
社員用の法人カードを発行することで、個々の経費精算業務を効率化し、会社全体の経理管理をスムーズにできます。
一方、社員にカードを渡すことによる不正利用のリスクや、管理工数の増加といった課題もあるため、適切なルール設計が不可欠です。本記事では、社員用法人カードの発行可否、メリット・デメリット、管理のポイントを分かりやすく解説します 。
目次
1.社員用の法人カードを発行できるのか
社員用の法人カードは、企業が従業員に貸与し、業務経費の支払いに利用する法人向けの決済カードの総称です。後払いのクレジット方式だけでなく、即時引落のデビット方式なども含みます。
法人カードの発行には、法人や代表者を対象に審査が行われ、契約後は会社全体で利用できる金額の範囲内で、社員ごとにカードを追加発行することができます。その際、従業員の個別審査は不要です。
社員用カードの利用情報は、会社で一元管理できるため、経費精算の手間を削減し、会計処理が効率化します。ただし、社員による不正利用を防ぐ必要もあり、利用範囲や限度額を明確に定めた社内ルールの策定が欠かせません。
なお、カード会社によっては追加カードの枚数に制限があったり、発行そのものをしていなかったりする場合もあります。適切に運用すれば、経費管理と内部統制の両立を実現できるでしょう。
2.社員用の法人カードを発行するメリット
社員用の法人カードを発行する主なメリットには、下記の4点が挙げられます。
2-1.経費精算業務の効率化につながる
社員用の法人カードを利用することで、社員は経費をカードで直接支払えるようになり、立て替えや精算の必要がなくなります。
領収書の回収や経費申請書の作成といった手間も大幅に減るでしょう。また、カードの利用明細は自動で記録・集計されるため、経理担当者が手動で入力する作業も不要になります。
これにより、経費精算にかかる時間を短縮でき、ミスの防止にも効果的です。定型業務が減ることで経理部門は、より高度化が求められる業務に集中でき、企業全体の生産性向上にもつながります。
2-2.経費精算の透明性が上がる
社員用の法人カードを導入すると、すべての取引がカード明細として自動的に記録されるため、誰がどのような目的で経費を使ったのかを簡単に把握できます。これにより、経費の透明性を高めることができます。
社員自身も支出内容を確認できるため、コスト意識が向上し、不要な出費を防ぐ効果も期待できるでしょう。経理・承認のプロセスも明確になることで、処理のスピードと正確性を両立しやすくなります。
2-3.キャッシュフローの改善につながる
クレジット型の社員用の法人カードは、利用から支払いまで一定の猶予期間があるため、現金払いよりも資金繰りに余裕を持たせることができます。出張旅費などの立て替え精算を行う必要もないため、資金の流出を抑えることが可能です。
利用データも自動で集約されるため、経理部門は支出状況を迅速に把握でき、資金計画や予算管理を正確に行いやすくなります。ポイント還元やキャッシュバックが得られるカードを選べば、経費削減にも効果的です。
2-4.社員の負担が軽減する
従来の経費精算では、領収書の整理や申請書の作成、上長承認など、社員に多くの手間がかかっていました。社員用の法人カードを導入することでこれらの作業が自動化・簡素化され、現場での負担を大幅に軽減できます。
また、経費がリアルタイムで可視化されるため、社員は自分の支出状況を把握しやすく、申請漏れや二重申請の防止にもつながります。経理とのやり取りもスムーズになり、社員が本来の業務に集中できる環境も整うでしょう。
3.社員用の法人カードを発行するデメリット
社員用の法人カードは便利な反面、管理体制によってはリスクを招く可能性もあります。ここからはどのようなデメリットがあるか見ていきましょう。
3-1.不正利用や私的利用のリスクが高まる
社員用の法人カードを発行すると、業務外での利用といった不正利用リスクが生じます。意図的な悪用だけでなく、誤って私的な支払いをしてしまうケースも少なくありません。
利用履歴の確認を怠ると、業務経費との区別が難しくなり、経理上の混乱を招くおそれがあります。
そのため利用範囲や限度額、承認フローを明確に定め、定期的に利用状況をチェックすることが大切です。社員への周知と教育を徹底することで、リスクを最小限に抑えられます。
3-2.経費管理の複雑化と工数が増加する
複数の社員が、同一の法人カードを利用すると、各社員の利用状況や経費の内容を把握するための管理工数が増加します。経理部門は、より多くの時間とリソースを費やすことになり、結果として業務の効率が低下する恐れがあります。
また、社員ごとに異なる利用目的や金額が発生するため、経費の分類や承認プロセスが煩雑になります。経費精算の承認にかかる時間が長くなり、経理業務全体のスピード感が損なわれることも考えられます。
3-3.退職時の対応や紛失・盗難時の手続きが煩雑になる
社員が退職する際は、カードの返却と利用停止手続きを確実に行う必要があります。これを怠ると退職後に不正利用されるリスクが生じ、会社が損害を被るおそれがあります。
また、紛失や盗難が起きた場合も、速やかにカード会社へ連絡して利用を停止し、必要に応じて警察へ届け出るなど迅速な対応が不可欠です。
再発行や報告書の作成などにも手間がかかるため、緊急時の対応手順をあらかじめ定めておくことが大切です。
4.社員用に追加発行した法人カードを適切に管理するポイント
社員用の法人カードを発行する際には、適切な管理が求められます。理解しておきたいポイントを5つご紹介します。
4-1.利用範囲を定めておく
社員用の法人カードを安全に運用するには、利用できる範囲を明確に定めておくことが必要です。業務に関連する経費のみに限定し、出張費・交際費・備品購入など具体的な対象を示すことで、私的利用を防止しましょう。
あらかじめ利用ガイドラインを作成し、社員に周知することも重要です。利用履歴は定期的に確認し、ルールの見直しを細かく行えば、社内全体で透明性の高いカード運用が実現します。
4-2.利用限度額を設定する
社員用の法人カードを追加発行する際は、社員ごとに利用限度額を設定しておくことで、不正利用や予期しない高額支出を防ぐことができます。
多くの法人カードでは、カードごとに個別の限度額を設定・変更できるため、社員の職務内容や支出頻度に合わせた柔軟な運用が可能です。
例えば、営業職には出張費や接待費を考慮した金額を、一般職には日常経費に見合った範囲を設けるなど、適切に設定しましょう。
4-3.必要以上に発行しない
社員用の法人カードは、必要な範囲にとどめて発行することが大切です。カードの枚数が増えるほど利用状況の把握や、紛失・盗難時の対応が複雑になり、管理負担も大きくなります。
出張や購買など、実際にカードが必要な社員や部署に限定して発行すれば、リスクを抑えながら経費処理を効率化できます。さらに、定期的に発行状況を見直し、不要になったカードを回収・停止することで、安全でシンプルな運用が可能になります。
4-4.使用時だけ持たせる
法人カードを必要なときだけ貸与する「使用時運用」も効果的です。出張やイベントなど、特定の業務でのみカードを使用させ、利用後は速やかに返却してもらうルールを徹底しましょう。この方法により、不正利用や紛失・盗難のリスクを大幅に軽減できます。
また、使用時に申請や承認を必須とすることで、利用目的と支出内容が明確になり、経費精算の透明性が高まります。常時携行を避けることで、より安全で管理しやすい運用が実現します。
4-5.パーチェシングカードを利用する
パーチェシングカードは、特定の用途や支払先に限定して使える法人カードの一種です。備品購入やオンライン決済など、利用目的を明確に設定できるため、社員の自由利用を防ぎながらスムーズな支払いが可能です。
パーチェシングカードは、利用限度額や取引先を細かく設定でき、決済履歴も一元管理できることから、経理業務の効率化にもつながります。特に定期的な購買やクラウドサービス等の支払いに適しており、安全性と利便性を両立できる運用方法です。
パーチェシングカードと同様の仕組みで、より柔軟に利用先を限定できる機能があるデビットカードも登場しています。
5.社員用カードの課題を解決する「機能制限付きデビットカード」という選択肢
ここまで、社員用カードを適切に管理するためのポイントを解説しました。しかし、社内ルールを徹底するには継続的な教育や管理コストがかかり、担当者の負担は少なくありません。
そこでおすすめしたいのが、社内ルール(性善説)に頼るのではなく、カードの機能(仕組み)で物理的に利用を制御するという考え方です。
例えば、GMOあおぞらネット銀行の「サブカード」(ビジネスデビットカード)は、
・最大9,998枚まで発行可能
・カードレスタイプなら年会費・発行手数料無料で発行可能
・Mastercard / Visaの国際ブランドの選択が可能
さらに、以下の機能も標準搭載しています。
このように、機能制限付きのビジネスデビットカード(サブカード)は、経費精算の効率化というメリットと、企業が抱える管理・統制の課題をテクノロジーで解決する、まさに次世代の社員用カードと言えるでしょう。
まとめ
社員用の法人カードを発行することは、経費精算業務の効率化や透明性の向上、キャッシュフローの改善など、多くのメリットをもたらします。
社員が自ら経費を立て替える必要がなくなることで、経理業務の負担が軽減され、迅速な経費処理が可能になりますし、経費の流れが明確になり透明性も高まります。
しかし、社員用の法人カードの発行には注意点も存在するため、企業のニーズや状況に応じて慎重に判断する必要があります。メリットとデメリットをしっかりと理解し、適切な管理方法を取り入れることで、法人カードの利点を最大限に生かしましょう。
※本コラムは2026年1月30日現在の情報に基づいて執筆したものです。
※当社広告部分を除く本コラムの内容は執筆者個人の見解です。

