起業に関するお役立ち情報
- ※ 本コラムの内容は執筆者個人の見解です。
#44会社設立に必要な要件は?お金や人員はどれくらい必要になる?
初めて会社を設立する人の中には、設立に必要な要件が分からない人もいるでしょう。会社を設立するためには色々な手続きが必要ですが、中には絶対に抜けてはいけない要件もあるのでよく確認することが大切です。そこで今回は、会社の設立時に必要不可欠な要件について分かりやすく解説します。会社の設立にかかるお金や人員についても、あわせて紹介します。
-
1.そもそも本当に会社設立がベストなのか?個人事業主という選択肢
事業を起こす方法は、会社の設立だけではありません。わざわざ法人を設立しなくても、個人事業主として事業を運営する方法もあります。事業をスタートする場合は、安易に会社を起こすのではなく「個人事業主と法人のどちらで運営するべきか」をよく考えることが大切です。個人事業主と法人には、それぞれ違った特徴があります。具体的には、「将来的に大きく事業を拡大させたい」「従業員を雇いたい」「金融機関から融資を受けたい」という場合などは、法人の方が有利になることが多いです。
しかし、会社を設立するだけでも、まとまったお金や手間がかかります。また、設立してからも社会保険料で、費用負担が大きくなります。売り上げが大きくなった場合に節税面のメリットはありますが、「資金や手間をかけずに、まずは小さく事業を始めたい」という場合は、個人事業主として開業するとよいでしょう。個人事業主と法人のどちらが自分にとってメリットが大きいかを、詳細に検討するようにしましょう。
-
2.会社を設立するなら株式会社か合同会社かを検討
法人化を決めたら、会社の形態をどうするかを考えます。初めて会社を設立する場合は、「株式会社」か「合同会社」のどちらかを選択するのが一般的です。2つの会社形態の違いは、会社法上は「会社の出資者と経営者が分かれているかどうか」にあります。株式会社は出資者と経営者が別であるのに対して、合同会社は出資者と経営者が同じです。しかし、一人で出資してそのまま役員になるのであれば、どちらの形態も実質的には出資者と経営者が一致しているので変わりはありません。
また、株式会社と合同会社は設立時にかかる費用も大きく異なります。会社を設立するときの費用を単純に比較すると、合同会社の方が株式会社よりも金額的な負担が小さくなります。
設立するための手間もかからなくて済むのが合同会社の特徴です。このように説明すると合同会社の方がメリットがあるように思えますが、デメリットもあります。合同会社は株式会社よりも知名度が低いため、取引先の会社などから信用を得られない可能性があります。「時間やお金をかけずに済むから合同会社」と安易に決めてしまうのではなく、自社にとってどちらの会社形態を選択すべきかをよく考えることが大切です。
-
3.お金はどれくらい必要?
実際に会社を設立するためには、お金をいくら用意しなければいけないのでしょうか。会社を立ち上げるために最低限必要な費用を紹介します。
-
3-1.会社設立にかかるお金
株式会社を設立する場合は、少なくとも約24万円の費用がかかります。金額の内訳は、定款印紙代(4万円)、公証人による定款認証手数料(3万円~5万円)、謄本交付手数料(約2千円)、登録免許税(一般的には15万円)です。一方、合同会社の場合は、10万円ほどで設立が可能です。なぜなら、合同会社は株式会社と違って公証人認証手数料がかからず、登録免許税が株式会社と比較して安く済むからです。合同会社を設立する場合の費用の内訳は、定款印紙代(4万円)、謄本交付手数料(約2千円)、登録免許税(一般的には6万円)になります。なお、いずれの会社形態でも登録免許税の金額は、資本金の額によって違う可能性があることを覚えておきましょう。
-
3-2.資本金
資本金は、会社を設立した際の事業活動の元手になるお金です。金額は、最低1円あれば法律上、会社を設立できます。2006年に会社法が施行される以前は、資本金の最低額は1千万円でしたが、現在は資本金が1円でもルール上は問題ありません。
しかし、資本金の額は経済的な「会社の体力」を表す1つの指標になります。そのため、資本金1円の会社を設立すると取引先や金融機関などから信用を得られない可能性があります。場合によっては取引をしてもらえなかったり、融資を受けられなかったりなどのデメリットを被ることもあるので注意が必要です。資本金は会社を設立してからの運転資金にもなるので、少なくとも3百~5百万円程度用意しておくとよいでしょう。事業がなかなか軌道に乗らずに赤字の状況が続いても、当面は会社を運営できる金額を資本金としておくと安心です。
-
-
4.会社設立に必要な人数
会社を設立するために必要な人員の数について気になる人もいるでしょう。この章では会社を立ち上げるために必要な人数や注意点を紹介します。
-
4-1.会社設立は1人でもできる
株式会社や合同会社はどちらも1人で設立できます。先に「株式会社は出資者と経営者が分かれている」と説明しましたが、同一人物が兼任しても問題ありません。あくまでも「株主と取締役を分ける選択ができる」のが株式会社の特徴です。ただし、会社の組織として取締役会を設置する場合は、取締役(3人)と監査役(1人)を選任する必要があります。1人で会社を設立すれば、取締役会を設置する必要もなく自分の考えで自由に経営できるなどのメリットがあります。個人事業主として事業を運営するよりも、税金対策の幅が広がるなどのメリットもあります。
-
4-2.複数人で会社設立をする場合の注意点
株式会社を複数人で立ち上げた場合、会社に対して出資した人に株式を渡す必要があります。株式は株主総会での議決権の数を表すものです。したがって、複数人で株式会社を設立するときは、持ち株の比率に注意しなければいけません。自分で会社を設立する場合には、最低でも過半数の株式を保有できるように調整しておきたいところです。
-
-
5.会社設立のためにまず決めなければならないことの要件・注意点
会社を設立するためには、最初に会社としての基本的な内容を決める必要があります。しかし、具体的にどのようなことを決めなければいけないのか分からない人もいるでしょう。そこでこの章では、会社を設立するときにまず決めるべきことの要件や注意点を説明します。
-
5-1.商号の決め方
商号とは、会社の名前のことです。基本的にどんな商号でも問題はありませんが、会社の形態を表す言葉は必ず商号に入れなければいけません。具体的には、「○○株式会社」や「合同会社○○」のように、社名の前後に会社の形態を入れる必要があります。また、特定の組織や業種だと誤解されるような言葉は、商号に使用できません。例えば、設立する会社の事業内容とまったく関係がないのに「銀行」「学校」「病院」などの言葉を使うのは禁じられています。そのほか、「出張所」「事業部」「支店」などの別の組織の一員であるかのような言葉も商号には使えないので注意が必要です。漢字やひらがな、カタカナ、英語、数字は使用できますが、記号などは一部使用できないので気をつけましょう。
-
5-2.事業目的の決め方
事業目的とは、会社がどのような活動でお金を稼ぐかを明確に示したものです。「営利性」や「適法性」が必要になります。事業目的は会社のルールブックである定款に記載しなければいけません。そのため、定款を作成してから事業目的を変更しようとすると、所定の費用を負担することになります。会社を始めてからすぐに取り掛かる事業だけでなく、将来的に行う可能性がある事業もあらかじめ定款に記載しておくとよいでしょう。
-
5-3.事業年度の決め方
事業年度とは、会社の決算期間を表すものです。事業年度が終わると、決算作業が必要になります。事業年度は会社によってさまざまで、特に決められたルールはありません。期間が1年以内であれば、好きに決めて大丈夫です。ただし、決算を迎えると必要な書類の準備や専門家との打ち合わせなどで忙しくなります。そのため、会社の繁忙期と決算期が重ならないように工夫する会社が多くなっています。
-
-
1円の資本金で、1人で起業することも可能!ただしよく考えて
会社法が施行されたことで、資本金1円の株式会社を1人で立ち上げられるようになりました。設立要件はハードルが下がっていますが、最低限のお金や人員で会社を設立することには、場合によってさまざまなデメリットがあります。安定した経営や取引先からの信用に重きを置く場合、金融機関からの融資を検討している場合などは、会社設立時の資金や人員について、詳細に検討するようにしましょう。
- ※ 本コラムは2022年10月24日現在の情報に基づいて執筆したものです。
- ※ 本コラムの内容は執筆者個人の見解です。
GMOあおぞらネット銀行の法人口座について詳しくはこちら
執筆者情報
V-Spirits グループ代表
税理士・社労士・行政書士・CFP®
中野 裕哲 監修
■起業コンサルタント®、税理士、特定社労士、行政書士、CFP®。V-Spiritsグループ代表(税理士法人・社会保険労務士法人・行政書士法人・株式会社V-Spirits/V-Spirits会計コンシェル・給与コンシェル・FPマネーコンシェル・経営戦略研究所株式会社)。
年間約300件の起業相談を無料で受託し、起業家をまるごと支援。経済産業省後援 起業支援サイト「DREAM GATE」で11年連続相談数日本一。著書・監修書に『一日も早く起業したい人がやっておくべきこと・知っておくべきこと』(明日香出版社)、『ネコ先生がやさしく教える 起業のやり方』(アスカビジネス)など、16冊、累計20万部超。
■著者への無料個別相談・最新情報はコチラから
https://v-spirits.com/