
法人カードとは、企業や個人事業主が経費支払いを効率化するために発行するクレジットカードです。社員の立替精算を減らし、経理処理を自動化するなど、多くの業務改善効果が得られます。さらに、ビジネスに特化した付帯サービスやポイント還元も魅力です。
法人カードには後払いの『クレジットカード』と、即時払いの『デビットカード』がありますが、本記事では主にクレジットカードを中心に、そのメリット・デメリットから選び方のポイントまで詳しく解説します。
目次
1.法人カードとは
法人カードとは、企業や個人事業主が経費支払いを効率化するために発行されるクレジットカードのことです。一般的なクレジットカードと同様に商品やサービスの購入時に利用できるほか、法人特有の機能やサービスが付帯されている点が特長です。
法人カードは、経費の管理を一元化するための強力なツールです。例えば出張費や接待費、消耗品の購入などさまざまな経費を法人カードで支払うことで、経理担当者は領収書の整理や精算業務にかかる手間を大幅に削減できます。
また、法人カードにはビジネスに特化した付帯サービスが用意されていることが多く、旅行保険や出張手配システムなど企業活動をサポートする機能が充実しているカードもあります。
2.法人カードのメリット
法人カードを利用することで得られるメリットは多岐にわたります。代表的な利点を5つご紹介します。
2-1.経理作業がスムーズになる
法人カードは社員の立替精算を減らし、利用明細を経費精算システムへ自動連携できます。これにより手動入力の手間や転記、申請入力間違いなどのミスが削減され、経理担当者・申請者双方の業務負荷が軽くなります。
例えば、カード利用明細をクラウド経費精算システムに取り込むと、ごく短期間で反映されるため処理が迅速化します。経理作業の効率化が実現し、企業の業務運営もより円滑に進むでしょう。
2-2.ガバナンス強化につながる
法人カードは全取引が利用明細として記録されるため、「誰がいつどこで何に使ったか」が可視化され、不正利用防止に役立ちます。
さらに利用限度額や運用ルールを設定できるため、内部統制が強化され、監査への対応や経費制度の整備にも貢献します。経費申請書類の電子化が進むことにより、書類のペーパーレス化も進むでしょう。
2-3.経費とプライベートの出費を分けられる
法人カードを事業専用にすることで、プライベートの支出との切り分けが明確になり、会計処理・税務申告・帳簿整理がしやすくなります。利用明細には取引内容が詳細に記載されるため、事業支出だけを正確に計上できます。
経費とプライベート出費の混在による誤計上や税務リスクを減らし、スムーズな経理処理が可能になります。経費の透明性が高まることで企業の信頼性も向上し、経営の健全化に寄与します。
2-4.キャッシュフローが明確になり改善につながる
法人カードを利用すると決済から引き落としまで猶予期間が生まれ、支払いタイミングが一定期間先延ばしできます。このことから資金繰りが計画的にできるようになります。
企業は経費支出の時系列を把握しやすくなり、キャッシュフローが明確化されます。月次・年次の予算管理やコスト分析も可能になり改善につながるでしょう。経営者はより戦略的に資金運用できるようになるなど、経営の健全性も高まります。
2-5.ビジネスに関連した付帯サービスを利用できる
法人カードの魅力は、ビジネスに特化したさまざまな付帯サービスを利用できる点にもあります。例えば、付帯特典には出張保険や法律相談、ビジネスサポート、提携施設の優待などがあります。
このほかにも、海外出張の際に使えるキャッシングサービスやリザベーションサービスを備える法人カードもあり、ポイント還元やマイル制度などを活用することも可能です。特に経費が多く発生する企業では、付帯サービスは経営の支援ツールとして有効なものとなるでしょう。
3.法人カードのデメリット
法人カードは多くのメリットを提供しますが、同時に下記のようなデメリットも存在します。
3-1.年会費がかかる
法人カードは、カードのグレードなどによって年会費が発生することが一般的です。年会費は数千円から数万円で設定される場合が多くありますが、カード会社によっては初年度は無料、2年目以降は数万円ずつかかるケースもあります。
小規模事業者や創業初期の法人にとっては、法人カードの年会費がコスト負担になり得るため、コストとメリットのバランスを見極めて選択することが重要です。
ただし、年会費無料のカードや、同じく年会費無料で利用できるビジネスデビットカードも存在します。
3-2.運用ルールを作る必要がある
法人カードを導入する際は、社内で利用目的や上限額、利用者の範囲などを明確に定め、社員へ周知し教育することが大切です。
不適切な利用や私的支出の混入を防ぐためにも内部統制を整備し、定期的に利用状況をチェックしましょう。運用ルールがあいまいだと不正利用や無駄な支出が発生する恐れもあり、経理処理が煩雑になるリスクが高まります。
3-3.利用可能枠で経費を払いきれない可能性がある
法人カードは、発行時の審査やカードグレードなどによって利用限度額(総枠)が決まります。例えば、ある法人カードでは10万円〜数百万円の範囲で設定されるものがあります。
ただし、突発的に高額な経費が発生すると、限度額を超えてしまい利用できなくなるケースもあります。限度額が不足すれば立替精算が再び必要になったり、ほかの支払い手段を検討したりしなければならない手間も生じるため、利用額には注意が必要です。
利用枠が足りない場合は増枠申請も可能ですが、口座残高まで利用できるビジネスデビットカードであれば、高額な決済にも対応しやすくなります。
4.法人カードの注意点
法人カードを利用する際には、下記の注意点を踏まえる必要があります。
4-1.不正利用防止のルール作りに手間がかかる
法人カードは企業の経費を一元管理できる便利なツールですが、その反面、適切な運用がなされないと不正利用のリスクが高まります。
法人カードの利用は業務に関連する支出のみを許可する、特定の業種やサービスに限定するなど、導入までに利用目的や利用範囲を明確化したルール作りを行いましょう。
ルール作りは手間がかかりますが、利用状況を定期的にチェックすること、異常な取引がないか確認する体制を整えることも含め、早めの周知徹底が肝心です。
4-2.追加カードの枚数に上限がある
法人カードは、発行会社やカードの種類によって追加カードの上限が決まっています。少人数の会社なら問題ありませんが、社員が多い場合は上限に達してしまうことも考えられます。
このため、カード会社を比較して必要な人数分を発行できるかあらかじめ確認しておくと安心です。また、追加カードには年会費が発生する場合もあります。追加カードの管理体制も、社内で整えておきましょう。
4-3.社内浸透のサポートが必要になってくる
法人カードを導入しても、社員が使い方を理解していなければ活用しきれません。利用方法や経費精算の流れを丁寧に説明し、わかりやすいマニュアルやFAQを整備することで、スムーズに定着します。
また、導入後は使い勝手に関する意見を集め、運用ルールを見直していくことも大切です。社内での理解が進むほど、法人カードの便利さを最大限に活かすことができるでしょう。
5.クレジットカードのデメリットが気になるなら「ビジネスデビットカード」も選択肢に
ここまで法人カード(クレジットカード)のメリットや注意点を解説してきましたが、「審査に通過できるか不安…」「社員の使いすぎが心配…」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。
そのような場合、「ビジネスデビットカード」という選択肢が非常に有効です。
ビジネスデビットカードは、利用すると銀行口座から即時に引き落とされるカードです。クレジットカードのように後払いの「与信(信用)」を必要としないため、以下のようなメリットがあります。
・与信審査不要:設立間もない法人や個人事業主でも、銀行口座があれば発行しやすいのが大きな特長です。(※ただし、ビジネスデビットカードは法人口座に付帯されているため、法人口座開設の審査があります)
・使いすぎを防ぎ、予算管理がしやすい:利用限度額が「口座残高」のため、意図しない借入や予算オーバーを防げます。
・キャッシュフローの把握が容易:利用したその場で引き落とされるため、リアルタイムでお金の流れを管理できます。
経費精算の効率化や公私分離といった法人カードの基本的なメリットは享受しつつ、クレジットカードのデメリットを解消できるのがビジネスデビットカードの魅力です。
例えば、GMOあおぞらネット銀行のビジネスデビットカードは、
・使った分だけおトク!利用額の通常1.0%(※1)をキャッシュバック
・年会費永年無料、発行費用無料(※2)
・従業員用にもピッタリ!最大10,018枚発行可能(※3)
・入出金明細で加盟店名も表示されるので会計ソフト上でも自動で仕分け可能
といった特長があり、キャッシュフローを重視する多くの企業様にご利用いただいています。 クレジットカードの審査や管理に懸念がある場合は、ぜひビジネスデビットカードをご検討ください。
※1:税金や公共料金など一部キャッシュバック率が異なる利用先がございます。キャッシュバック率の詳細はこちら
※2:代表口座のビジネスデビットカードを口座開設申込時に発行する場合は無料ですが、口座開設後に追加発行する場合は1,100円(税込)がかかります。また、追加口座のビジネスデビットカードを発行する場合は1,100円(税込)がかかります。(振込料金とくとく会員の場合は追加口座のビジネスデビットカードの発行手数料はかかりません。)なお、追加口座の開設には所定の審査がございます。
※3:デビット付キャッシュカード(最大20枚)とサブカード(最大9,998枚)の合計枚数です。サブカードを利用するには申込が必要です。ご注意ください。
6.法人カードを選ぶときのポイント
法人カードを選ぶ際には、自社の規模や利用目的に合ったカードを選ぶことが大切です。重要なポイントをご紹介します。
6-1.審査の通過率が高いか
法人カードの審査は、企業や個人事業主の信用情報をもとに行われます。設立年数や売上、業種などが基準となるため、設立間もない会社や新規事業では審査がやや厳しくなることもあります。
特に設立間もない企業の場合、与信審査があるクレジットカードはハードルが高いことがあります。その際は、与信審査が原則不要なビジネスデビットカードが有力な選択肢となるでしょう。
6-2.年会費が予算の範囲内か
法人カードには、年会費無料のものから数万円に及ぶものまで幅広いプランがあります。年会費が高いカードほど海外旅行保険などの付帯サービスが充実している場合が多く、利用頻度が少ないと割高になる可能性もあります。
このため、法人カードを選ぶ際は年会費が予算内に収まるかどうか、経費の使い方を考慮して選びましょう。年会費は経費として計上できるため、コストとサービスのバランスを意識することが大切です。
6-3.申し込みが簡単か
法人カードを導入する際は、申し込み手続きの手軽さも大事なポイントです。最近はオンラインで申し込みから発行まで完結できる法人カードが増えており、書類提出や審査の手間を減らすことができます。
審査や発行スピードが早いカードを選べば必要なタイミングで導入でき、すぐに経費精算を始められます。忙しい経営者ほど、手続きがシンプルな法人カードが便利です。
まとめ
法人カードは、企業や個人事業主にとって経費管理を効率化するための強力なツールです。経理作業のスムーズ化やガバナンスの強化、経費とプライベートの出費を明確に分けることができる点は、多くのビジネスにとって大きなメリットとなります。
ビジネスに特化した付帯サービスやポイント還元も魅力的です。一方で、法人カードには年会費が発生したり、運用ルールを整備したりする必要もあります。
法人カードを導入する際はこれらのメリットや注意点をしっかりと理解し、自社のニーズに合ったカードを選びましょう。
※本コラムは2025年12月30日現在の情報に基づいて執筆したものです。
※当社広告部分を除く本コラムの内容は執筆者個人の見解です。

