「会社を設立するのに合同会社と株式会社どっちがいいのかな」
「自分の場合は、合同会社を設立して問題ないだろうか」
初めて会社を設立するにあたり、聞き慣れない「合同会社」というものがどんなものか、自分は合同会社で会社設立をするべきなのかと、お悩みの方もいるのではないでしょうか?
結論から申し上げると、合同会社は以下のような方々におすすめの法人形態です。
・小規模な事業展開を考えている方
・知人や友人と少人数で起業する方
会社設立そのものと、設立後にかかる手間と費用の観点で考えた場合、上記のような方に特におすすめできる法人形態と言えます。
この記事では、合同会社に向いている事業・職種から合同会社の特長とメリット・デメリットまで、あなた自身のケースに合わせて合同会社を設立すべきかどうかの判断ができるよう、分かりやすく解説していきます。
この記事で分かること |
---|
●合同会社に向く事業や職種を知ることができる ●合同会社と株式会社の違いを知ることができる ●合同会社のメリットとデメリットを知ることができる ●合同会社から株式会社への変更が可能か知ることができる |
ここの記事を読むことで、合同会社の設立と、設立後の将来の見通しができるようになります!
目次
1.合同会社の設立がおすすめな事業・業種
冒頭でもお伝えしましたが、実は株式会社よりも、合同会社という法人形態に適している事業や業種があります。
あなたが起こそうと思っている会社の目的や事業内容、経営方針が、以下に当てはまる場合は、手間とお金のかかる株式会社よりも、合同会社で素早く会社設立した方が、効率が良いと言えます。
・節税目的で会社設立を考えている個人事業主の方
・小規模な事業展開を考えている方
・知人や友人と少人数で起業する方
それぞれのおすすめの理由を詳しく説明していきます。
1-1.節税目的で会社設立を考えている個人事業主の方
合同会社であっても法人税の適用が受けられるので、株式会社と変わらない節税効果を期待できます。
また、会社設立する際にかかる登録免許税という税金について見ても、株式会社より合同会社の方が安く済みます。
そもそも合同会社は、小規模の企業向けに設けられた会社形態であるため、個人事業主の法人化にとても向いていると言えます。
フリーランスや副業などで行っている事業の所得が増え、当面の節税を考えている場合には、合同会社の設立がおすすめといえるでしょう。
大きな融資を必要とせず、将来的にも大規模な展開を考えていないのであれば、合同会社を設立することで、法人化の手間やコストを少なく済ませることができます。
同じ収入の場合、法人税の適用を受けて納める税金が少なくなるため、多くのお金を手元に残すことができるのが魅力です。
1-2.小規模な事業展開を考えている方
合同会社は上場ができないため、将来的に多額の資金調達が難しい法人形態です。
採用や組織体制を整えるための資金が工面しにくいので、設備投資などの大きな運用資金が要らない、小規模なビジネスに向いています。
具体的には、美容サロンやアクセサリー販売、個人向けのコーチやカウンセラー、Web業務の代行など、一定のクオリティを守るために個人で事業を行う方々などです。
将来的に、大量雇用を行う予定や店舗の全国展開などの予定がなく、大きな融資を必要としないのであれば上場する必要もなく株式会社である必要もありません。
株式会社の設立には時間がかかりますが、合同会社であれば設立にかかる時間も短くて済むのも魅力の1つでしょう。
1-3.知人や友人と少人数で起業する方
合同会社は、友人や知人と少人数で起業したい場合にもおすすめです。
合同会社は、株主総会や取締役会を必要とせず、自由かつスピーディーな経営判断ができることから、経営の自由度が高く、利益の分配についても経営者が自由に決めることができます。
また、出資者全員が等しく経営権を持つため、お互いに対等な立場で経営に携わることができるのです。
友人や知人同士、それぞれの強みと役割を持ちあって少人数で経営を行う場合に、合同会社はとても都合の良い会社形態と言えます。
実はあの有名企業も合同会社!
合同会社というと、株式会社と比べて「知名度が低い」「信用できない」という認識を持っている方もいるかもしれません。
しかし実は、あの超有名企業も合同会社なのです。
世界的に有名な合同会社には、以下のようなものがあります。
Apple Japan
DMM.com
ユニバーサルミュージック
ワーナーブラザースジャパン
※アルファベット順
ご覧いただくと分かるように、大手企業が次々に株式会社から合同会社へと法人形態を変えています。
これは2006年に行われた会社法改正によって、それまでの有限会社という法人形態がなくなり、合同会社という法人形態が採用されたためです。
合同会社は、もともと米国では一般的だった法人形態だったので、米国に拠点を置く企業の日本法人が、次々と合同会社に移行しています。
また、東京商工リサーチの調べによると、新設法人の合同会社の割合は、2013年の13.1%から2021年は25.1%まで上昇し、新設法人の4社に1社が合同会社として会社を設立しています。
合同会社は決して「株式会社になれない会社」ではないのです!
2.合同会社設立の6つのメリット
合同会社のメリットは、会社設立そのものと、設立後の事業運営にかかる手間と費用が、株式会社と比べて圧倒的に少ないことです。
具体的には、以下の6つのような手間や費用の負担を減らすことができます。
・設立時の手間と費用がかからない
・経営意思決定の手間と費用がかからない
・税金として納める金額がかからない
・役員に一定以上の債務責任がかからない
・役職の任期満了に関する手間と費用がかからない
・決算公告にかかる手間と費用がかからない
合同会社のメリットについて、それぞれ具体的に見ていきましょう。
2-1.設立時の手間と費用がかからない
合同会社を選ぶ最初のメリットは、株式会社と比較した際の、設立の手間と費用がかからないことです。
具体的には、定款認証にかかる手間と費用を省くことができます。
定款認証とは、作成した定款を公証人に認証してもらうものです。
本店所在地を管轄する公証役場で、公証人の認証を受けることで初めて定款が効力を有します。
合同会社を設立する場合には、この定款認証の作業は必要ありません。
公証役場に足を運ぶ手間が省けるため、株式会社と比べて早く会社を設立することが可能です。
また、定款認証に必要な以下の手数料も発生しません。
合同会社 | 株式会社 | |
---|---|---|
定款認証手数料 | 不要 | 3万円~5万円 |
定款印紙代(紙の定款) | 4万円 | 4万円 |
定款謄本代 | 不要 | 2,000円 |
登録免許税 | 6万円 | 15万円 |
合計 | 10万円 | 22万2,000円 |
株式会社の場合と比べ、合同会社の設立は半分以下の手数料で済むというのは、大きなメリットと言えます。
2-2.経営意思決定の手間と費用がかからない
合同会社は、会社の所有者と経営者が一致していることから、株式会社と比べると経営上の重要な意思決定において、手間と費用がかかりません。
株式会社は、株主こそが会社の所有者であることから、役員の選任や新株発行、組織拡大などの重大な意思決定は株主総会で行われます。
経営方針について、逐一株主の承認を得る必要があるのです。
もちろん、中小企業などは所有者と経営者が一致していることが多いですが、それでも親族で株主総会を行って、経営の重要な選択においては採決を取ることが必要な場合があります。
株式会社では、株主総会にかかる費用などがかかってきますが、合同会社であれば株主総会を開く必要はありませんので、手間も費用も省いてスピーディーな経営の意思決定ができます。
2-3.税金として納める金額がかからない
合同会社は、株式会社と同じく、法人税法上の「普通法人」に区分されています。
1-1.節税目的で会社設立を考えている個人事業主の方の項でもお伝えしましたが、たとえ一人企業の場合でも、合同会社の事業所得は法人税の対象となるため、法人の節税メリットを受けることができるのです。
個人事業主の事業所得に対する所得税の割合が累進課税(5〜45%)であることに比べると、法人税の割合(15〜23.2%)は一定のため、同じ売上げ規模の場合でも、納税額を抑えることができます。
参考:国税庁 No.2260 所得税の税率、No.5759 法人税の税率
また、節税以外にも、法人として以下のメリットを受けることができます。
・役員報酬の損金算入
・法人生命保険への加入
・一定の機械装置等の特別償却ができる(青色申告の中小企業者の場合)
設立や経営の意思決定に手間と費用のかからない合同会社でも、株式会社と同様の法人成りメリットを受けることができるのです。
会社設立におけるメリットをさらに詳しく知りたい方は「会社設立のメリットとは?税金・信用・制度の3つの視点から網羅解説」の記事も参考にしてくださいね。
2-4.役員に一定以上の債務責任がかからない
合同会社は株式会社と同様に「間接有限責任」が適用されます。
有限責任とは、会社の債権者に対して、自分の出資額を限度として責任を負うものです。
つまり、会社が倒産すると出資したお金は消えてしまいますが、それ以上の責任は負わないということです。
合同会社は社員が、株式会社は株主が有限責任を負うため、負債についての責任は同等と言えます。
ただし、株式会社は株式を発行することで広く出資者を求めることができることから、一人あたりの責任を低くすることができます。
事業拡大して大きな融資を受ける必要がないのであれば、そもそものスタートから合同会社で会社設立し、さまざまな手間と費用の負担を避けるのが賢明でしょう。
2-5.役職の任期満了に関する手間と費用がかからない
合同会社は、役員の任期を設ける必要がありません。
そのため、役員改選にかかる手間と費用を削減することができます。
取締役と監査役の任期が決められている株式会社では、取締役と監査役の任期を延ばすためには、定款に記しておく必要があります。
定款に定めさえすれば、取締役(原則2年)、監査役(原則4年)の任期について、10年まで延ばすことができます。
しかし、延ばすことができたとしても、最短2年でやってくる取締役の改選のたびに、株主の了承を得るための株主総会として、一定の手間と費用がかかってしまうものです。
合同会社では、そもそも役職の任期がないため、この負担が軽いと言えます。
2-6.決算公告にかかる手間と費用がかからない
合同会社には決算公告の義務がないため、決算公告を掲載する手間と費用がかかりません。
決算公告とは、定時の株主総会が終了した後に、事前に会社定款に示された方法によって、会社の財務情報を開示することです。
株式会社では、毎年必ずこの決算公告を行う必要があります。
開示方法は、事前に以下から選んで定款に定めます。
・一般時事を扱う日刊新聞紙
・電子公告
掲載料が比較的安い官報の場合でも、一般的な決算公告を掲載する際にかかる料金は、約7万円からとなっています。
合同会社では決算公告の義務がないため、そもそもの手間と費用が不要なのです。3.合同会社設立の5つのデメリット
大手企業も合同会社に移行し、メリットばかりのように見える合同会社ですが、デメリットについてもしっかり抑えておきましょう。
合同会社の主なデメリットは、以下の5点です。
・株式会社に比べて社会的信用度が低い場合もある
・資金調達の方法に限りがある
・相続/事業承継がしにくい
・上場できない
・出資者同士の意見が対立した際の影響が大きい
それぞれ詳しく説明していきましょう。
3-1.株式会社に比べて社会的信用度が低い場合もある
合同会社の設立件数が伸びているとはいえ、日本の会社の総数としては、依然として株式会社の方が多く、合同会社は少数派と言えます。
世間一般、あるいは取引先であっても担当者レベルでは、合同会社という会社形態の認知度が低いことで、マイナスの印象を持つ人もいます。
中には合同会社を設立したあなたに対して「株式会社になれなかった会社の経営者」と、誤った認識を持って接してくる場合もあるかもしれません。
ビジネスの形態によっては避けた方が良い場合もありますが、1-2.小規模な事業展開を考えている方の項でもお伝えしたとおり、個人で行える事業規模の場合には、そこまでのデメリットになることは、まずありません。
3-2.資金調達の方法と金額に限りがある
合同会社は、株式会社と比べると資金調達方法が限られています。
法人の主な資金調達方法は、以下のとおりです。
【合同会社と株式会社の資金調達方法】資金調達方法 | 合同会社 | 株式会社 |
---|---|---|
株式の発行 | ー | 〇 |
社債の発行 | 〇 | 〇 |
金融機関からの融資 | △ | 〇 |
個人や法人からの出資 | 〇 | 〇 |
国の補助金や助成金 | 〇 | 〇 |
合同会社の資金調達は、株式会社と比べると一つ少ない4種類になります。
株式会社の場合は株の増資による資金調達が可能ですが、合同会社は株式による資金調達ができないため、国や自治体の補助金や助成金、借入(融資)が中心となります。
3-3.相続・事業承継がしにくい
一般的に、合同会社では株式会社よりも相続や事業承継がしにくいと言われています。
合同会社の出資者である社員が、自分が出資した「持分」をだれかに譲渡する場合には、ほかの社員全員の同意が必要になるからです。
代表社員の継承も同様で、自分が引退して子供に跡を継がせたいと思っても、社員のうちひとりでも反対すれば、継承することはできないのです。
また、合同会社では多くの場合、一人の出資者(代表者)で会社を作ることになります。
社員(出資者である代表者)が死亡してしまった時点で退社となり、会社の清算が行われるようになります。(会社法第607条)
そうなると出資持分が相続人に引き継がれ、親族が代わりに経営の座につくことはありません。
ただし、相続や事業承継がしづらいというのは、あくまでも仕組み・流れの問題であり、法律で禁止されていたり、制限があるものではありません。
3-4.出資者同士の意見が対立した際の影響が大きい
合同会社の場合、複数いる社員の意見が対立すると、意思決定が進まず経営の混乱を招く恐れがあります。
合同会社の社員は、出資した額に関係なく全員が一人一票の議決権を持っています。
この点、株式会社では、出資した株数に応じて議案に対しての議決権を行使できるため、大株主の意向が全体の結果として採用されやすくなります。
株式会社の場合、役員間で経営方針に関する意見が割れたとしても、最終的には保有している株数の多い人の意見が通るため、何らかの結論を出すことができます。
しかし合同会社では、図のように意見が対立すると、いつまでも意思決定が進まないという事態に陥りかねません。
ただし、あらかじめ以下のような内容を定款に記しておくことで、このデメリットを回避することはできます。
・過半数の同意で意思決定ができる
友人や知人と複数人数で合同会社を作る場合は、この点を留意しておくと良いでしょう。
3-5.株式市場に上場ができない
合同会社は株式会社ではないため、株式市場に上場することができません。
上場とは、自社が発行する株式を証券取引所で売買できるよう、証券取引所の審査を経て資格を得ることです。
株式市場に上場することで、以下のようなメリットがあります。
・信頼を得やすい
・会社の価値を把握しやすい
株式市場に上場するためには、経営体制や業務フローなどを整え、健全な財務体質であることを各方面に示すなど、非常に厳しい基準を達成しなければなりません。
そのため、上場した企業はそれだけで社会的に絶大な信用を得られるのです。
しかし、そもそも将来的に上場を検討していないのであれば、上場できないことは大きなデメリットにはならないでしょう。
【会社売却するなら株式会社の方が良い】
将来的に会社を売却することを考えているのであれば、合同会社ではなく株式会社を設立する方が良いでしょう。
企業の買い手にとって、合同会社を買収するメリットが株式会社より少ないため、買い手がつかないことがあります。
合同会社を買収しても、基本的に持分は出資額によらず議決権は同じなため、持分を得ても自分だけの意思では経営上の決定ができないからです。
もしも将来会社の売却を想定しているのであれば、最初から株式会社として会社設立しておくことをおすすめします。
4.合同会社の設立費用
合同会社の設立をする場合にかかる法定費用は、最低6万円からとなります。
【合同会社の設立にかかる法定費用】費用項目 | 支払先 | 金額 |
---|---|---|
定款認証手数料 | 公証役場 | 不要 |
定款謄本代 | 不要 |
|
定款印紙代 | 国税庁 | 4万円(電子定款の場合は0円) |
登録免許税 | 法務局 | 6万円※ |
合計 | 6万円〜 |
※資本金額×0.7%または6万円のどちらか高い方を支払う
登録免許税は資本金額を元に算出するため、資本金額を85万7,000円以下に抑えれば、最も低い6万円の課税で済ませることができます。
「4万円または0円」と、大きく減らすことのできる定款印紙代は、紙文書形式(書面)の定款を作成するか、電子文書形式(PDF)の定款を作成するかで変わるものです。
【文書形式ごとの定款印紙代】紙文書形式の定款 | 定款印紙代(4万円)が必要 |
---|---|
電子文書形式の定款 | 定款印紙代が不要 |
電子定款は電子証明書の発行や特別なソフトなど専用機材を使って作成します。
単に作成した文書をPDF形式で残しておけばいいというものではありません。
電子定款の作成は個人でも可能ですが、必要な専用機材をそろえるのにおよそ10万円の費用がかかります。
事業運営上に今後継続的に必要なものであれば購入しても良いでしょうが、会社設立のためだけであれば、会社設立の代行サービスを活用した方が効率的と言えます。
認証を受けない合同会社の定款にも印紙代は必要?
合同会社設立の場合、公証人による定款の認証は不要ですが、定款を紙で作成した場合には、その原本に4万円の収入印紙を貼付し、会社に保存する必要があります。
原本に4万円の収入印紙を貼付しないままで保管しておくと、「印紙税法違反」に問われます。
これは脱税行為とみなされ、「印紙税の額とその2倍に相当する金額との合計額」(つまり印紙税額の3倍)に相当する過怠税を徴収されるため、必ず定款印紙代を添付しておきましょう。
5.合同会社の設立手順
合同会社の設立を検討中のあなたは、できるだけ費用をかけたくないと思うもしれませんが、先に紹介した4万円の定款印紙代の節約分と合わせて、代行サービスの利用についても検討すると良いでしょう。
会社設立代行サービスについて詳しく知りたい方は「会社設立代行とは|必ず知っておきたい6つの基礎知識」の記事も読まれることをおすすめします。
また、登記をしただけで会社設立が完了するわけではありません。
登記をした後の手続きには、以下の6つがあり、抜け漏れがあったり怠ったりすると、事業運営に大きな支障が出てしまうため、一つ一つ着実に進めていかなければいけません。
・法人住民税・法人事業税について各都道府県税務署・市町村役場に届け出る
・健康保険・雇用年金の加入手続きについて年金事務所へ届け出る
・労働法に関する届出を労働基準監督署に提出する
・雇用保険に関する届出をハローワークへ提出する
・法人口座を開設する
会社設立後の手続きについて詳しく知りたい方は「会社設立後に対応すること45項目|いつ・何を・どこですべきか徹底解説」の記事をご一読ください。
6.合同会社から株式会社への変更は可能!
合同会社で会社設立をしても、事業が予想外に大きく展開した場合、途中で株式会社に移行することは可能です。
実はあの有名企業も合同会社!の項でもお伝えしましたが、株式会社から合同会社への移行も、その逆のパターンも、必要な手続きを踏めば問題なく進めることができます。
経営の意思決定をする社員の少ない合同会社の方が、より簡単に株式会社への移行を進めることができます。
行うべきは、以下の3STEPです。
STEP1:組織変更計画書の作成
合同会社からどのような株式会社に変更するのか、その計画を書面にします。
主に以下の内容について記載していきます。
・商号
・本店所在地
・発行可能株式総数
・定款
・取締役
・変更後の発行株式数
・役職割当て
・効力発効日
組織変更計画書を作成したら、出資者である社員全員の同意を得ます。
STEP2:債権者保護手続き
売掛債権を持っている取引先や、融資債権を持っている金融機関などの債権者に対して、株式会社への組織変更を通知して承諾を得ます。
債権者への通知方法は、以下の2つです。
・官報に掲載する(最低1カ月以上)
債権者がいないという場合には、個別連絡は必要ありませんが、官報への掲載が必須になります。
債権者から異議申し立てがなければ、株式会社への移行ができます。
STEP3:変更登記申請
株式会社への組織変更を行ったうえで、登記上も合同会社から株式会社に変更します。
組織変更計画書に記載した「効力発行日」から2週間以内に、法務局で以下の2つの手続きを同時に行います。
・合同会社の解散登記
申請後、法務局による審査が1週間ほど必要になります。
この変更登記が完了することで、株式会社の登記簿謄本が取得できます。
7.合同会社として法人化してから決算業務で困る人は多い
いくら事業の規模が小さくても、法人口座を作成して、個人の財産と会社の財産とを分けて管理する必要があります。
しかしながら、株式会社と比べて手間も費用もかからずに会社が設立できてしまえる合同会社だからこそ、法人口座を持たずに決算業務で問題を抱えてしまう残念なケースが多く見られます。
合同会社も株式会社と同様に「普通法人」という、れっきとした法人形態の一つです。
そのため、事業活動における利益や損失を計上して財務状況を把握しておくことが求められ、決算と確定申告が必要です。
決算と確定申告をするためには、毎日の収支を個人のものと、法人のものとにしっかりと分けて記録・管理することが大切です。
また、取引相手から見た際にも、振込先が個人口座では不安を与えてしまうため、法人口座の開設は必須と言えます。
・振込をする取引相手から見ると、振込先が個人口座では不安を与える場合もある
法人口座の開設には、法的義務のあるものではありませんが、決算業務で困らないためにも、取引相手を不安にさせないためにも、法人口座は開設しておくことをおすすめします。
8.創業期の法人口座はネット銀行がおすすめ
せっかく手間と費用を抑えて合同会社を設立した方にとっては、たとえ少額であっても、毎月何もしなくても支払う必要がある費用の負担というのは大きいものです。
また、一人で起業し事業運営と事務作業を同時並行で行うことの多い合同会社では、営業時間に制約があると、重要な振込タイミングなどを逃してしまうことがあります。
合同会社を設立する方にとって、法人口座の使い勝手の良さというのは、死活問題とも言えるのです。
店舗型銀行(都市銀行や地方銀行、信用金庫等)と、実店舗のないネット銀行とでは、使い勝手がどのように違うものなのか、比較して見てみましょう。
【店舗型銀行とネット銀行の法人口座の比較】店舗型銀行(都市銀行や地方銀行、信用金庫等) | ネット銀行 | |
---|---|---|
他金融機関宛て 振込手数料 |
150~600円程度 | 145~200円程度 |
口座維持費、インターネットバンキング月額基本料金 | 無料〜3,300円 | 無料 |
手続き可能時間 | 平日9時~15時の窓口 (各金融機関による) |
24時間365日利用可能 (メンテナンス時を除く) |
対面窓口 | ある | なし |
ATM | ある | 単独ATMは少ない コンビニや提携銀行のATMが利用可能 |
残高確認 | 紙の通帳(有料の場合も)で確認 Web通帳を利用することでオンラインでの確認も可能 |
オンラインで確認 |
ご覧いただくと分かるように、ネット銀行なら、創業期の会社にとって最も重要な経営資源である時間とお金の両方を、効率的に使うことができます。
合同会社の設立に際して、ネット銀行をおすすめするポイントは、以下の3点です。
・時間と場所にとらわれない
・法人口座の開設に時間がかからない
既にご紹介しているものもありますが、改めて具体的なシチュエーションと共に見ていきましょう。
8-1.手数料が安い
ネット銀行は、実店舗を持たないことで人件費や不動産にかかる費用が少ないため、各種手数料を安く抑えることができます。
同じ手続き・作業であれば、月額基本料金や入出金・振込にかかる手数料はできるだけ安く済ませたいものです。
手間と費用を抑えられる合同会社なのに、銀行にかかる手数料が高くなってしまうと、元も子もありません。
月単位ではわずかな差ではあっても、長期的に見た総支出は大きく変わってくるものなので、合同会社を設立する方にとって、手数料の安さは何より魅力と言えます。
8-2.時間と場所にとらわれない
ネット銀行は、基本的にオンライン上で手続きが完結するため、窓口や専用ATMに足を運ぶ必要がありません。
急に現金を出金したい場合でも、全国どこにでもあるコンビニ等の提携ATMを利用することで、現金を引き出すことができます。
また、15時以降の振込であっても当日振込扱い(※)をしてもらえるため、出先で振込を当日中に済ませたい場合にも心強いでしょう。
※着金のタイミングは相手先銀行による。
24時間365日お好きなタイミングでいつでも取引ができる状況は、経営者のいざという時の助けになります。
8-3.法人口座の開設に時間がかからない
ネット銀行は、スピーディーな審査で店舗型の銀行と比べると法人口座の開設に時間がかかりません。
必要な書類さえ提出すれば、店舗型銀行よりも比較的柔軟に審査してくれると言えます。
また、ネット銀行は必要書類の提出がオンライン上で提出可能なところもあり、忙しい創業期に銀行窓口に足を運ぶ必要がありません。
オンライン上で完結するところもネット銀行がスピーディーに対応できるポイントといえるでしょう。
法人口座は、年々審査が厳しくなっており、法人口座を簡単に開設することができなくなっています。
もちろんネット銀行でも法人口座に関する審査はあり、個人口座のように簡単に開設できるものではありませんが、創業期でも比較的開設がしやすいのがネット銀行になります。
特に合同会社の場合、4.合同会社の設立費用でお伝えしたように、登録免許税を最低額(6万円)で済ませるため、資本金額を85万7,000円以下に抑えることが一般的です。
100万円に満たない資本金額を、審査の厳しい店舗型銀行ではどのように見るかは、推察できます。
ただし、もしもあなたがブランド力やステータスを必要とするような職種であったり、商品・サービスを取り扱ったりしている場合には、メガバンクをはじめとした店舗型銀行に法人口座を構えることは、確かに取引先からの信頼獲得につながると言えます。
会社設立して事業が順調に進んでいれば、後々、店舗型銀行での法人口座開設もスムーズになるので、まずはネット銀行で法人口座を作り、実績を作っていくことも大切です。
9.比べればわかる!コスパの良い法人口座はGMOあおぞらネット銀行
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※2 2023年12月時点GMOあおぞらネット銀行調べ
※3 システムメンテナンス時を除く
※4 着金のタイミングは相手先銀行による
さらに、GMOあおぞらネット銀行なら、書類の郵送が必要なく、原則口座開設はオンラインでの完結が可能なので忙しい創業期でも口座開設申込が簡単にできます。
また、会社設立後の煩わしい以下のような事務処理についても、負担を軽減してくれます。
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まとめ
今回は、会社設立における合同会社という選択について、分かりやすく解説してきました。
合同会社の設立をおすすめするのは、以下の方々です。
・小規模な事業展開を考えている方
・知人や友人と少人数で起業する方
合同会社の設立には、以下のメリットとデメリットがあります。
メリット | ・設立時の手間と費用がかからない ・経営意思決定の手間と費用がかからない ・税金として納める金額がかからない ・役員に一定以上の債務責任がかからない ・役職の任期満了に関する手間と費用がかからない ・決算公告にかかる手間と費用がかからない |
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デメリット | ・株式会社に比べて社会的信用度が低い ・資金調達の方法に限りがある ・相続・事業承継がしにくい ・上場できない ・出資者同士の意見が対立した際の影響が大きい |
この記事により、あなたが設立すべき会社が合同会社なのかどうかの判断がつき、会社設立がスムーズに行えることを願っています。
※ 本コラムは2024年2月14日現在の情報に基づいて執筆したものです。
※ 当社広告部分を除く本コラムの内容は執筆者個人の見解です。