-2.よく似ている資本準備金とは?
株式会社の場合は、株主に対して株式を発行し、それに対して支払われた出資額が資本金となるというのが会社法の定義ですが、同様に会社法第445条第2項では「株主から集められた資金は任意で2分の1を超えないことを条件に資本金として計上しないこと」が認められてもいます。この場合の資本金として計上しなかった金額が、資本準備金です。逆にいえば、「株主が出資した額で資本金以外のものは資本準備金として計上しなければならない」と、同法第445条第3項で定められています。株主が出資した金額は必ず資本金か資本準備金のどちらかになるのです。
資本金ではなく資本準備金として計上しておくメリットは、欠損てん補など一定の場合に取締役会の決議で行えるという点があります。
1-3.資本金の使い道は?
資本金は会社の経費として使うために株主から調達したお金です。そのため、会社に必要なものを購入するために利用するのであれば使い道に制限はありません。一般的には設立して間もない会社の場合、オフィスレンタル・備品発注などの初期投資や仕入、売上が入るまでの給与の支払といった運転資金に充当されることが多いようです。また、一般的に出資は金銭で行われますが、金銭以外のパソコンなどの備品を時価で出資して資本金とすることも可能です。個人事業から法人へ組織変更を行う場合などは、この方法もよいでしょう。ただし、現物出資の財産の総額は5百万円以下とされています。
1-4.資本金の平均額は?
一般的には初期費用分と3カ月から6カ月分の運転資金が目安といわれています。資金調達は資本金だけではなく金融機関からの借入金による方法も並行して行われることがほとんどですが、その金融機関が融資を引き受け、実行するためには事業計画書の提出が必要です。銀行としても資本金が少なければ倒産のリスクが高いと判断するため、希望の金額を融資してくれない場合が考えられます。銀行から信頼を得ることを考えると、1百万円程度の資本金で会社を設立するケースが多いようです。
初期費用や必要運転資金を抑えれば資本金を少なくすることも可能ですが、業種によっては許認可に必要な資本金の最低ラインが設けられており、一概にこの金額と断言することが難しいのが現状です。
2.資本金額は可能であれば多く出した方が良い
資本金額は会社の体力、ひいては事業の健全性を客観的に示すバロメーターです。多くの資本金を用意できるに越したことはありません。しかし、1千万円以上の場合は節税の観点から考えてマイナスになってしまうことがあります。この段落ではその理由について説明します。
2-1.取引の信用が増す
資本金は会社の体力を表すため、資本金が極端に少ないと取引の信用性に欠けることがあります。どんな会社でも倒産するかもしれない会社とは、取引をしたくないのは当然のことです。資本金は、法務局に行けば誰でも確認することができます。その資本金が極端に少ないということは、それだけで取引相手にとってはマイナスの評価となっている可能性があります。特に上場しているような大きな会社ほど、専用の与信チームを編成するなど、新規取引先の会社の信用面に対して厳しく審査する傾向があります。資本金を極端に少なくしたり、増資を行ったりする場合は必ず登記を怠らないようにするなどの注意が必要でしょう。
2-2.金融機関への信用が増す
資本金が少ないと銀行などの金融機関から融資を受けるときにも不利に働くことがあります。銀行からすると、資本金が少ない会社は自己資金が少ない会社であり、倒産のリスク、ひいては貸したお金が返ってこないリスクがあるからです。融資を受ける際は、事業計画書を作成する必要があり、これには自己資金を記入する欄があります。もちろん、嘘を書いてしまえば詐欺になります。この金額は融資額の基準にもなりますので、自己資金、すなわち資本金は金融機関への信用という点からも多い方が良いです。
2-3.許認可を受けるために必要な場合も
資本金を設定するうえで気を付けなくてはならないことは、事業の中には行政から許認可を受けなければ始められないものが存在するということです。この許認可を必要とする事業の中には、必要最低の自己資金額が定められているものがあります。例えば、建設業一般では、自己資金は5百万円以上が許認可の取得のために必要で、スムーズに創業するためには、資本金で必要金額を満たしておくことが望ましいといえるでしょう。
2-4.税制の観点からは1千万円未満が有利
資本金を1千万円未満に抑えることが、税制上有利である理由は大きく2点あります。まず資本金1千万円未満の企業の場合、創業してから2年間の消費税が免税となります。(※ただし、適格請求書発行事業者は免除されません) 逆に、資本金が1千万円以上の場合、1年目から納税の義務が生じます。消費税は赤字であっても発生する税金のため、2年間免税となることは、資金繰りのうえで大きなメリットがあるといえます。
次に「法人住民税均等割」が安くなることが挙げられます。会社設立後は、法人税、法人県民税、法人市民税が発生しますが、このうち法人県民税と法人市民税を合わせて、法人住民税といいます。法人税は、赤字の場合は発生しませんが、法人住民税の場合は、均等割というものを会社が赤字でも、毎年一定額を支払わなければなりません。この法人住民税の均等割の金額は、従業員が50名以下かつ資本金が1千万円以下であれば7万円ほどですが、1千万円を超えていた場合は、18万円ほどを支払う必要があります。この点から見ても、大きな理由がなければ、資本金は1千万円以下に抑えるべきであるといえるでしょう。
まとめ
本記事では、資本金とは何か、どのように決めればよいかについて解説しました。資本金のポイントは大きく分けて信用面と税制面があり、総合すると1千万円以下で調達できる範囲で、できるだけ多くの金額を用意することでメリットが大きくなります。ただし許認可によって、必要最低ラインが存在することもありますので、税理士などの専門家と相談し、事業計画を立てながら決めることで、リスクを軽減することができるでしょう。
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※ 本コラムは2022年1月17日の情報に基づいて執筆したものです。
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